「直す」と「治す」はどう違う?
「直す」と「治す」はどちらも「なおす」と読みます。文章にするとき、どちらの漢字が正しいのかわからなくなることもあるでしょう。
「直す」は元の良好な状態に戻すという意味で、「治す」は病気や怪我を治療するといった意味があります。それぞれ意味は異なるため、間違いに注意しましょう。
ここでは、「直す」と「治す」の意味を解説します。
「直す」の意味
「直す」とは、元の良好な状態に戻す・修復するという意味です。ものがある位置や形状、機能など、正常ではない状態から元の正しい状態に戻すことを指します。
また、「直す」には元の状態に戻すだけでなく、ある状態をほかの状態に変えるという意味もあります。たとえば、人の態度や規則など、これまでとは違う新しい状態に変える場合です。
「直す」の例文
「直す」を使った例文をみてみましょう。
・エアコンが壊れたので、すぐに修理を頼んで直してもらった
・彼はずっと機嫌が悪かったが、店員の丁寧な対応でようやく機嫌を直したようだ
・この書類は誤字が多いので、本日中に直しておいてください
・公の場ではそのような態度をとるのは失礼にあたるため、直した方がよい
・子供のころから引っ込み思案の性格で、もっと積極的な性格に直したいと思っている
「治す」の意味
「治す」は、病気や怪我、体調の悪い状態を回復するという意味です。人や動物などを対象に、健康な状態にすることを指します。ただし、「熱」や「咳」など、病気の症状に対しては使いません。「熱を下げる」「咳をとめる」といった使い方をします。
癖や性格をなおす場合、「治す」が正しいと思うかもしれません。しかし、癖や性格は病気ではないため、「直す」が正解です。
「治す」は体を元の状態に戻すという意味のほか、歯並びを治すなど、よりよい状態にすることも含まれます。
「治す」の例文
「治す」を使った例文は、以下のとおりです。
・風邪気味で少し調子が悪いため、早く治すために薬を飲んで寝ることにした
・虫歯になったら放置せず、早めに歯医者にみてもらって治すことが大切だ
・この病気を治すには、大きな専門病院で手術を受けるしかない
・病気のペットを治すには、遠くの病院に連れていかなければならない
「なおす」の別な使い方
なおすには「直す」と「治す」以外の意味で使われることもあります。「片付ける」「収納する」という意味で、主に関西方面や九州地方で使われている方言です。
関西の人が関東にきて「なおす」を使用すると、「直す」か「治す」の意味で捉えられて混乱する可能性があります。
「片付ける」という意味で使う「なおす」の例文は、以下のとおりです。
・机の上が散らかっているので、なおした方がいい
・明日は来客があるから、余計なものはなおしておくように
・普段使わない道具類は、なおしてください
文脈によっては、なおすを「直す」と勘違いしてしまうかもしれません。とくに3番目の例文では、どこか壊れているのか、どこを直すのかと考えてしまうでしょう。
「直す」の類義語
「直す」にはいくつもの類義語があるため、場面によって使い分けるとより正確に伝わります。「直す」の類義語には、以下の言葉があげられます。
・修理(しゅうり)
・修繕(しゅうぜん)
・修復(しゅうふく)
・改修(かいしゅう)
・修正(しゅうせい)
・手直し (てなおし)
修理は主に機械や家具・家電など、身の回りにあるものが壊れた場合、元に戻すことに使われます。修復は、壊れる前と同一の状態にすることを重視する場合に使われる言葉です。
修繕や改修は建物に使われることの多い言葉で、修繕は経年劣化などで不具合が発生した建物に対処し、元の利用できる状態にまで回復させることです。一方、改修は、元に戻すだけでなく、より高い性能や機能を目指す場合に使われます。
修正とは、文章や意見、計画などの足りないところや誤り、不十分と思われる点を正すことです。手直しは、できあがったあとで不完全な部分を正すことを指します。
「直す」の類義語を使った例文
「直す」の類義語は、例文でみると理解が深まります。それぞれの類語をみてみましょう。
・パソコンが壊れたので、修理に出した
・マンションは外壁や内装などに大掛かりな修繕が必要になる
・古い建物から見つかった絵画は損傷が激しく、修復には時間がかかった
・街のホテルは現在改修中で、改修後は高級ホテルとしてリニューアルオープンする予定だ
・資料はわかりやすい言葉に修正された
・提出された企画案は不足部分が多く、手直しが必要とされた
「治す」の類義語
「治す」の類義語には、以下の言葉があげられます。
・癒やす(いやす)
・回復(かいふく)
・手当(てあて)
・処置(しょち)
「癒やすは病気や怪我を治すという意味のほか、苦しみや悲しみを和らげるという意味があります。回復は元の状態に戻ることで、健康だけでなく幅広い物事に使われる言葉です。
手当や処置は、病気や怪我を治すという意味で使われます。
「治す」の類義語を使った例文
「治す」の類義語を理解するために、例文でみていきましょう。
・友人が慰めてくれたおかげで、彼女は深い悲しみを癒すことができた
・高熱がひかずに長い闘病が続いたが、ようやく回復してきた
・十分な手当をしてもらったおかげで、あれほどひどかった怪我も順調に治癒してきている
・彼は大きな怪我を負ったが、応急処置が良かったために後遺症なども残らずに済んだ
「直す」と「治す」の違いを把握しよう
「直す」は、壊れたものや正しくない状態にあるものを元の状態に戻すという意味です。「治す」は、人や動物などを怪我や病気から健康な状態にすることを指します。
会話ではとくに問題なく通じても、文章にするとどちらの漢字を使うのか迷うこともあるため、正確に理解しておいてください。それぞれの類義語と一緒に覚えておけば、言葉の理解も深まるでしょう。
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