「発信する」ということは、メディアに出たり記事を書いたりすることはもちろん、それだけではありません。クライアントへの営業や、社内でのプレゼン、転職での面接、プライベートでの会話まで…「言葉」や「会話」が発生するシチュエーションであれば、それは「発信」と言えるのではないかと思います。
新商品に関する話題を世の中に認知させていくPR会社での業務や、様々な方に取材した内容を適切な形・言葉で世の中に伝えていくという編集者・ライター、ラジオ番組の企画といった仕事を通して私が感じてきた「言葉の力を磨いて、発信する」ために必要なことを、この連載で紹介します。
チャンスを掴む、発信力の鍛え方 これまでの記事:
1.自分の声・喋り方のクセを知る
2.“メモの習慣化”で思いを言葉に
第3回目のテーマは「SNSとの向き合い方」。SNSには「日頃仕事や活動を一緒にしている方とのコミュニケーションの手段」、また「自らの活動や世界観を発信していく手段」としての側面があると思います。今回はそれぞれの面から、社会人としてどういった向き合い方をしていくべきか、探ってみたいと思います。
極力“不安にさせない”やりとりで前に進める
まず「日頃仕事や活動を一緒にしている方とのコミュニケーションの手段」としてのSNSについて。
最近ではLINEやFacebookメッセンジャーを通しての仕事のやりとりをすることが、増えているのではと思います。そういった中でしっかりこちら側のニュアンス・温度感を伝えるために意識すべきは「極力不安にさせない」こと。顔が見えないSNS上では相手に無用の不安を抱かせず、スムーズにやりとりを進めていきましょう。
文末が「。」だけで終わる連絡は、SNS上では「機嫌がよくないのかな?」と思われがち。「!」=感嘆符を多少混ぜるぐらいがちょうどいいと感じます。しかし、いつも「!」ばかりではテンション高めに感じさせるので、使いすぎないようにご注意を。メールは比較的かしこまったやりとりであることが多いですが、LINEやFacebookメッセンジャーのような、メッセージを送り合うSNSでのやりとりは多少砕けたものや勢いのある返事である方が、相手を「不安にさせない」ことにつながります。
他に無用の心配をさせてしまいがちなSNSでの行動としてよく聞くのが「既読にしたままレスポンスをしない」こと。返信する暇がないなら、開封しない。その場合は相手も読む暇もないほど今は忙しいタイミングなのかな? と感じてくれるはずです。
とはいえSNSでのやりとりについては、決まったルールがあるわけではないので、人によって向き合い方や感じ方にばらつきがあります。「あまりメッセンジャーで長い項目を送ってこないでほしい」「メールではなくメッセンジャーでサクサク進めたい」など…人によって好みや受け取り方の印象も異なります。もし仕事を一緒に進めていく相手とSNSで連絡を取り合うのであれば、最初にどのツールでどんな頻度でやり取りするのがいいかはっきり相手に聞いてしまうか、相手のペースを探りながら、心地よいやりとりの方法を探っていくことをお勧めします。
実際に会ったときの会話の糸口をSNSでリサーチするのも有効
別の角度からSNSの有効な利用方法を考えてみます。実際に相手に会ってコミュニケーションをとるとき、事前にSNSで相手のことを知っておくという方法。会う前に相手のSNSを見返して、印象に残った言葉や投稿などをチェックしておき、ふとした時に話題にしてみましょう(「そこまでチェックしてくれている」と相手に思っていただけるように)。私もインタビューでは、例えば「あの時にあんなつぶやきをされていましたが…」などと質問のきっかけにすることもあります。
Facebook、Instagram、Twitter…それぞれの活かし方
そして次に、「自らの活動や世界観を発信していく手段」としてのSNSについて。Facebook、Instagram、Twitter…それぞれの特性を考えてみたいと思います。
■Facebookは周囲の近い人に向けた発信
Facebookは、積極的に外部に発信していきたい人に限らず気軽に活用できるSNSといえます。繋がっている方が職場仲間中心であれば、今度やりたい仕事につながりそうなイベントの模様をアップしても良いでしょうし、クライアント中心であれば、今自社が力を入れているプロジェクトについて積極的に発信しても良いでしょう。ただ繋がりが増えるにつれ、それぞれの方のことを考えると(進行中のプロジェクトなど)伝えづらい情報も出てきがち。そんな中では「Friends List」を使って、リストを作成。情報によってリストから発信するグループを選んで公開するといいでしょう。伝えたい人に向けて確実に伝えたい、この人にはもう少し機が熟してから伝えた方がよいな、などと慎重に情報を管理できるのがFacebookのメリットです。
■ Instagramは世界観を構築
ハッシュタグを投稿に入れたり、いいね返し・フォロー返しをしたりすることで、フォロワーが増え、新たな繋がりが広がりやすいInstagram。フォロワーが増えれば、仕事になるチャンスにもつながることも。そんなInstagramで重要なのは、発信するStoriesや写真がどんなテーマや世界観の元発信されているのか。ここが明確になっていればいるほど、共通の関心を持つ人のアンテナにひっかかります。写真のフィルターの活用や撮影する被写体、投稿の内容などを通して、自らの世界観を構築することを意識してみましょう。もちろん、アカウントをクローズにして友人同士で楽しむという使い方もアリです。ある程度外部に目を向けるか、内部で楽しむものにするか、アカウントの方針を決めておくと良いですね。
■Twitterは実質オープンな場
アカウントを非公開にしない限り誰でもツイートは読め、Yahoo!のリアルタイム検索などのSNSでの投稿でも検索対象となる、ネット上においては実質オープンな場と言えるTwitter。今は企業のマーケターもツイート検索をして、新商品やキャンペーンの反応を探っているようです。そういった特性から、本名で投稿するのか、ニックネームなのか次第で、大きく使い方が変わってくるSNSといえます。名を売っていきたい、ゆくゆくは自らの名前で食べていきたいという人は本名での積極的な活用をオススメします。
全てのSNSをこまめに更新するのはなかなか難しいもの。自分自身の現在の状況を踏まえて、どのSNSの更新に力を入れるか決めて、かつそこで発信していきたいテーマや、読んでほしい人のイメージを明確にしておけば、SNSとの向き合い方もストレスのないものになるのではないでしょうか。
ひとつ共通することとしては、いずれのSNSも(規模の大小はあれ)自分に共感・応援してもらえる人を増やすためのもの。少しでも言葉の伝わり方が気になるのであれば少し時間をかけ頭の中で言いたいことを整理してから投稿したり、ネガティブと受け取られないような言葉遣いを心がけるなども大切です。SNSについては、今後実際に自らの活動に積極的に活かしている事例なども紹介していきます。
今や個人のみならず企業もこぞってSNSを利用している時代ですが、私たちの日頃の仕事でもその環境はフル活用していきましょう。
次回は、「“発信”するための情報“収集”術」についてお伝えしていきます。
PROFILE|市來孝人/Takato Ichiki メディアプランナー/PRプランナー
1985年生まれ。メーカー、PR会社勤務を経て独立。ビジネス・エンタメ関連のWebメディアでの編集・取材、テレビ局Webメディアの運営、ラジオ番組の出演・企画、ベンチャー企業や文化人のPRなどの業務に携わる。
Instagram:@takato_ichiki