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「いらっしゃいますでしょうか」は過剰な敬語
「いらっしゃいますでしょうか」は厳密には文法的に誤った言葉で、尊敬語である「いらっしゃる」に丁寧語の「ます」と、さらに丁寧な疑問形の「でしょうか」が重なり、過剰に丁寧な印象を与えがちです。ただし広く使われている言葉でもあり、現代では完全な誤りとしない考え方もあります。
一方、文化庁の「敬語の指針」でも「敬語は過剰ではなく適度に使う」と記載されていることから、不自然な印象を避けるならば別の言い回しが適切です。
♦︎【電話・受付で】適度な敬語であらわすなら、なんと言うべき?
「いらっしゃいますでしょうか」を適度な敬語であらわすならば「いらっしゃいますか」で十分です。むしろ、過剰敬語やマニュアル敬語の印象を避けたい場面ほど「いらっしゃいますか」が適切でしょう。
主に電話口や相手の会社の受付など特定の相手につないでほしいシーンで用いるのが一般的で、「○○様はいらっしゃいますか」と相手の名前を添えて使います。
「いらっしゃいますでしょうか」が多用される理由

敬語として過剰とされる「いらっしゃいますでしょうか」が多用されているのには、理由もあります。
典型的な理由を解説します。
♦︎理由1:クレームを避けたい心理が強いから
電話対応や取引先との交渉で、過度に失礼を避けようとすると過剰な敬語を発してしまいがち。
不安が強いほど言葉を丁寧にしすぎる方向へと進みやすく、自分でも過剰な言葉遣いだと理解はしていても、クレームを避けたい心理が優先して丁寧すぎる言葉を選んでしまいやすいのです。
♦︎理由2:就活敬語のまま直していないから
就活時代に身につけた敬語のクセは、社会人になってもなかなか抜けにくいもの。
「いらっしゃいますでしょうか」同様に「〜させていただいております」「よろしくお願い申し上げます」などの過剰な表現を多用しているケースも見受けられます。
過剰な就活敬語は先輩や上司から敬語のクセを指摘されて、初めて気づくパターンも少なくありません。
♦︎理由3:仕事がデキる印象にしたいから
アラサー世代に多い理由として、若く見られたくない、仕事がデキる印象にしたいといった心理が強く働いて、過剰な敬語を使っているケースもあります。
“ちゃんとしている人”に見せたい気持ちが強すぎると、最大限に丁寧な敬語を好みがちな面も。
敬語を足すことによるシゴデキ感を出そうとして、かえって不自然な言葉を使っている例も珍しくありません。
「いらっしゃいますでしょうか」は逆効果? 過剰な敬語が与えるマイナス印象

「いらっしゃいますでしょうか」が醸す違和感は、ときにマイナスの印象を与えることもあります。
アラサー世代が周囲に感じさせやすい印象をまとめました。
♦︎自信がなさそうに見える
過剰な敬語を多用すると、自信がなさそうに見えがちです。
「いらっしゃいますでしょうか」も過剰な言葉ですので、必要以上に様子をうかがっているように受け取られたり、自分の判断に自信がもてなかったりといったマイナスの印象を強めます。
♦︎マニュアルっぽい印象を与える
過剰な敬語は、テンプレート感が出やすい傾向もあります。
丁寧な言葉を重ねている発言や文章が目立つほど、マニュアルっぽい印象も積み重なります。
本人の言葉として話しているのにマニュアルに沿って定型文を発しているように受け取られれば、コミュニケーションに課題も生まれます。
♦︎距離が広がりやすい
敬語には、相手への敬意を示しながら人間関係の距離をコントロールする働きもあります。
そのため過剰な言葉を用いるほど心理的な壁が厚くなり、打ち解けにくくなる影響も。
上司や後輩だけでなく取引先に対しても、過剰な言葉を使い続けるほどに心理的な距離が広がりやすい面は否めません。
大失敗!「いらっしゃいますでしょうか」で場が凍った人も…

ところで、筆者の後輩で過剰な敬語を使うのが習慣になっていた20代後半の女性も、普段から「いらっしゃいますでしょうか」を多用していたひとり。
あるときに筆者と一緒に取引先へ訪問したところ、受付で「▲▲様はいらっしゃいますでございますでしょうか」と発言をして、その場が凍りました。
どうやら緊張のあまり敬語が暴走してしまったようでしたが、普段から過剰な敬語を使い続けていると、ふとしたときに過剰すぎる言葉を口走ってしまいやすいようです。
敬語を足しすぎるクセに心当たりがあるならば、少しずつ自然な敬語に慣れていくと◎。
【FAQで解決!】「いらっしゃいますでしょうか」の疑問にアンサー

「いらっしゃいますでしょうか」にまつわるアラサー世代の疑問にアンサー♡
この機会に、疑問や不安を解決しておきましょう!
♦︎Q1:「いらっしゃいますでしょうか」は二重敬語ですか?
A1:典型的な二重敬語というよりも、丁寧すぎる過剰敬語です。
二重敬語は同じ種類の敬語を重ねることなので、尊敬語や丁寧語を混ぜている「いらっしゃいますでしょうか」は過剰敬語にあたります。
♦︎Q2:もっと丁寧に言いたい場合はどうすればいいですか?
A2:クッション言葉をうまく使いましょう。
もっと丁寧な言い方をしたいときには、敬語を重ねるよりもクッション言葉を上手に織り交ぜて。
「お手数ですが、○○様はいらっしゃいますか」と、「いらっしゃいますか」に「お手数ですが」を加えるだけでも丁寧な印象が強まります◎。
♦︎Q3:上司が使っているので自分も使わないといけないですか?
A3:一般的な表現を使っていれば問題ないでしょう。
上司が過剰な敬語を使うタイプだと、自分も同等にしなくてはいけないのか不安になるものです。
しかし、社外に対しては過剰な敬語よりも一般的な敬語が適切。
一方で、社内であれば周囲や上司に合わせて社内文化を優先しても良いでしょう。
♦︎Q4:過剰敬語を急にやめると失礼になりませんか?
A4:失礼にはなりません。
過剰敬語は「過剰」なので、むしろ過剰ではない適切な敬語に直すほうが、信頼できるコミュニケーションにつながります。
丁寧な印象は敬語の量で決まるわけではありませんので、バランスの良い言葉を選んで使っていきましょう。
「いらっしゃいますでしょうか」は万能な言葉ではない
「いらっしゃいますでしょうか」は、ビジネスシーンでよく見聞きするフレーズではあるものの万能な言葉ではありません。
くどく聞こえたり自信がなさそうに見えたりするデメリットも潜むことから、状況や相手に応じて適切な敬語を選べるように心がけていきましょう。
過剰な表現に慣れてしまうとシンプルな表現に抵抗をもちやすいのですが、整っている言葉を使うことこそが教養や品格につながります◎。
TOP画像/(c)Adobe Stock

並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。



