本のプロが極上の読書時間を提案! ふと湧いてくる「読書欲」を満たすシーン別選書
シーン別選書をしてくれたのは… 代官山 蔦屋書店・間室道子さん

文学コンシェルジュ。独自の審美眼が光る選書に定評があり、元祖カリスマ書店員として雑誌やTVなどでも活躍。
【テーマ1】週末、腰を据えて読みたい本
読み応えのある小説や話題のシリーズ本など、どっぷりと読書に没入してリフレッシュしたい!

『カット・イン/カット・アウト』著/松井玲奈 集英社 ¥1,870
俳優・松井玲奈の圧倒的な力量を実感! 演劇の世界を舞台に、ふたりの女性の人生が交錯し変化していく様子を描いた小説。「第一話の主人公は52歳の脇役女優。人気劇団の座付き演出家・野上の時代活劇に出演が決まるが、若手やスターの背景に徹する日々。でも彼女にはある才能があって…。最終話で回収される伏線に一気読み必至!」
【テーマ2】隙間時間でサクッと読める本
通勤時間や休憩時間はもちろん、シートマスク中にも!? 気負わず読みたいときに。

『これが最後の仕事になる』著/五十嵐律人、小川 哲ほか 講談社 ¥1,760
ユニークな試みのショートショート集。すべて〝これが最後の仕事になる〟という一文から始まる掌編を収録。「宮内悠介、呉勝浩、一穂ミチ、米澤穂信など今をときめく24人が参加したアンソロジー。通勤途中に読むとニヤニヤ&ぞわぞわしてしまう、スリリングな快作ぞろい。仕事中、休憩したいときに〝今朝読んだ一編〟に浸るのも◎」
【テーマ3】夜、眠りに就く前に読みたい本
ほっと、ひと息つける就寝前には、心地よい睡眠へと誘ってくれるエッセイや小説を。

『月とコーヒー デミタス』著/吉田篤弘 徳間書店 ¥2,090
ベッドサイドに置いて毎夜少しずつ読みたい。ロングセラー短編集『月とコーヒー』の第2集。夜の深みを表現した黒の装丁が美しい。「24の小さな物語はすべていきなり始まり、『ここで!?』というところで終わるが、唐突感や尻切れトンボ感はなく、まるで「夢」のよう。楽しい気持ちと共に、〝続きは眠りの中で〟と安心して目を閉じられる」
【テーマ4】この夏、旅気分を味わうことができる本
日々の疲れを癒す旅先で、あるいは非日常を感じながら楽しむ読書体験は特別なもの!

『おでかけアンソロジー ひとり旅 いつもの私を、少し離れて』著/阿川佐和子ほか だいわ文庫 ¥880
ひとり旅の魅力がギュッと詰まった一冊。旅先で感じる解放感や、気兼ねなく過ごす自由さなど、ひとり旅だからこそ味わえる瞬間を詰め込んだエッセイ集。「旅での発見って、風景とか名所とかグルメではなく〝自分自身〟だと思うのです。旅でリフレッシュするって、新しい自分になっていること。次の休暇が待ち遠しくなる一冊」
【テーマ5】 空腹時注意! 食欲を刺激する本
まるで美味しそうな匂いが漂ってくるよう。読むだけで思わずおなかが空く本たち。

『リストランテ アモーレ』著/井上荒野 ハルキ文庫 ¥616
表紙で既にワクワク♪そして、おなかはグー。姉弟で切り盛りする目黒の小さなレストランを舞台に、男女の恋模様や人間模様を描いた連作短編集。「お店はイケメンシェフ・杏二が目当てのお客でにぎわうが、食材も思いを寄せる女性も手際よく〝捌く〟感じが否めない…。スリリングな展開の裏では、美味しそうな料理がひしめき合います」
2025年Oggi8月号「今、なんだか本が読みたくて…」より
構成/宮田典子
再構成/Oggi.jp編集部