本のプロが極上の読書時間を提案! ふと湧いてくる「読書欲」を満たすシーン別選書
シーン別選書をしてくれたのは… ブックハウスカフェ・茅野由紀さん

店長。書店に立つ以外にも、新聞などの媒体に書評・コラムなどを連載中。専門学校でのゲスト講師も務める。
【テーマ1】週末、腰を据えて読みたい本
読み応えのある小説や話題のシリーズ本など、どっぷりと読書に没入してリフレッシュしたい!

『BUTTER』著/柚木麻子 新潮文庫 ¥1,045
実際の連続不審死事件をモチーフに、食と女性の欲望、社会の偏見を描いた長編小説。「バターが全編のキーワードとなり、登場人物の行動の折々に登場。事件当時に私自身が抱いた感情を、客観的に芳醇な脂肪分と共に飲み込むことができたような、それともあまりにこってりしすぎて消化不良のような…」
【テーマ2】隙間時間でサクッと読める本
通勤時間や休憩時間はもちろん、シートマスク中にも!? 気負わず読みたいときに。

『精選女性随筆集 須賀敦子』著/須賀敦子 選/川上弘美 文春文庫 ¥1,100
母国語が日本語で感謝! 麗しい文章が癒しに。イタリアを愛し、独自の人生を歩んだ随筆家・須賀敦子の名随筆を精選した一冊。「時間泥棒に侵され気味な毎日の中、私の心の支えのような一冊です。美文、名文、佳文、格調高い文…どんな表現も超える圧倒的な日本語の妙。翻訳なしで、そのまま須賀さんの言葉を読めるのは何にも勝る幸運!」
【テーマ3】夜、眠りに就く前に読みたい本
ほっと、ひと息つける就寝前には、心地よい睡眠へと誘ってくれるエッセイや小説を。

『星の王子さま』著/サン=テグジュペリ 訳/内藤 濯 岩波文庫 ¥572
遥か宇宙に想いを馳せベッドでまどろみたい。愛、友情、人生の本質を優しく問いかける世界的な名作童話。「眠る前に、遥か宇宙に想いを馳せるのも素敵な読書体験。童話とはいえ決して単純な話ではなく、いまだにこの本が本当に伝えたかったメッセージを享受できているかどうか自信はありません。一生をかけても読み解きたい本です」
【テーマ4】この夏、旅気分を味わうことができる本
日々の疲れを癒す旅先で、あるいは非日常を感じながら楽しむ読書体験は特別なもの!

『ロビンソン・クルーソー』著/ダニエル・デフォー 訳/坂井晴彦 画/ベルナール・ピカール 福音館文庫 ¥880
プールサイドでゆるい気分で読みたい。さまざまな工夫と信仰心で困難を乗り越える姿が描かれた、イギリス近代小説成立期の冒険小説。「サバイバルな冒険物語を楽しめる一方、白人至上主義や身分社会なども描かれている作品です。歴史を踏まえた上で、自分が今いる世界を感じることができておすすめです」
【テーマ5】空腹時注意! 食欲を刺激する本
まるで美味しそうな匂いが漂ってくるよう。読むだけで思わずおなかが空く本たち。

『ライラックどおりのおひるごはん みんなでたべたい せかいの レシピ』著/フェリシタ・サラ 訳/石津ちひろ ビーエル出版 ¥1,760
15か国の料理とレシピが満載の絵本。ライラック通りのアパートの住人が、それぞれの故郷の料理をつくり、庭に集まって一緒にお昼ごはんを楽しむ絵本。「15家族が郷土料理(サルモレホ、ワカモレ、ブラックビーンズスープ、ココナッツ・ダールなど…)を次々に披露します。香りまで立ち上ってきそうな読書体験を楽しめます」
2025年Oggi8月号「今、なんだか本が読みたくて…」より
構成/宮田典子
再構成/Oggi.jp編集部