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「汝自身を知れ」の意味とは?
「汝自身を知れ(なんじじしんをしれ)」は、自分の無知を自覚し、心を高めることの大切さを説いた言葉です。古代ギリシャの哲学者・ソクラテスが遺した言葉だといわれています。
ただし、ソクラテスの格言というのはあくまで一説で、由来は諸説あります。ソクラテスの格言という説は、ソクラテスの弟子、プラトンに師事したアリストテレス以降に広まりました。
自分の無知や不足を含め、理解を深める姿勢はビジネスでも求められます。「汝自身を知れ」は、自己理解と自分を高める努力の大切さを教えてくれる言葉といえるでしょう。
「汝自身を知れ」の使い方や例文
「汝自身を知れ」は、日常生活やビジネスシーンで以下のように使用できます。
自分自身を振り返る必要がある場面や、自己を高めたい気持ちを表現したいときなどに活用してください。
・必死で頑張っているつもりなのに、何をやっても成果が出ない。汝自身を知れというし、今は自身を見つめ直すタイミングなのかもしれない
・「自分は誰より優れている。努力など必要ない」と言う彼に、汝自身を知れと言ってあげたい
・汝自身を知れというように、自分の無知を自覚し、努力しようと励む意識が自分を成長させてくれる
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「汝自身を知れ」を座右の銘としたとされるソクラテス
哲学の父、哲学の祖などと呼ばれるソクラテスは「汝自身を知れ」を座右の銘としていたとも。
数々の名言を残し、今を生きる人々にも生きるヒントを与えています。ここからはその一生を、簡単に見ていきましょう。

ソクラテスは歴史に名を残す哲学者
ソクラテスは「人はどう生きるべきか」といった研究分野を切り拓いた人物だといわれています。釈迦、孔子、キリストと並ぶ「四聖(四人の聖人)」の1人です。
一方で、ソクラテスは自身の著書を一冊も残していません。その思想や人物像は、弟子の著書により語り継がれています。
代表作といえば、ソクラテスの弟子プラトンが記した「ソクラテスの弁明」でしょう。その弟子であるアリストテレスを含む3人が、古代ギリシャの哲学者としてよく知られています。
普遍的な真理を追い求めたソクラテスの人生
古代ギリシャの都市国家アテナイで誕生したソクラテスは、平穏な青年期を過ごします。やがてギリシャの主導権をめぐり戦争が勃発し、ソクラテスは3度にわたり従軍したとか。
ある日、ソクラテスの友人は「ソクラテス以上の賢者はいない」という神のお告げを聞いたと本人に伝えます。ソクラテスはそのお告げに疑問をもち、賢者といわれる人々のもとを自ら訪ね歩くうち、賢者と呼ばれる人々も普遍的な真理を知らないことにソクラテスは気付きます。以降、ソクラテスの精神批判的な活動は、社会から危険視されていきました。
プラトンの「ソクラテスの弁明」には、死刑宣告を受けたソクラテスの様子が記されています。ソクラテスは、自分に罪を着せようとする陪審員への命乞いをせず、友人が勧めてくれた逃亡にも応じませんでした。最後まで「善く生きること」を貫いたソクラテスは死刑を受け入れ、自ら毒杯をあおりその一生を閉じたようです。

ソクラテスが辿り着いた「無知の知」とは
「無知の知(むちのち)」は、徳とは何かを考え抜いたソクラテスが辿り着いたとされる概念です。
当時は「ソフィスト」と呼ばれる人物たちが、広く知識や技能を教えることを職業としていました。ソフィストは政治的成功を目指す人々に雄弁術を教える人物ですが、徳への理解を得ているわけではなかったよう。
一方、ソクラテスは徳とは何かを追求し、賢者とされる人々を訪ねて回ることで、人は自分の専門外のことに関して正しい知識をもたないことに気付きます。
「自分も同じように知らないことは多い。ただ、自分が知らないということを自覚している。その点においては他の賢者と違うのだ」という考えこそが、ソクラテスが辿り着いた「無知の知」の境地だったとされています。
「汝自身を知れ」にも、自分は無知であることを重視する「無知の知」への思いが込められていると考えられるかもしれません。
無知の知
引用:小学館 デジタル大辞泉
自らの無知を自覚することが真の認識に至る道であるとする、ソクラテスの真理探究への基本になる考え方。
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ソクラテスの名言「徳は知である(知徳合一)」
「徳は知である」の「徳」は、優れた魂を意味します。「知」は、善悪を正しく判断できることです。ソクラテスは、より善く生きるためには正しい知識が必要であると説いています。
人生やビジネスでは、豊富な知識が役立ちます。一方、善悪を正しく判断できないと、誤った道に進んでしまうこともあるかもしれません。
とくに、現代社会は多様な情報にあふれています。情報の取捨選択が求められるなか、「知徳合一」の考えは、今を生きる人々に善悪を判断する知識の大切さを教えてくれるといえるでしょう。
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「汝自身を知れ」の考えをビジネスに活かそう
ソクラテスは「汝自身を知れ」を座右の銘とし、最後まで善く生きることを目指しました。その原点には、自分が何も知らないのだと自覚する「無知の知」への視点があります。
慌ただしい日々のなかで奔走していると、つい自分自身を見失いがちです。うまくいかないときこそ立ち止まり、ソクラテスの「汝自身を知れ」の考えをビジネスに役立ててください。
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