「面白い」が勝れば、「大変さ」は消える。だから挑み続ける
田中 圭さんインタビューの前編では、完全ワンシーン・ワンカットドラマ、『おい、太宰』の舞台裏をお話しいただきました。後半では、出来上がったこの異色ドラマの見どころを田中さんからご紹介。さらには、30代に向けてのメッセージも必読です!
三谷幸喜さんが描く人物みんな、どんどん愛すべきキャラクターになっていく
――多くの苦労や予想外のハプニングもありつつ(詳しくは前編で)、完成した『おい、太宰』。田中さんの率直な感想は…?
田中:大変だったけど、楽しかったですね。連続でお芝居をする贅沢さもあったし、何より映像作品では味わえない、舞台ともまた違う、独特の緊張感。ふだんできない体験をさせてもらった、という感じです。
それに、三谷さんは監督であり脚本も書いているので、その場でセリフを足したり引いたり、自由自在にできるんです。実際、やりながら増えていったセリフがいいアクセントになりました。

――では、見どころをあげるとなんでしょうか?
田中:ひとつは、僕と宮澤エマさん演じる夫婦のリアルな会話。連続ドラマでは、なかなかここまで描かないですから。それが、急にタイムスリップして、おかしなことになって。最初はけだるい感じだった妻も、なんだか変わっていって…。
太宰は太宰で、クールなのかと思えば、どんどん壊れていくじゃないか! こんなふうに、三谷さんが描く人物みんなが、どんどん愛すべきキャラクターになっていくのが、本当に面白い。これこそ、三谷流。きっとみなさんに楽しんでいただけると思います。
そして田中さん演じる小室健作はというと、最初はピシっとスーツもヘアスタイルもキメていたのが、物語が進むほどにどんどん乱れていく様が、とにかく面白い! 汗はかくし髪は乱れるし、いつしかジャケットは脱ぎ捨て、靴も汚れ。話が進むほどに人間くさく、そして魅力が増していく、田中さんの真骨頂が堪能できます!

年齢を重ねるほど、選択肢が増え、楽しいことを選ぶ権利も増えてくる
――と、予想外なことはありつつも、そもそも大変になりそうなことが目に見えていた本作。それでも迷わず挑んだのは?
田中:「面白い」と「大変」を天秤にかけたとき、「面白い」が勝ったからです。そうすると「大変」は消えるものなんです。
――「面白い」「楽しい」は、田中さんのお仕事の基本のようですね。
田中:だって、楽しいことやってたほうが、絶対にいい。それに、年齢を重ねるほど、選択肢が増え、楽しいことを選ぶ権利も増えてくる。30代はまだ、とにかくがむしゃらに走るだけだったけど、それがあったからこそ40代は、何にチャレンジするか自分で考えていける。そんな気がしています。
僕自身の30代は、本当に忙しくて、だからこそたくさんの人と役に出会えて、それはすごくよかったと思います。休みがほしいとも、休みたいとも、思ったこともありませんでした。いっぱい働いているという意識さえもなかったんです。それを後悔はしていないけど、読者のみなさんにはオフも大事にしてほしいな。
――では、(太宰のタイムスリップにちなんで)田中さんがタイムスリップするなら?
田中:今のままでいい、かな。30代のがむしゃらに働いてきた時間は、ムダじゃなかったと思うし、それがあって、今がある。これも悪くはないかなって。
――そんな30代とは少しペースの違う今、どんな時間が「幸せ」ですか?
田中:ごろごろ寝転んで映画を観ている時間。そして仕事が終わって、「今日も頑張った〜」「さて、何食べようかな」って考える時間。それが、最高の贅沢じゃないですか? そんな楽しみがあるだけで、また仕事を頑張れる。…とか言っていたら最近、自分史上最大の体重になってました。トレーニングで筋肉増やしたからかな、と思ったけど、どうやら違うみたい。少しは、食事をセーブしたほうがいいのかなぁ(笑)。
WOWOW・ドラマW 三谷幸喜『おい、太宰』

三谷幸喜が監督・脚本を務める「完全ワンシーン・ワンカットドラマ」の第三弾。構想10年、昨年秋に全シーン伊豆・下田で撮影された。ストーリーの中心にいるのは、小室健作<田中圭>・美代子<宮澤エマ>の夫婦。健作は、太宰治を敬愛する平凡な会社員。妻の美代子と一緒に出席した結婚披露宴の帰りに、迷い込んだ海岸は、太宰が心中未遂を起こした場所らしい。太宰ゆかりの地に興奮した健作が、暗い洞窟を進んでいくと…。その先にいたのは、太宰治にそっくりな男(松山ケンイチ)!
登場人物たちが海岸を舞台に繰り広げるノンストップ・タイムスリップコメディに乞うご期待!
出演:田中圭、宮澤エマ、梶原善、松山ケンイチほか
脚本と監督:三谷幸喜
撮影:山本英夫
WOWOWにて2025年6月29日午後10時より放送・配信。
https://www.wowow.co.jp/drama/original/oidazai/
俳優 田中 圭
たなか・けい 1984年、東京都生まれ。2000年にCMで俳優デビュー。2003年のテレビドラマ『ウォーターボーイズ』で注目される。近年の主な出演作に舞台『もしも命が描けたら』『夏の砂の上』『Medicine メディスン』『陽気な幽霊』、映画『あの人が消えた』『劇場版ドクターX』『私にふさわしいホテル』、ドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』『ブルーモーメント』『わたしの宝物』『アンサンブル』などがある。
ジャケット ¥101,200(TOMORROWLAND〈CARUSO〉)、シャツ¥52,800 (OVERCOAT)、パンツ¥57,200(TREMEZZO〈TAGLIATORE〉)
※その他スタイリスト私物です
TOMORROWLAND TEL:0120-983-522
OVERCOAT TEL:03-6455-4116
TREMEZZO TEL:03-5464-1158
撮影/高木亜麗 スタイリスト/荒木大輔 ヘアメイク/岩根あやの 文/南 ゆかり