今、なんだか本が読みたくて… 働く私たちの「読書欲」を刺激する!Book Topics

Topic 1. 令和のホラー小説ブーム到来!
雨穴さん、背筋さんなどのスター作家を筆頭に、ホラー小説が盛り上がりを見せています。本好きの間でも注目度が高く、『このホラーがすごい!2024年版』(宝島社)のヒットをきっかけにブームが拡大しそう!
Topic 2. 全国で文学フリマが大盛況!
プロ・アマ問わずに、自分が文学と考えるものを自費出版する、文学作品の展示卸売会「文学フリマ」が全国で大盛況。自主制作の出版物「ZINE」も話題で、三省堂書店 神保町本店などの大型書店でも取り扱い中。
Topic 3. 本のプロによる選書サービスが人気!
情報社会で疲弊しがちな現代人にとって、読むべき本を探すことがストレスの原因になることも。そんなとき、書店員さんや書評家など、プロのセンスや信頼感を頼りにできる選書サービスの需要が急増中。
宇垣美里さん×森本萌乃さんが熱量たっぷりにお届け! 働く私たちのために〝推し本〟を教えて
明日も仕事をがんばろうと思える本、人生の価値観を揺るがした本――。Oggi世代で本好きなおふたりの読書愛に、知的好奇心が刺激される♪

(右)宇垣美里さん
うがき・みさと/’91年、兵庫県生まれ。’19年3月にTBSを退社後、現在はラジオパーソナリティーやドラマ出演、執筆業など幅広く活動している。『週刊文春』、『女子SPA!』などで映画や漫画のコラムを連載中。
(左)森本萌乃さん
もりもと・もえの/’90年、東京都生まれ。「MISSION ROMANTIC」代表。新卒で大手広告代理店に入社後、3社の転職を経て、’19年に起業。本を通じた人との出会いを提供するオンライン書店「チャプターズ」主宰。著書『あすは起業日!』(小学館)が好評発売中。
読書タイムはいつとっている? 本の探し方は?
編集部:おふたりとも日々お忙しいと思いますが、本はいつ読んでいますか?
宇垣さん:私にとって長時間の移動は絶好の読書タイム。本屋さんに行くと今すぐ読まなくても「いつか飛行機で読もう」と購入することもあって、そんな本たちが家で待機中です。
森本さん:私は寝る前にまとめて読むことが多いです。自分の好きなジャンルだけではなく、世界を広げるためにも、人からおすすめされた本はなるべく手にとるようにしているのですが、宇垣さんはどうやって本を探していますか?
宇垣さん:渋谷の「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」は、思いもよらない本に出合える確率が高いです。
森本さん:わかります! 高円寺の「蟹ブックス」も、店主の花田菜々子さんの選書が素敵です。読みたい本が増える一方で、積ん読がすごいことに…。
宇垣さん:私もいつかそれを読む時期がくるかもという可能性を捨てきれなくて。

編集部:私はいつか読もうと『夜と霧』(著/ヴィクトール・E・フランクル)を長いこと積ん読中です…。
宇垣さん:私の人生観を変えた本です! アウシュビッツを生き抜いた精神科医の体験記ですが、極限状態の中でも己を奮い立たせてくれる愛する人を思う気持ちとか、最後まで人間から奪うことのできない尊厳のあり方に胸を打たれます。読み返す度に刺さる場所や学ぶものが変わるので、そのときの自分の心情が表れるよう。読むなら新版がおすすめです。
森本さん:何度も読み返したい本ってある! 私は『アルケミスト−夢を旅した少年』(著/パウロ・コエーリョ)に価値観を揺さぶられました。少年サンチャゴの冒険物語ですが、行く先々でどんな選択をするか、出会う人にもらう助言をどう活かすかが描かれます。起業する直前に、背中を押してもらえた一冊です。
宇垣さん、森本さんが選ぶ! Oggi読者への推し本は?
編集部:ここからは、Oggi読者への推し本のご紹介をお願いします。
森本さん:宮下奈都さんの『太陽のパスタ、豆のスープ』は小説ですが、やりたいことリストをつくって人生を見つめ直す話なんです。自分の考え方しだいで生きやすくなる、という気づきをもらえます。宮下さんの作品は読みやすくて、本をあまり読まない読者にも推したいですね。
宇垣さん:細やかながら確実に残る心の変化をていねいに描いていますよね。
森本さん:『世界5大宗教入門』は電子書籍でも持っていて、いつでも読めるようにしている私の教科書的な一冊。日本人は宗教とか政治の話が苦手ですが、海外の方と仕事をすると自分の国のことを話さないといけない機会もあるので。

宇垣さん:すごく勉強になりそう!
森本さん:『傷を愛せるか』は、心の傷との向き合い方がつづられたエッセイ。精神科医の宮地尚子さんは、常に学びを得ることを楽しんでいるのが印象的。知性は歳を重ねても残るものだと思っていて、学び続けることはおしゃれで、色気があって、人生を豊かにする秘訣なんだと、この本から教わりました。
宇垣さん:私も自分が発する言葉や思考は蓄積によるものが大きいと思っていて、その大部分を自分は本から摂取していると思います。
森本さん:本当ですよね。ふと、どんなふうに歳を重ねたいか考えたときに、何か意見を求められる人でありたいと宮地さんの本を読みながら思って。こうなりたいって思いながら導かれる読書体験って、最高に気持ちいいもの! 私、宇垣さんのこの推し本『女ふたり、暮らしています。』がずっと気になっていました。
宇垣さん:すごく面白いですよ! 韓国人女性ふたりがルームメイトとして一緒に暮らす様子を描いたエッセイで、人の生活をのぞき見している楽しさがあり、こういう人生の選択肢もあるのかと思わせてくれる一冊です。韓国では、結婚をしていないだけで半人前扱いをされることがあるそうなのですが、それでも「私たちは私たちで楽しいのですが、何か?」という感じが、スカッとして好き。
森本さん:柚木さんのエッセイも気になる。『BUTTER』はイギリスでも翻訳されて、文学賞も受賞されましたね。
宇垣さん:柚木さんの作品は、小説はもちろん、彼女のパワフルさが大爆発するエッセイもおすすめ。『とりあえずお湯わかせ』はコロナ禍を含む4年間の日常がつづられています。生活をよくするためにいろいろな努力をするけれど、「これってもしかして社会のせいじゃない?」と気づき始めて。特に4章の「もう、黙らない」は覚醒しまくり(笑)。
森本さん:勇気がわいてきそう。
宇垣さん:それこそ、金原ひとみさんの『ナチュラルボーンチキン』は、主人公の人生を変える出会いから勇気をもらえます。欲を捨てたように生きていた45歳で事務職の女性が、ぶっ飛んだ編集者に出会って変わっていくのですが、小さな変化をすごく輝かしいものとして描いていて、そこに救われるというか。読後はいつもと違うことをしたくなるはず。

読書でしか得られないものって?
編集部:最後に、読書でしか得られないものってなんだと思いますか?
宇垣さん:本は映画や漫画と違って、能動的に楽しむカルチャー。たとえば「美女」とか「天国みたいな場所」って言われても、人によって価値基準が違うので、思い描くものは人それぞれ自由。文章でしか成し得ない表現というものを楽しめるのが、読書だと思います。
森本さん:だからこそ、読書を通じて人と共感できるとうれしいですよね。積ん読に罪悪感を感じつつも、実はいい景色つくってるじゃん自分、って酔いしれている部分もあったりします(笑)。
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【宇垣さん衣装】〝ミラ ショーン バイ チカ キサダ〟のポロニット¥36,300・〝ヴィンス〟のタンクトップ¥25,300・白ニット¥75,900(コロネット) デニムパンツ¥57,200(ボウルズ〈ハイク〉)リング[シルバー]¥34,650・リング[ゴールド]¥28,050(プリュイ トウキョウ〈プリュイ〉) ネックレス¥68,200・ブレスレット¥46,200(リューク)
2025年Oggi8月号「今、なんだか本が読みたくて…」より
撮影/田中 瞳 スタイリスト/小川未久(宇垣さん分) ヘア&メイク/山下智子(宇垣さん分)、日高 咲(ilumini. /森本さん分) 構成/宮田典子
再構成/Oggi.jp編集部