多嚢胞性卵巣症候群ってどんな病気? 自覚症状は?
妊活をされている方からご相談をいただくことの多い、「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」。
今まで聞いたことがなかった、知らなかったという方も多いこの病気、どんな症状やリスクが潜んでいるのでしょうか。
◆多嚢胞性卵巣症候群とは
多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん:PCOS)とは、卵巣で男性ホルモンがたくさん作られてしまう影響で排卵しにくくなる病気です。PCOSによって排卵しにくくなるため、不妊の原因になることもあります。
以下の診断基準を満たす場合、PCOSと診断されます。
・月経異常(月経不順、無月経)
・卵巣の多嚢胞所見
・高アンドロゲン血症またはFSH上昇を伴わないLHの基礎分泌高値
PCOSは女性の20〜30人に1人の割合(6〜8%)でみられる、決して珍しい病気ではないことを覚えておきましょう。
◆自覚症状はある?
PCOSの自覚症状としては以下のようなものがあげられます。
・月経周期が35日以上になる
・月経が以前は順調だったのに現在は不規則
・にきびが多い
・やや毛深い
・肥満
これらの症状が複数起こっている場合、PCOSの疑いがあります。
では、PCOSの疑いがある場合、どのような検査を行っていくのでしょうか?
◆検査方法は?
検査方法は、主に血液検査によるホルモン値の測定や超音波検査が行われています。血液検査では、卵胞刺激ホルモンや男性ホルモンなどのホルモンを測定します。超音波検査では、卵巣に多数の嚢胞があるかどうか・卵巣や副腎に腫瘍はあるかなどについて調べます。
その他には血圧および血糖値・コレステロールなどの脂肪(脂質)などを測定し、メタボリックシンドロームの疑いがないかなどについて調べることもあります。
◆治療法は?
以上のような検査によってPCOSと診断された場合、症状の種類や程度・年齢や妊娠の予定などによって治療法を決めていきます。
現在、PCOSのはっきりした原因はわかっておらず、そのため治療方法は確立されていません。
ここからは、妊娠の予定がある・なしそれぞれの場合において、どのような治療が行われることが多いかについてみていきましょう。
1. 現在妊活中の方、今後妊娠をのぞむ方
「PCOSになった場合、妊娠できないの?」という声をよくお聞きします。PCOSは治療によって改善が見られ、実際に妊娠されたかたも沢山いらっしゃる病気です。
妊活中の方に良く用いられている治療法としては、クロミフェン(経口薬)を用いた「排卵誘発」です。はじめにクロミフェンによって排卵が行われているかを経過観察し、排卵が行われない場合にはFSH製剤(注射薬)を用いて再度排卵が行われているかどうかについて経過を観察します。
これらによって排卵が行われた場合には、排卵日にタイミングをとって性交をおこなっていただきます(タイミング法)が、排卵が見られない場合には腹腔鏡下に卵巣に穴をあける手術をすることもあります。この手術を行うと薬に対する反応がよくなったり、自然に排卵するようになったりといった効果が期待できます。
2. 妊活を行っていない方
現在妊活を行っていない方の治療法としては、月経不順・肥満などそれぞれの症状に合わせて投薬による治療を行う場合があります。
ただし、PCOSは妊活を行っていない方の場合、すぐに治療は行わず経過観察となるケースも多い病気です。合併症のリスクなどはないか検査を受け、必要な場合は症状の改善に向けて治療を受けられることをおすすめします。
妊活を行っていない人や妊活を始めたばかりの人にとっては、あまりなじみのない疾患である多嚢胞性卵巣症候群都。これを機にご自身のからだにご紹介したような不調はないか、振り返ってみてはいかがでしょうか。
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医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
監修する女性向けアプリ「eggs LAB」では、独自ロジックにより、アプリでの問診で自身の情報を入力することで、これまでにない高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした「あなただけの/あなたのための/今欲しい情報」を発信中。