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「猫に小判」の意味
「猫に小判(ねこにこばん)」は、貴重なものを与えても、本人にその値うちがわからなければ何の役にも立たないことのたとえとして使われます。江戸時代の『上方いろはかるた』に登場していることもあり、古くから親しまれていることわざです。
なぜ「猫」が登場するのか、はっきりとした由来はわかっていませんが、興味がないものには関心を示さない性格から猫が選ばれた、という説があります。
「猫に小判」の類語・対義語
「猫に小判」の類語・対義語には、同じように動物が登場することわざがいくつかあります。「猫に小判」と同じく聞き馴染みのあることわざはもちろん、知っていると一目置かれるようなことわざも紹介します。
「猫に小判」の類語
犬に論語
「犬に論語(ろんご)」は、犬に道理を説いて聞かせても意味がないことのたとえです。
論語は中国の思想家である孔子の言葉や高弟の言行が記録されている本のことです。儒教でとくに重視される文献の一つで、学者や偉人に留まらず、一般市民にも広く知られています。
馬の耳に念仏
「馬の耳に念仏」は、馬にありがたい念仏を聞かせても無駄であることから、いくら価値のある話でも、理解ができない者に聞かせていては無駄になることのたとえとして使われます。念仏ではなく「馬の耳に風」ということもあります。
「馬耳東風」という四字熟語も有名ですが、こちらは「人の言うことに耳をかさないで、聞き流すこと」という意味なので、価値が無駄になることのたとえである「猫に小判」とは少しニュアンスが異なります。
兎に祭文
「兎(うさぎ)に祭文(さいもん)」は、どれだけ意見をしても効き目がないことのたとえとして使われます。
「祭文」は、お祭りのときに神様に捧げる言葉で、「祝詞(のりと)」のことを指します。祝詞をウサギに聞かせてもなんの効果もないことから、「猫に小判」と同じような意味で使われます。
「猫に小判」の対義語
鬼に金棒
ただでさえ強いものに、一層強さが加わることを表すことわざです。もともと強い鬼が金棒という武器を持つことで、よりパワーアップする様子が伝わりますね。
弁慶になぎなた
「鬼に金棒」と同じように、強い者が武器を持つことでより一段と強者になる様子を指す言葉です。
弁慶といえば、日本の歴史において高い知名度と人気を誇る人物。源 義経に仕えた人物で、怪力や豪傑といった「強者」の代名詞としても用いられます。
猫にまたたびお女郎に小判
猫にまたたびを与えたり、女郎(じょろう)に小判を与えるとご機嫌になることから、価値のあるものを値打ちがわかる者に与えると効果的である様子を表した言葉です。その人にとって価値のあるものを与えることが大切という教訓とも受け取れる言葉ですね。
「猫に小判」と「豚に真珠」は同じ意味? 似たことわざを紹介
「猫に小判」の類語、対義語を紹介しましたが、似たことわざの中で最も有名なものは「豚に真珠」ではないでしょうか。ここでは、「豚に真珠」について詳しく解説していきます。
「豚に真珠」の意味は?
「豚に真珠」は「猫に小判」と同じく、“価値のわからない者に貴重なものを与えても無駄に終わる”という意味です。「豚に真珠を投げるな」と言われることもあります。
類語で紹介した「馬の耳に念仏」や「兎に祭文」との違いは、“価値のあるもの”が助言や言葉、意見であることに対し、「猫に小判」や「豚に真珠」は小判や真珠といった有形物であることです。
価値のある物を引き合いに出しているあたり、「豚に真珠」は「猫に小判」とより近いニュアンスになりますね。
「豚に真珠」の由来は?「真珠を投げるな」ってなに?
「豚に真珠」は、新約聖書の一節が由来の西洋のことわざです。
新約聖書の『マタイによる福音書』の一節に、「聖なる物を犬に与うな。真珠を豚の前に投なぐな。おそらくは足にて踏みつけ、向き反かえりて汝なんじらを噛みやぶらん」という記述があり、この「真珠を豚の前に投なぐな」から「豚に真珠を投げるな」ということわざができたとされています。
「猫に小判」と同じ意味を持っていても、「豚に真珠」はずいぶんと荒々しい様子が由来となっていますね。
「猫に小判」を使った例文
ここからは、「猫に小判」を使った例文を紹介します。
高級ブランドの靴をプレゼントしたのに、ファッションに疎い彼には「猫に小判」だった
誕生日や記念日など、特別な日には素敵な贈り物をしたいもの。でも、プレゼントする相手によっては、せっかくの高級ブランドもその価値が伝わらないかも…
有名建築家が手がけた物件に住んでいるが、建築はわからないのでまさに「猫に小判」だ
商業施設や美術館、ホテルなど、有名な建築家や空間デザイナーの作品は意外といろんなところにあるもの。デザイナーズやヴィンテージのマンションなど、実はとても価値のあるところに住んでいるのに、意外とその価値を知らない人も多いかもしれません。
貴重な生まれ年のワインをもらったが、私には「猫に小判」の代物だ
製造年によってはプレミアム価格がつくことも珍しくないワイン。でも、普段ワインを飲まない人やお酒に興味のない人にはその価値は分からないもの。その人にとって何が価値のあるものなのかを知らないと、「猫に小判」の状態になってしまいますね。
「猫に小判」の英語表現は?
日本語で「猫に小判」と言いますが、英語ではなんと言うのでしょうか。
cast pearls before swine
「猫に小判」を英語で表現するときは、同じ意味を持つ西洋のことわざである「豚に真珠」を使うとスムーズです。
聖書の「真珠を豚の前に投なぐな」が由来のことわざなので、「cast」で投げる、「swine」で豚という意味から「豚に真珠を投げる」という訳になります。
「猫に小判」の英語表現を使った例文
It is like casting pearls before swine.
それじゃ猫に小判だよ!
You shouldn’t cast pearls before swine.
猫に小判のようなことはしない方がいい。
「猫に小判」はポケモンに登場する?
「猫に小判」と調べると、ポケモンが関連用語に出てくることがあります。
ポケモンにおける「猫に小判」は、ポケモンに登場する技の名前です。漢字ではなく「ネコにこばん」と表記されます。わざマシンを使うことで覚えることができ、猫型ポケモンのニャースなどはレベルアップすることで使うこともできます。
戦闘後にお金を手に入れることができるという特徴を持つ攻撃技です。
最後に
「猫に小判」の意味や例文、英語での言い換え表現を解説しました。類語や対義語にも動物が用いられることわざが多いことや、「豚に真珠」が西洋のことわざであることなど、「意外と知らなかった!」という新しい発見があったのではないでしょうか。馴染み深いことわざだからこそ、ちょっとした知識が話のネタになるかもしれませんね。
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