【女性の生理と貧血】鉄欠乏性貧血の予防・改善法
皆さんは、「生理と貧血の関係」というと何の話かすぐに想像できると思います。女性は生理があるので貧血気味の人が多いということになります。では、今日はこの生理と貧血の話を医学的に話してみようと思います。
医学部の学生時代に教えられるのですが、「生理」という医学用語は存在しません。また、「貧血」と一言でいっても医学的には貧血になる原因は色々とありますし、まして、世間では「たちくらみや、ふらふらとする状態」を「貧血」と表現することもあります。
では、「生理と貧血」を医学的に正確な表現をするとどうなるのでしょうか? 「月経による鉄欠乏性貧血」ということになります。ここでいう「貧血」は「たちくらみ、ふらふら、めまい」などの意味では使いません。あくまで「血が足りない」という意味です。
血は赤い色をしているのは皆さんご存じのことですが、あの赤い血の材料が鉄なのです。人間は鉄を食べ物から摂取しています。食べた鉄を原材料にして赤い血を作りますが、女性は月経により血を失う機会が多いので、失った分を補って作らなければなりません。
そのためには、原材料の鉄が必要ということになります。食べ物から十分な鉄が摂取できなければ、赤い血が作れなくなり、貧血になるということです。鉄が足りないことが原因で引き起こされる貧血なので「鉄欠乏性貧血」ということになります。
◆人間が食べる鉄の量と吸収される量
では、人間が1日に食べる鉄の量と、食べて小腸から吸収される量、男性でも女性でも汗や便から捨てられる量、女性が月経で失う鉄の量などを解説しましょう。
まず、食事に含まれる鉄の量(理想的には)は大体、1日20〜30mg。そのうち、たった1mgくらいしか吸収されません。そして、毎日、体内に貯蔵されていた鉄のうちの1mgくらいは捨てられてしまいます(男性も女性も同じです)。
そうなんです、老若男女問わず健康な人でも、食べて吸収された鉄と同じくらいの量の鉄が毎日出ていっているのです。まして、女性はこれに加えて、1回の月経で15〜50mgの鉄を失うとされています。
食べて吸収される鉄だけで、女性の血の原材料となる鉄を十分に補充することが、それほど簡単ではないことがわかりますか?
女性は、特に意識して、鉄の摂取を心掛けないといけなことがわかると思います。鉄は体内で十分に備蓄されているのが通常ですが、月経過多の女性などで、この備蓄されている鉄を消費しなければならないような状態にまでなれば貧血は徐々に進んでいきます。
以下のようなことを試してみてください。
【1】日頃から鉄の豊富な食べ物を食べることは最低限意識してください
(ただし、食べ物や内服薬から摂取する鉄はあまり吸収されないことを知っておいてください)
【2】できれば、サプリメントなどで鉄を多めにとるのもいいかもしれません
(食べ物やサプリから摂取する鉄は過剰摂取につながることはありませんのでご安心を)
【3】健診などで貧血を指摘された場合には、その原因をちゃんと調べましょう
【4】鉄欠乏性貧血の場合は、鉄剤を2、3ヶ月は内服する必要があります
【5】ひどい場合には、点滴で鉄剤を投与すると早めの回復が期待されます
TOP画像/(c)Shutterstock.com
国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉
1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ
あわせて読みたい!