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「斜に構える」の意味とは? 正しい使い方を例文でご紹介
「斜に構える」という言葉。読み方は「しゃにかまえる」が一般的ですが、「はすにかまえる」と読んでも間違いではありません。
この「斜に構える」には、3つの意味が存在します。それぞれの例文と共に見ていきましょう。(出典:小学館 デジタル大辞泉)
1:「(剣道で)刀を斜めに構える」
「斜に構える」は、本来剣道で使われる言葉。
剣道には「中段の構え」「上段の構え」「下段の構え」「八相の構え」「脇構え」という基本となる5つの構えがあるのですが、その中でも基本とされているのが「中段の構え」。
剣先を相手に対して斜めに突き出した構えのことで、相手の動きに応えやすく、柔軟に対応できる型といわれています。
例文「対戦相手に対して斜に構えなさい」
剣道の基本的な構えである「中段の構え」を指導する時の例文です。
刀を斜めに構えるという意味から、相手に隙を見せない身構えをしなさいという意味になります。
2:「身構える。改まった態度を取る」
そして『1』が由来となった言葉がこちら。「身構える」という意味は、剣道の「構え」から来ているものといわれます。
大切な場面に備えて、十分に身構える様子を指しています。
例文「伴蔵は蚊帳の中に斜に構えて待っているうち、〜」
こちらは有名な怪談噺『牡丹灯籠(三遊亭円朝)』の一文で、大辞林 第三版の解説に「斜に構える」の例として出ています。
蚊帳の中で伴蔵が待っているのは女の幽霊。直前にお酒を引っかけて待っていることから、ここでは「身構えている」という意味で使われていることが分かります。
3:「物事に正対しないで、皮肉やからかう態度で臨む」
こちらが私たちにとって、一番馴染み深い「斜に構える」の使い方ではないでしょうか。
本来の意味とは真逆の、物事に対してまともに対応をせず、不真面目な様子を指しています。
漢字の「斜」を「斜め(ななめ)」とも読むことから、間違った意味で変化し、それが定着してしまったと考えられます。
例文「あの人って、いつも斜に構えているよね」
このような会話は会社関係の人との飲み会などで使われていそうですよね。
本来の意味で「斜に構える」を使ったとしても、現代ではマイナスな意味で捉えられてしまう恐れもあるので、注意したいところです。
「斜に構える」の類義語にはどのようなものがある?
ここでは、現代で一般的に使われている、ネガティブな意味の「斜に構える」と同じような意味の言葉を紹介していきます。
偏屈な
性格や性質が素直ではなく、ひねくれていること。
へそ曲がり
考え方や行動がひねくれていること。
「あの人ってちょっとへそ曲がりなところがあるよね」というのは、「あの人って斜に構えているところがあるよね」と同じような意味になります。
あまのじゃく
漢字で書くと「天邪鬼」。日本の妖怪の一種の「悪鬼」と伝えられていますが、「人の心を見計らっていたずらを仕掛ける子鬼」という言い伝えから転じて、人のすることや言うことにわざと逆らうことを言います。
現代では「斜に構える性格」と「あまのじゃくな性格」は、同じような意味として捉えることもできます。
「斜に構える」の対義語にはどのようなものがある?
「ひねくれた態度を取る」などのネガティブな言葉の意味で浸透してしまった「斜に構える」なので、対義語は本来の意味の「物事に向き合って、改まった態度を取る」と似たような意味になります。
身構える
相手に対して、いつでも対応できる姿勢を取る。
気負う
自分こそは、今度こそは上手くやろうと意気込む。
うやうやしい
相手を敬って、礼儀正しく振る舞う様子。
ちなみに… 「斜に構える」の英語表現は?
「斜に構える」を英語で表現すると、おそらく一番ぴったりくる単語は「皮肉な、冷笑的な」を意味に持つ「cynical(シニカル)」ではないでしょうか。
「He is cynical about everything.」
彼はすべてについて冷笑的です=彼はすべての物事に関して斜に構える、となります。
最後に
元々は「改まった態度を取る」という意味だった「斜に構える」。しかし時間が経つにつれその意味が変化して「物事を真っ直ぐ見ないで、からかい気味な態度で物事に臨む」という意味で使われるようになってしまった慣用句でした。言葉の意味は時代で変化していくもの。「斜に構える」は、現代ではネガティブな印象で使われることが多いということを覚えておくと、トラブルにならずに済みそうです。
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