もし自分が本の世界に入れたら…。
そんなことは夢だから…と思う反面、そんなことができたらどれだけ楽しいだろうと妄想がふくらんでしまいます。
そうなれば、一気に非現実へトリップです。
『ふしぎ遊戯』には
そんなわくわくしてしまう物語が詰まっています。
主人公の美朱(みあか)と親友の唯は、「四神天地書」という本の中へ吸い込まれてしまい、
東西南北に司る四神の中のふたつ、朱雀と青龍の巫女になり
七星士と呼ばれる戦士を探し出すことになります。
そしてその戦士と共に国を守ることに…。
そうしていく中で、美朱は七星士である鬼宿(たまほめ)という男性に惹かれていきます。
しかし鬼宿は本の中の存在であり、あくまでフィクション…。
そう思うと素直に好きという気持ちを認めらない…、
そんなわだかまりを抱えたまま美朱は、一度本の外へ出るタイミングを迎え、
そして再び元の世界へ戻ってきたとき、確信するのです。
彼はフィクションなんかじゃない。
確かに存在している!と。
…そして私は、
美朱のその想いに、いつもその通りだと頷くのです。
私は美朱のように本の中には入ることはできません。
本の中の登場人物は、私たちが生きるこの世に実在していない、なんてことは
漫画オタクの私にだってもちろんわかっています。
しかし、「漫画のキャラクターなんて存在しないんだから」
と言われてしまうと、私はとてつもなく悲しくなってしまうのです。
この言葉は、実際に私が漫画のキャラクターの話をしていて言われたことなのですが、
本や漫画やアニメを愛する人にとって、なんて冷たい言葉なんだろうと思いました。
正直、その言葉を言われたときは怒りすら感じました。
小説や漫画、アニメなどのために作られた世界観やキャラたちは、
それを読んだ人たち、各々の中に存在するものだと私は思っています。
百人が読めば百人なりの、「そのキャラ」が存在しているはずなのです。
そうやって自分の中で生きている存在を否定されることは
本当に悲しく、そして寂しくなります。
そんなときに頭をよぎったのは、上に書いた美朱の想いでした…。
本の中の存在を否定するのではなく、
信じることで自分の想いに素直になっていく美朱の姿。
フィクションの中の人物へだという事実にも負けない、
美朱の真っ直ぐな想いは、私に大きな力をくれるのです。
それは、私の頭や心の中でいきいきと生きている
小説や漫画、アニメに登場するキャラクターたちに感じる
共感や憧れなどのいろいろな私の感情は、
ほかのだれでもない私自身が、リアルに感じることができるものだから。
それがあるからこそ、私の日常や、もしかしたら人生だって!
さらに彩りや実りのあるものになっているのだと思います。
そして、そう信じる勇気をくれた『ふしぎ遊戯』の美朱に、
私は大きな共感をまた抱いているのです。
バックナンバー
Vol.1 ドラゴンボール
Vol.2 ミノタウロスの皿
Vol.3 四畳半神話大系
Vol.4 ヒカルの碁
Vol.5 ふしぎ遊戯
Vol.6 坂本ですが?
Vol.7 美少女戦士セーラームーン
Vol.8 死刑執行中脱獄進行中
Vol.9 魔法少女まどか☆マギカ
Vol.10 みかこさん
Vol.11 ニーチェ先生
Vol.12 ちびまる子ちゃん ーわたしの好きな歌ー
Vol.13 ラブライブ!
Vol.14 クレヨンしんちゃん
Vol.15 ぼくは神様
Vol.16 東のエデン
Vol.17 かくかくしかじか
Vol.18 リメイク
Vol.19 ニューヨークで考え中
Vol.20 コンプレックス・エイジ
Vol.21 パーマン
Vol.22 プリンセスメゾン
Vol.23 鴻池剛と猫のぽんたニャアアアン!
Vol.24 昨夜のカレー、明日のパン
Vol.25 笑ゥせぇるすまん
Vol.26 こんな私はだめですか?
Vol.27 喪黒福次郎の仕事
Vol.28 東京タラレバ娘
Vol.29 ママはテンパリスト
いしいみかこ
スラリとした手脚でどんな服も着こなしてしまう独自の存在感が人気のモデル。2013年1月号より『Oggi』専属。このWEBオリジナルコラムでは、大好きな漫画&アニメについて書き連ね、二次元にも強いという新たなモデル像を提案。また2014年以降、ミュージカルや舞台に出演するなど女優としての活動も活発に。秋には『美少女戦士セーラームーン~アン ヌーヴォー ヴォヤージュ~』に出演、セーラープルートを演じた。