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大人の学びは日々の仕事や生活の中にある
突然ですが、皆さんはこの24時間以内に何かを「学び」ましたか? SNSや動画を通して、ネット検索で、仕事で何かにトライしてみて、家族や友人とのちょっとした会話の中で… 何か新しい知識を得たり、発見、気づきがあったりしたという人も多いのではないでしょうか。
何かを「学ぶ」というとき、少し前までは「本を読む」「スクールに通う」「研修を受ける」など、詳しい誰かに教えてもらうことが普通でした。
でも今、大人の学びの形は変わりつつあります。正解を知っている人に教えてもらうのではなく、自分で何かにトライすること、その結果を周りの人たちとシェアすることを通して、日常の仕事や生活の中で学ぶことが多くなってきています。
なぜなら、環境変化が激しく正解のない時代、遠くの誰かの「正解」が自分にとっても正解かどうかはわからないからです。学者が認めたセオリーや技術も、世の中の変化に伴って古くなります。そのような時代には、「正解」に頼るのではなく、目の前の状況や自分たちの経験から、新しいセオリーを見つけ出していくことが重要になります。
日常の出来事から学ぶ「経験学習」サイクルを回す
経験から新たなセオリーを見つけ出す、というと難しそうに聞こえますが、実はこの「経験学習」と呼ばれる学び方は、私たちがもともと自然にやっているものでもあります。
例えば、子どもは積み木で遊んでいる時、ぐらぐらして安定せず崩れてしまうと、次はどうしたら崩れないかを考えて積むようになります。このように、やってみたこと(経験)を振り返って、何が良かったのか・良くなかったのかを考え(省察)、次に生かせる教訓・セオリーを発見し(概念化)、次の機会に試してみる(実験)ことを、経験学習といいます。
皆さんも仕事の中で、「今回はうまくいったな」「うまくいった要因はこういうことかな」「次回もこうしてみようかな」というようなことは、自然と考えてきたはずです。
正解のない時代に重要なのは、このような思考のサイクル(経験学習サイクル)を、より意識的に・頻度高く、回すことです。
経験学習サイクル(※)
※“Experiential Learning: Experience as the Source of Learning and Development”(David.A.Kolb,1984)をもとに作成
経験からの学びを引き出し、次につなげるための9つの質問
では、日々の経験からより意識的に・頻度高く学ぶにはどうしたらよいのでしょうか? ここでは、日々の振り返りに活用できる9つの質問をご紹介します。
直近の仕事やプライベートで、あなたがやってみたこととその結果を思い出してください。どんな出来事でもかまいません。そのうえで、下の質問に答えてみてください。
【何が起こった?】
1. あなたが行動した結果、具体的にどんなことが起きましたか?
2. その出来事についてあなたはどう感じましたか?
3. 関係者は何を考えていた/感じていた/望んでいたと思いますか?
【どのような意味がある?】
4. そのような結果につながった要因は何ですか?(うまくいった/いかなかったのはなぜ?)
5. あなた自身の「ものの見方や考え方」はその結果にどのように影響したと思いますか?
6. この経験から得た教訓は何ですか?
【次に何をする?】
7. 次に何をしようと思いますか?
8. 今回の経験を機に、今後いっそう強化したいことはありますか?
9. 反対に、今後変えていかないといけないと思うことは?
いかがでしたか? うーん、と答えに詰まる質問もあったと思いますが、思いついたことを言葉にしてみてください。次はこうしてみよう、ということが、どんなに小さなことでも見つかればOKです。
失敗やつまずきも次への力に変える
仕事でもプライベートでも、何が本当に正しいのかは誰にもわからない時代です。うまくいくやり方やパターンが明確だった時代に比べると、失敗したりつまずいたりすることは増えています。失敗はある意味、今の時代の当たり前。むしろ、失敗やつまずきからどれだけ学べるかが、最終的な結果を左右します。
ぜひ、9つの質問を使って日々の出来事を振り返ってみてください。この質問は、自分ひとりで活用するだけでなく、チームメンバーや周囲の人と一緒に回答してみることもお勧めします。1人より皆で考えたほうが、経験から得られる知恵も豊かになります。
明日からの一歩
最後に、経験から効果的に学ぶ人になるために、明日からすぐに実践できるアクションを紹介します。
【1】1日の終わり/1週間の終わりなどタイミングを決めて、その期間に起きた出来事を振り返り、9つの質問に答えてみる。うまく行かなかったことを取り上げがちだが、うまく行ったことも振り返ってみることを意識する
【2】1on1や定期面談などで、上司と/部下と一緒に9つの質問に答えてみる。その際は「対話」(第7回参照)を意識する
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リクルートマネジメントソリューションズ 児玉 結
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRDサービス開発部主任研究員。広告業界などを経て2008年に同社に入り、以来一貫して企業向け研修など人材育成サービスの企画に従事。新入社員~管理職まで、幅広い領域の企業研修の企画を担当。マネジメントやリーダーシップ、学習や成長といったテーマでの調査・研究も行っている。