新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行!?
新型コロナウイルス感染のニュースは、いまでもまだ続いており、「第2波」が落ち着き始めたかと思うと、「第3波」とか「インフルエンザとの同時流行」とか恐ろしい言葉が早くも出回っています。
ファッションの世界では、夏の盛りから秋冬物の販売を、冬には春物の販売が先んじて行われますが、新型コロナウイルス感染に関しては先んじた予報が当たって欲しくないと思っています。
今日は、この秋から冬に流行るかもしれないといわれている「新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行の可能性」について書こうと思います。
◆2種類のウイルスが同時に感染することはなかなかない
結論からいうと、私は「同時流行は起こらない」のではなかろうかと思っています。もう少し正確に言うと、「同時感染は起こらない」といったほうが良いかもしれません。
同時感染というのは、同じ人が2つのウイルスに1度に感染するということですが、人に2種類のウイルスが同時に感染することは、なかなかないといわれています。もし、万が一、新型コロナウイルス感染とインフルエンザウイルス感染が同時に日本で大流行していたとしても、2つのウイルスに同時に感染する人はいないと思います。
その理由を簡単に書きましょう。最初に1つ目のウイルスが人に感染すると、外来の敵(ウイルス)が体内に入ってきたと察知した、人の体は、インターフェロンという物質を体内で作ります。
この、インターフェロンが大活躍し体内の免疫を呼び起こし、ウイルスと闘わせるのです。インターフェロンが免疫を呼び起こす時に熱が出ます。すなわち、熱が出るのは、体内の免疫が呼び起こされ反応している証なのです。
このインターフェロンが活躍して体内の免疫が活発になっている間は、2つ目のウイルスが入ってきても直ぐに免疫が働けますので、ウイルスも思うようには増えることができません。
◆インターフェロンの働きはあるが、感染予防も大切
現在では、こうした、機序が明らかになって「2つのウイルスが同時に感染することはなかなかない」ということが知られていますが、古い昔からこうしたことはよく知られていた現象でもあるのです。
「風邪をこじらせる」という言葉がありますが、あれは、ウイルス感染が原因で体力を消耗した際に、細菌(ばい菌)感染が起こり肺炎で命を落とすヒトが多かったわけで、2つのウイルスに同時に感染したわけではないのです。インターフェロンは細菌に対してはあまり力を発揮しません。
インターフェロンの語源は、「干渉する、邪魔をする」という意味の「インターフェアー」からきています。インターフェロンは何を邪魔すると思いますか?
そうです。「2つ目のウイルスの感染を邪魔」するのです。「働くインターフェロンと、働く新内閣」のおかげでこの秋冬の世の中のいろいろは、きっと大丈夫な気がしています。
ですが、感染予防として以下に気をつけながら生活してみてください。
1. できる予防策を(インフルエンザの予防接種、手洗いとうがい、マスク等)
2. 免疫を弱らせない(睡眠と栄養)
3. 筋トレをはじめとした適度な運動
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国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ