スタイリッシュな学園生活。
…それってどんな学園生活?
と、首をかしげつつ本屋の棚からこの『坂本ですが?』の
試し読み版を手に取り、ザッと開いてみるとクラスメイトからの
嫌がらせをこれでもかとスマートに回避している主人公、坂本の姿…。
私はその約5ページたらずで
あっという間に坂本のファンになったのです。
物語の舞台はいたって普通の、私たちと同じ世界。
けれど坂本の存在により普通の世界が華麗に見えるほど、
周りの人間を魅了して巻き込んでいくその様は、カリスマという言葉では物足りない。
現代の学校生活においてなくすことの難しい”いじめ”というシビアな問題について、
こんなにいい意味で軽やかに描いてる漫画はきっとそうはないはず。
シビアな問題を明るく…というギャグ漫画は今まで何度も読んできましたが、
明るく…ではなくあくまで真剣に…そのシュールさや多少くだらなさも感じますが…、
それを凌駕するほどの知的さが抜群の魅力だと私は思いました。
なかでも私がいちばん痺れた坂本流嫌がらせ回避方法は、
教室に入ったら自分の机と椅子がなくなっていて席がない状態だったとき、
スッと教室の窓を開けてそのまま窓辺に腰掛け、教科書片手に
「僕はここで結構ですから。」
嫌がらせを逆手にとり、自分を美しく魅せるその姿はまさにかっこいい!の一言。
うーん…この絶妙なニュアンスが文章だけではなかなか伝わりにくいのが
とても悔しいですが、本当にシリアスなだけに、ギャグの面白みが極まります。
“イジメはかっこ悪い”とどこかで聞いたことのある言葉が痛烈に伝わってきます。
私は普段漫画を読むとき、
だいたい主要キャラクターの友達になって一緒になって行動したい!と思うことが大半なのですが、
『坂本ですが?』の場合は、坂本と同じクラスメイトになって
その完全無欠な生活にキャーキャーと我を忘れて
その他のクラスメイトと一緒に歓喜したい…!
と、見惚れていたいと思わせる何かがありました。
坂本の完璧すぎる姿が神々しく思えるからなのでしょう…。
日々のなかで起こりうるちょっとしたイヤなことを坂本に発散してもらう。
きっと坂本なら一切あとくされなくスカッと気持ちよく発散してくれます。
笑いが出るほどのスタイリッシュさで降っ飛ばしてもらおう。
私にも小さな不安や不満があることがありますが、そんなときじんわりと
笑わせてもらうのに最適な作品です。
バックナンバー
Vol.1 ドラゴンボール
Vol.2 ミノタウロスの皿
Vol.3 四畳半神話大系
Vol.4 ヒカルの碁
Vol.5 ふしぎ遊戯
Vol.6 坂本ですが?
Vol.7 美少女戦士セーラームーン
Vol.8 死刑執行中脱獄進行中
Vol.9 魔法少女まどか☆マギカ
Vol.10 みかこさん
Vol.11 ニーチェ先生
Vol.12 ちびまる子ちゃん ーわたしの好きな歌ー
Vol.13 ラブライブ!
Vol.14 クレヨンしんちゃん
Vol.15 ぼくは神様
Vol.16 東のエデン
Vol.17 かくかくしかじか
Vol.18 リメイク
Vol.19 ニューヨークで考え中
Vol.20 コンプレックス・エイジ
Vol.21 パーマン
Vol.22 プリンセスメゾン
Vol.23 鴻池剛と猫のぽんたニャアアアン!
Vol.24 昨夜のカレー、明日のパン
Vol.25 笑ゥせぇるすまん
Vol.26 こんな私はだめですか?
Vol.27 喪黒福次郎の仕事
Vol.28 東京タラレバ娘
Vol.29 ママはテンパリスト
いしいみかこ
スラリとした手脚でどんな服も着こなしてしまう独自の存在感が人気のモデル。2013年1月号より『Oggi』専属。このWEBオリジナルコラムでは、大好きな漫画&アニメについて書き連ね、二次元にも強いという新たなモデル像を提案。また2014年以降、ミュージカルや舞台に出演するなど女優としての活動も活発に。秋には『美少女戦士セーラームーン~アン ヌーヴォー ヴォヤージュ~』に出演、セーラープルートを演じた。