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過去の経験が、知らぬ間に今の自分に影響を与えていることがあったります。特に、幼少期に感じた孤独や不安が、成長しても心に深く残り、対人関係や自己肯定感に影響を及ぼすことは少なくありません。
この記事では「アダルトチルドレン」という心理学用語を通して、私たちが無意識に抱えている心の問題を紐解き、どのように克服できるのかを探っていきます。
アダルトチルドレンとは?|心理的な影響とその背景
幼少期の経験が大人になった自分にどのような影響を与えるか、ご存じですか? アダルトチルドレンは、過去の家庭環境や親子関係が深く関わっているとされています。アダルトチルドレンの定義や形成される背景を知ることで、自分の心の中に潜む影響を理解する手助けになるでしょう。
アダルトチルドレンの定義と基本的な特徴
「アダルトチルドレン」の意味を辞書で調べました。
アダルト‐チルドレン【adult children】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
子供のころの家族関係などが原因で、精神的に不安定な状況で育ち、成人後も生き方に悩んでいる人。元来は米国で、アルコール依存症の親のもとで育った人をいう。アダチル。AC。
[補説]子供の状態から抜け出せないでいる大人の意味で用いるのは誤り。→ピーターパンシンドローム
アダルトチルドレンとは、子供時代に家庭内での問題を経験し、大人になってもその影響を抱え続ける人々を指しているということがわかりました。
「子供の状態から抜け出せない大人」だと意味を取り違えることも多いようなので、注意したいですね。
アダルトチルドレンが形成される背景
アダルトチルドレンが形成される背景には、家庭内での環境が大きく影響していると考えられます。
例えば、幼少期に親からの適切な愛情やサポートを受けられなかったり。反対に過度な期待を押し付けられたりすると、子供の心には深いストレスや孤独感が蓄積されます。
また、家庭内での親の争いや、感情的に不安定な環境にさらされ続けることで、子どもは感情を抑え込み、自分の本音を表現するのが難しくなることがあるでしょう。
こうした体験が、大人になっても無意識のうちに心に残り、自己肯定感の低さや対人関係に影響を及ぼす原因となる可能性があります。
アダルトチルドレンの主な特徴|典型的な症状と行動パターン
アダルトチルドレンの人々には、共通する行動パターンや心理的な特徴があるといわれています。自己肯定感の低さや人間関係の不安定さは、その一例だといえるでしょう。特徴を知ることで、日常生活の中で抱える課題に気づきやすくなるかもしれません。一緒に見ていきましょう。
自己肯定感の低さ
アダルトチルドレンは、幼少期に親からの愛情や承認を十分に得られないと感じた経験から、自己肯定感が低い傾向にあります。
これは、幼少期に親からの適切な愛情や承認が不足したことが原因だと考えられるでしょう。例えば、褒められたり認められたりする機会が少ないと、「自分は価値がない」、「何をしても認められない」という感覚が心に根付いてしまいます。
その結果、大人になっても自分に自信を持てず、他人からの評価や意見に過度に依存することが多くなるのです。こうした自己肯定感の低さは、人間関係や仕事に影響を及ぼすことがあります。
他者との距離感がわからない
アダルトチルドレンは、幼少期に家庭で安定した人間関係を学ぶ機会が少なかったため、大人になっても他者との適切な距離感をつかむことが難しい傾向があります。
例えば、誰かに強く依存してしまい、その人の感情に過度に振り回されることがあるでしょう。反対に、誰にも頼らず自分だけで何でも解決しようとすることもよくあります。
このような極端な行動が原因で、親密な関係を築いたり維持したりするのが困難な場合が多く、距離感がわからないため、人間関係がぎくしゃくしてしまい、孤立感や不安を抱えやすくなることもあります。
感情の抑圧
アダルトチルドレンは、幼少期に感情を表現することが許されなかったり、無視されたりした経験から、自分の感情を抑え込む傾向があります。例えば、怒りや悲しみなどを感じても、それを表に出すことは「悪いこと」だと学んできたため、内に溜め込みがちです。
その結果、感情を適切に処理する方法がわからず、強いストレスを抱えることが多くなりがちです。感情の抑圧は、他人とのコミュニケーションにも影響を与え、自分の気持ちを素直に伝えられないまま、人間関係がギクシャクする原因となることがよくあります。
アダルトチルドレンを克服するためのステップ|回復のためのヒント
アダルトチルドレンの影響から抜け出すためには、過去を受け入れ、自分を理解することが重要です。ここでは、自己理解の方法や、専門的なサポートを受けることの重要性について紹介します。
自己理解と過去の受け入れ
アダルトチルドレンを克服するための最初のステップは、自分自身を深く理解すること。過去に感じていた感情や体験を見つめ直し、その時に何を感じていたのか、どう反応していたのかを冷静に振り返ることが大切です。
これまで無意識に押し込めてきた感情を、丁寧に掘り起こしてみましょう。そして、自分がどうしてそのように感じたのかを理解しましょう。過去の経験や感情を否定せずに受け入れることが、回復のきっかけとなります。
過去の出来事に対して「こうあるべきだった」と考えるのではなく、「あの時の自分はよく頑張っていた!」と自分を認めることが、次のステップに進むための大切なプロセスです。
カウンセリングやグループセラピーの活用
アダルトチルドレンを克服するためには、自分一人で抱え込まず、専門的な支援を活用することも有効です。
カウンセリングでは、専門家と一緒に自分の過去の感情や体験を掘り下げ、心の中にある問題に向き合うことができます。カウンセラーの指導のもとで、自分の感情を正しく理解し、コントロールする方法を学べるでしょう。
グループセラピーでは、同じような経験を持つ他の参加者と交流し、お互いの体験を共有することができます。こうした場で共感やサポートを得ることで、自分だけが孤立しているわけではないと感じ、回復への一歩を踏み出すことができるでしょう。
カウンセリングでも、グループセラピーでも、自分自身を見つめ直し、健全な人間関係を築くための大きな力になると思いますよ。
最後に
自分自身が「アダルトチルドレン」だと気づいた場合、「生きにくい」と感じることは多いかもしれません。しかし、過去を受け入れ、自己理解を深めると、新しい視点を持ち、前向きに生きる力が得られることにつながります。
自分の感情を正しく理解し、必要なサポートを受けることで、健全な自己肯定感と人間関係を築くこともできるようになるはずです。自分自身を大切にしながら、少しずつでも前進することで、より充実した人生を手に入れてくださいね。
TOP画像/(c) Adobe Stock
監修/キャリアコーチ 菊池啓子(きくち・ひろこ)さん
2003年から企業研修トレーナー・人材育成コンサルタントとして活動。国家資格キャリアコンサルタント。研修登壇回数は年間100回を超え、これまでに5つの大学でキャリアデザインを教える。現在「社外上司」として多くのビジネスパーソンの悩みに寄りそい成長をサポート。趣味は出張先での御朱印集め。家族は夫と猫2匹。
Twitter:@lotus_kikuhime
ライター所属:京都メディアライン