「おかげで」は敬語ではありませんが、感謝の意を丁寧に伝える表現として使えます。
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ビジネスシーンで「おかげで」という表現を使うとき、「これって敬語として正しいのかな?」「目上の人に使っても失礼にならないかな?」と迷った経験はありませんか? 感謝の気持ちを表す「おかげで」ですが、使い方を間違えると相手に不快感を与えてしまう可能性もあります。
本記事では、「おかげで」の正しい意味と使い方、目上の人に使う際の注意点、より丁寧な言い換え表現まで、実例を交えて詳しく解説します。適切な敬語表現を身につけて、円滑なコミュニケーションを実現しましょう。
「おかげで」は敬語として正しい? ビジネスでの使い方と注意点を整理
ビジネスシーンで「おかげで」という言葉を使う際、敬語としてふさわしいのかどうか、疑問に思ったことはありませんか? まずは、正しい使い方を解説します。
「おかげで」は敬語? それともカジュアル?
結論から言うと、「おかげで」は敬語(尊敬語・謙譲語・丁寧語)そのものではありません。しかし、相手への敬意や感謝の気持ちを示す、非常に丁寧な表現です。
語源である「お陰(おかげ)」は、元々「神仏などのご加護」を意味し、転じて「人から受けた力添え」を指すようになりました。接頭語の「お」がついていることからも、相手への敬意が込められていることがわかります。
ただし、親しい間柄でも頻繁に使われるため、場面によっては少しカジュアルな印象を与える可能性も。「君のおかげで助かったよ」のように使える気軽さが、かえってフォーマルな場での使用をためらわせる要因だといえるでしょう。

上司や取引先に使っても失礼ではないか?
基本的に、上司や取引先に「おかげで」を使っても失礼にはあたりません。 感謝している相手とその理由が明確な場合、むしろ好印象を与えるでしょう。
【使用しても良い例】
「〇〇部長にご指導いただいたおかげで、無事に契約を結ぶことができました」
注意すべきは、聞き手によっては「当たり前だ」「少し馴れ馴れしい」と感じる可能性がゼロではないということです。特に、感謝の度合いが非常に大きい場合や、重大な局面での報告、謝罪の場面では、より改まった表現を選ぶ方が賢明です。
「おかげで」を敬語らしく見せる一文の工夫
「おかげで」という言葉を直接言い換えなくても、前後の言葉を補うだけで、格段に丁寧な印象になります。
【工夫のポイント】
・「誰の、どんな行為か」を具体的に示す
(△)「おかげで、助かりました」
(〇)「〇〇様が迅速にご対応くださったおかげで、大変助かりました」
・文末を感謝の言葉で締めくくる
(△)「皆様のおかげで、目標を達成できました」
(〇)「皆様にご支援いただいたおかげで、目標を達成できました。心より御礼申し上げます」
このように、具体的な行動への言及と、率直な感謝の言葉を添えることで、敬意の深さがより明確に伝わります。

目上の人にも失礼なく使える「おかげで」の言い換え表現
「おかげで」では少し軽いかもしれない、と感じる場面で使える、知的で誠実な印象を与える言い換え表現を身につけておきましょう。
「おかげで」の印象を和らげる言い換えパターン
感謝の気持ちをより深く、丁寧に伝えたいときに役立つ表現です。
「~(いただき)まして、誠にありがとうございます」
「おかげで」を使わず、相手の行為への感謝を直接伝える最もストレートな表現です。
例:「先日はご多忙の折、ご調整いただきまして、誠にありがとうございました」
「~のお力添え(ご尽力)があったからこそ」
相手のサポートがなければ成し得なかった、という特別感を強調できます。
例:「〇〇様のお力添えがあったからこそ、このプロジェクトを成功させることができました」
「~の賜物(たまもの)です」
「賜物」は「努力などの結果として得られたいいもの」という意味。相手への強い敬意を示す、格調高い表現です。
例:「この度の受賞は、ひとえに皆様のご指導の賜物と存じます」
ビジネスメールで使いやすい表現例
メールでは、文面ならではの硬さを和らげ、かつ礼儀正しさを保つ表現が重宝します。
「ご高配(ご配慮)に~」
「ご高配」は相手の配慮や心配りを敬う言葉。メールの冒頭や結びで使いやすい表現です。
例:「○○様のご高配に深く感謝申し上げます」
「にご指導いただき~」
相手への感謝と成功の理由をセットで伝えられる、論理的で分かりやすい表現です。
例:「〇〇様にご指導いただけたことが、成功の要因です」

目上の人・役職者向けの配慮ある言い換え
最大限の敬意を示したい場面では、強調する語を用いて、やや改まった言葉を選ぶのが定石です。
「ひとえに~」
「ひとえに(ただただ、まったく)」という言葉で、感謝の対象が相手ただ一人であることを強調します。
例:「ひとえに〇〇様のご助力の賜物と、心より御礼申し上げます」
「重ねて~」
スピーチや挨拶など、多くの関係者へ最大限の感謝を述べる際に適しています。
例:「これも皆様のご支援あってのことと、重ねて感謝申し上げます」

「おかげで」は「お力添え」「賜物」などに言い換えれば丁寧な印象を与えられます。
「おかげで」の使い方をシーン別に解説|文例つきで理解
使う場面によって表現の仕方にも工夫が必要です。よくあるビジネスシーン別の例文で具体的に紹介します。
成果報告や業績共有での「おかげで」
・「○○様のご指導のおかげで、目標を達成することができました。」
・「皆さまのご協力のおかげで、プロジェクトが順調に進んでおります。」
チームや上司への報告では、感謝の対象を明確にし、謙虚さを込めることが大切です。
クレームや問題解決後の謝辞での「おかげで」
・「迅速なご対応をいただいたおかげで、早期に解決に至りました」
・「ご理解・ご協力のおかげで、このたびは円満に収束いたしました」
謝罪やお礼の場面では、相手の尽力に敬意を持って言及することが肝心です。
メール冒頭や締めくくりに使える「おかげで」
・「いつも温かいご指導を賜りまして、誠にありがとうございます」
・「今後ともご指導・ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます」
本題に入る前のクッションや、結びの言葉として感謝を添え、温かみを保ちつつも、ビジネスらしい節度を意識しましょう。
「おかげさまで」との違いとは? 正確に理解して使い分けよう
「おかげで」と似た言葉に「おかげさまで」がありますが、意味や使い方に違いがあるのをご存じですか? このパートでは、2つの表現の違いや混同を防ぐためのポイントを整理します。
「おかげで」と「おかげさまで」の意味の違い
・おかげで:「誰の」「どんな行為」のおかげかが明確な場合に使うことが多いです。特定の個人や行為への感謝を示します。
例:「(あなたが)手伝ってくれたおかげで、早く終わった」
・おかげさまで:不特定多数の人々や、漠然とした周囲の環境への感謝を示すことが多いです。「皆様のおかげをもちまして」というニュアンスで、より丁寧で社交辞令的な響きを持ちます。
例:「おかげさまで、息子も無事に卒業できました」

シーンによってどちらを使うのが適切か
・スピーチ、挨拶、近況報告など、聞き手が不特定多数の場合
→ 「おかげさまで、弊社は創立50周年を迎えることができました」が適切。
・特定の相手への感謝を伝えるメールや会話
→ 「〇〇課長のおかげで、難しい交渉を乗り切ることができました」が適切。
混同しやすい例文と改善例
混同例:(上司に向かって)「この件、おかげさまで順調です」
これでも間違いではありませんが、誰への感謝かが少し曖昧です。
改善例:「〇〇部長にアドバイスいただいたおかげで、本件は極めて順調に進んでおります」
このように、感謝の対象を明確にすることで、より気持ちが伝わりやすくなります。
英語で「おかげで」はどう表現する? ビジネスで使える英文例
グローバル化が進む中で、「おかげで」のニュアンスを英語でどう表すかは重要です。ここでは、直訳だけでなく、ビジネスシーンで自然に使える英文例を紹介します。
Thanks to/Because ofの使い分け
・Thanks to: 「~のおかげで」。ポジティブな結果につながった理由を示すときに使います。日本語の「おかげで」に最も近い表現です。
例:Thanks to your support, we won the contract. (あなたのご支援のおかげで、契約を勝ち取れました)
・Because of: 「~のせいで」「~が原因で」。ポジティブ、ネガティブ両方の結果の理由に使えますが、文脈によってはネガティブなニュアンスを含むことがあります。
例: The game was cancelled because of the rain. (雨のせいで、試合は中止になった)
成果や感謝を伝えるときの英文表現
例:I couldn’t have done it without you.(あなたなしでは、成し遂げられませんでした)
相手の存在の大きさを伝える、心に響く表現です。
例:Your contribution was crucial to our success. (あなたの貢献が、我々の成功に不可欠でした)
よりフォーマルで、相手の働きを具体的に称賛する表現です。
丁寧でビジネス向きの英文メール例
メールの文面では、感謝の気持ちをより明確に記述することが大切です。
例:Thank you for your prompt response. Thanks to your detailed explanation, we now have a much clearer understanding of the situation.
(迅速なご返信ありがとうございます。あなたの詳細なご説明のおかげで、状況が非常によく理解できました)
最後に
「おかげで」は便利な表現ですが、敬語として使う際のポイントを押さえないと思わぬ誤解を招きます。目上の人や大切な取引先には、「お力添え」や「賜物」といった表現と使い分けることで、感謝の気持ちを正しく丁寧に届けられます。言葉の選び方で信頼関係はより深まりますので、ぜひ用途や相手に合わせた配慮を心がけましょう。
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執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。



