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「にべもない」とは? 意味や語源を知ろう
日常生活やビジネスの場でたまに耳にする「にべもない」という言葉。言葉は知っているけど、正しい意味をきちんと知っている人は少ないのではないでしょうか。まずは、「にべもない」の意味や語源を解説します。
「にべもない」の意味
「にべもない」の意味は、愛想がない、素っ気ない話し方や行為のことを言います。特に、相手に“思いやり”や、“気遣い”を欠いた話し方をする人を指す言葉になります。「にべない」と省略して使用される場合もありますが、「にべもない」と意味は同じです。
「にべもない人」とはどういう人?
「にべもない」は、人の気持ちに寄り添ったり、気配りや配慮ができない人に対しても使うことができます。
〈にべもない人の特徴〉
・人情味のない話し方をする人
・あたたかみが感じられない話し方をする人
・ビジネスライクでドライな考えの人
・判断に感情を持ち込まない人
「にべもない」の語源は魚
「にべ」は、漢字で「鰾」もしくは「膠鰾」と書きます。「膠鰾(にべ)」は、近畿圏主に和歌山県田辺、三重県二木島(熊野市)辺りでの呼び名です。関東では「イシモチ」として知られています。
「膠鰾(にべ)」という魚は浮き袋が大きく発達しており、この浮き袋を取り出して煮詰めると「膠(ニカワ)」ができることから名付けられています。「膠(ニカワ)」とは、日本の伝統工芸品(仏具、漆器)などに使用される天然の接着剤のことです。日本画の顔料と混ぜ合わせて使用されることもあります。
関東地方での呼び名「イシモチ」の由来は、この魚の耳石である扁平石(へんぺいせき)がとても大きくて、頭部を食べたときに口に当たることから付いた名前とされています。
魚の「膠鰾(にべ)」は、「膠(ニカワ)」の原料となる物、つまりニチャニチャとくっつくもの。その「膠鰾(にべ)がない」ことから、あっさり、さらっとしている、味気ない、人情味が無いという意味になるわけです。
「にべもない」の使い方を例文でチェック
「にべもない」の意味や起源を理解いただいたところで、具体的な使い方や使用場面をチェックしていきましょう。
「私の要求は、にべもなく断られてしまった」
意を決して上申したことえお、いとも簡単に却下されてしまった時などに使用します。
「話し始めた途端、にべもなく言葉を遮られた」
会議で発言した際に、ろくに意見を聞かず話を遮られてしまった時などに使用します。
「そんな、にべもない言い方しないでよ! 冷たいなぁ」
友人や恋人に、何か頼み事をしたけれど断られてしまった。そんな時、甘えて切り返す時の言葉としても使えますね。
「にべもない」の類語や言い換えにはどんなものがある?
「にべもない」と同じ様な意味合いで使用される言葉を紹介します。具体的な場面をイメージしながら読んでいただくと、理解しやすいと思いますよ。
けんもほろろ
人の頼みや相談をまったく取り合わず、はねつける様子を意味する言葉です。「にべもなく」より、更に冷たいニュアンスがあります。
木で鼻を括る(きではなをくくる)
極めてそっけない態度、冷淡な態度をとる様子を表した言葉です。相手に軽蔑心を抱いた様な態度をイメージさせますね。
取り付く島もない
何かを頼んだり相談しようとしても、取り合わず、相手に冷たい態度で接することを意味します。きっかけさえ与えない様子のたとえです。
「にべもない」の対義語はどのような物がある?
よく使われる「にべもない」の対義語を3つご紹介しておきましょう。
如才ない(じょさいない)
気がきいて手抜かりがなく、愛想がいいことを意味する言葉です。いい加減さがなく、よく行き届いているさまのことも含まれます。「彼女は如才ない人だ」などと褒め言葉として用いられます。ただし、場合によっては「人に取り入るのが上手ね」という皮肉として使われる場合もあるのでご注意を。
気を回す
相手の気持ちを“察知する”ことを意味する言葉です。仕事の場面で考えると、指示されなくても過去の経験や事例から予測して動くことのできる人に当てはまります。
よく行き届く
すみずみまで注意がよく行き渡る様子。至れり尽くせり、細々としたことまで心配りができる意味する言葉です。同じ表現でも、人によって受け取り方が変わってしまうものです。対義語も相手や場面によって、上手に使い分けができるとビジネスの場面でも活かせると思いますよ。
最後に
「にべもない」という言葉の起源が魚の浮き袋だったとは、なんとも面白いですね。この様に言葉の意味や語源を調べてみると、その言葉の奥深さを感じさせてくれるように思います。日本は海に囲まれ、食生活にも魚が多く使われ身近な存在だったことから、魚の名前にちなんだ諺(ことわざ)も沢山あります。この機会に探してみるのも面白いかもしれませんね。
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