「がんになる? 不妊になる?」子宮内膜症へのギモンを解決!
子宮の病気として、これまで子宮がん・子宮筋腫についてとりあげましたが、今回は「子宮内膜症」についてみていきましょう。
子宮内膜症は良性の疾患ですが、がんや不妊の原因になる場合もあります。症状を知ることで、自分は子宮内膜症になっていないかまずはチェックしてみましょう。「最近生理痛がひどくなった」という方は、もしかしたら子宮内膜症の可能性があるかも…?
◆子宮内膜症ってどんな病気?
子宮内膜症とは、本来子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜という組織が、子宮以外の場所で増えてしまう病気です。子宮内膜は女性ホルモンの一種であるエストロゲンによって生理と同じサイクルで増殖や出血を繰り返す組織です。しかし、子宮内膜症の場合、子宮内膜が子宮以外の場所で増殖・出血してしまい、卵巣・卵管・腸が癒着したり、のう腫が出来たりします。
実際に子宮内膜症が発生する場所として腹膜や卵巣、子宮と直腸の間のくぼみなどがあげられます。なかでも卵巣にできた子宮内膜を、「卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)」と呼び、まれにがんの原因となる場合もあるため、早期発見が大切です。
ここからは子宮内膜症にあてはまる症状や、子宮内膜症が引き起こす病気のリスクについてみていきましょう。
◆まずは自分でチェック! こんな症状があったら子宮内膜症かも?
子宮内膜症がある場合、以下のような症状がみられます。まずはあなたに当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
・生理時に激しい痛みを感じる
・生理時に鎮痛剤が効かない
・生理時に飲む薬の量が増えてきている
・生理でない時も下腹部痛がある
・性交時に膣奥に痛みを感じる
・排便時に肛門の奥が痛い
・不妊治療中である
これらの症状がある場合、子宮内膜症が発生している可能性があります。
特に、子宮内膜症になった患者さんの多くが強い生理痛を訴えています。生理痛がひどくなってきた・生理のとき以外にも痛みが出るようになったという方は一度検査を受けていただくことをおすすめします。
以上のような子宮内膜症の症状があてはまった方は、「治る病気なのか」「子宮内膜症になるとどうなってしまうのか」と不安に思われるかもしれません。ここからは子宮内膜症が引き起こすからだへのリスクと、治療法についてみていきましょう。
◆がんになる? 不妊になる? 子宮内膜症のリスクとは
子宮内膜症自体は良性の疾患ですが、不妊やがんなど、他の病気にかかるリスクがあります。今回は「がん」「不妊」「再発」というキーワードと子宮内膜症の関係について説明します。
子宮内膜症がはがんになる?
卵巣チョコレート嚢胞は、1%以下の確率でがんになるケースが確認されています。確率が低いとはいえ、卵巣チョコレート嚢胞の大きさが10cm以上の場合は特に注意し、定期的に検査を受けるようにしましょう。
子宮内膜症が不妊の原因になる?
不妊症の方の20%~50%に子宮内膜症がみられるといわれています。子宮内膜症の症状が進むことで、卵管と卵巣や子宮などが癒着を起こしやすくなり受精卵の移動を妨げる、とされているためです。しかし、子宮内膜症になったからといって必ず不妊になるというわけではありません。子宮内膜症の方でも妊娠・出産する方はいらっしゃいます。
不安に思われる方は一度医師に相談してみることをおすすめします。
子宮内膜症再発して直らない?
子宮内膜症は再発を繰り返しやすい疾患です。卵巣や子宮ごと病巣を取り除かない場合、閉経まで付き合いっていく病気になる場合があります。しかし、たとえ再発しても、早期発見によって病気の進行を妨げながら治療できますので、経過観察を欠かさず行うことが大切です。
◆子宮内膜症の治療法
では、子宮内膜症になった場合、どのような治療方法があるのでしょうか。
子宮内膜症を治療する目的として「痛みを和らげる」「妊娠する確率を上げる」「がん予防」の3つがあげられますが、それぞれの目的にあわせた治療方法を専門医と相談して決めましょう。
痛みを和らげたい!→鎮痛剤やピルによる薬物療法
妊娠をまだ希望せず、とりあえず下腹部の痛みを和らげたい、という方には鎮痛剤やピルの服用がおすすめされます。また、ホルモン剤を用いて排卵を止め、子宮内膜の増殖を抑える方法もあります。ご自身の症状によって処方される薬物は異なりますので、医師の指示通り服用するようにしましょう。
妊娠する確率を上げたい!→手術療法をおすすめされる場合も
妊娠をご希望されている方で卵巣チョコレート嚢胞がある場合、手術をすすめられる場合があります。手術を行った場合、病変を取り除くことで妊娠の妨げになっている癒着をはがすことが出来ます。そのほかにはホルモン剤や薬物によって病巣を小さくする方法があります。手術を行うかどうかは専門医による判断が必要となりますので、不安に思われる方は婦人科に相談してみてくださいね。
がん化を防ぎたい!→手術療法。経過観察を欠かさず
卵巣チョコレート嚢胞の経過観察中に、悪性の所見がみられた場合は手術が必要になります。また、卵巣チョコレート嚢胞は閉経後に消失することは少なく、がんになるリスクは高くなります。卵巣チョコレート嚢胞の大きさや血中濃度など常に経過観察を行うことをおすすめします。
◆その痛みは子宮内膜症かも?
月経痛は女性によって痛みの度合いが異なるため、たとえ強い月経痛を感じたとしても「これが私の体質なんだ」と思い、我慢してしまう場合があります。
子宮内膜症は、早期発見によってがんや不妊のリスクを和らげることができる病気です。いつもより月経痛がつらい場合や、今まで感じたことのない痛みが発生した場合には、婦人科で相談してみてくださいね。
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医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
監修する女性向けアプリ「eggs LAB」では、独自ロジックにより、アプリでの問診で自身の情報を入力することで、これまでにない高い精度での生理日・排卵日予測を実現。不安定な生理周期にも対応した適切なアドバイスや、妊活に関する情報まで、個々の身体の状態にフィットした「あなただけの/あなたのための/今欲しい情報」を発信中。
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