本のプロが極上の読書時間を提案！ ふと湧いてくる「読書欲」を満たすシーン別選書
シーン別選書をしてくれたのは… 書評家・石井千湖さん
書店勤務を経てライターに。書評、インタビューを中心に活動中。著書に『積ん読の本』（主婦と生活社）ほか。
【テーマ1】週末、腰を据えて読みたい本
読み応えのある小説や話題のシリーズ本など、どっぷりと読書に没入してリフレッシュしたい！
『YABUNONAKA－ヤブノナカ－』著／金原ひとみ 文藝春秋 ￥2,420
著者史上最長！ 社会派の長編小説。性加害の告発をきっかけに、文芸業界で交錯する8人の視点から、性や権力、暴力、愛の複雑な人間模様を描いた長編群像劇。「実話が着想のきっかけになっているとのこと。出版界の#Me Tooがテーマで、業界の裏話も生々しく、何が正義かということを考えさせられます。展開も衝撃的！」
【テーマ2】隙間時間でサクッと読める本
通勤時間や休憩時間はもちろん、シートマスク中にも!? 気負わず読みたいときに。
『スバらしきバス』著／平田俊子 ちくま文庫 ￥924
移動時間が思わず愛おしくなるエッセイ。詩人である著者が東京や福岡など、各地のバスに乗り続けた日々をつづるエッセイ。「ひょいとバスに乗って、知らない地名を見て妄想したこと、乗客たちの様子、目にとまった風景などをユーモラスな文章でつづっています。目的もなくバスに乗って、どこかへ行ってみたくなります」
【テーマ3】夜、眠りに就く前に読みたい本
ほっと、ひと息つける就寝前には、心地よい睡眠へと誘ってくれるエッセイや小説を。
『わたしは孤独な星のように』著／池澤春菜 早川書房 ￥2,310
浮遊感が漂う話が夜の静けさにぴったり。孤独を抱えながらも懸命に生きる人々の心の機微を描いたSF短編集。「声優としても活躍する著者の初めての小説集。表題作は、亡き叔母の願いを叶えるため老朽化した宇宙コロニーを旅する女性の物語。夜の静けさの中で、一編一編大切に読みたい、美しくて不思議な話が収録されています」
【テーマ4】この夏、旅気分を味わうことができる本
日々の疲れを癒す旅先で、あるいは非日常を感じながら楽しむ読書体験は特別なもの！
『湖まで』著／大崎清夏 palmbooks ¥2,200
旅の情景が思い浮かぶ美しい筆致の物語。旅好きな著者らしい海や川、湖といった自然の風景が織り込まれた連作小説集。「主人公が恋人と別れた後に訪れた島のことを思い出す『みなみのかんむり座の発見』など、全5編を収めています。冷たく澄んだ水のようでもあり、心地いい温泉のようでもある文章に浸ってください」
【テーマ5】空腹時注意！ 食欲を刺激する本
まるで美味しそうな匂いが漂ってくるよう。読むだけで思わずおなかが空く本たち。
『きょうの肴なに食べよう?』著／クォン・ヨソン 訳／丁 海玉 KADOKAWA ￥1,650
食べることの喜びを改めて感じるエッセイ。無類の酒好きで知られる韓国の人気女性作家が、春夏秋冬の食材やソウルフード、酒の肴についてつづったエッセイ。「ライラックの花が咲くころに食べたくなる腸詰め、友達とケンカした日に食べた冷麺、のどからお玉が飛び出すほど飲みたいカムジャタン。肴の味がさまざまな記憶を呼び覚まします」
2025年Oggi8月号「今、なんだか本が読みたくて…」より
構成／宮田典子
再構成／Oggi.jp編集部
