さまざまな要因に苦しむ、マネージャーの実態調査
上司から指示、後輩の育成、どちらも請け負う中間管理職的立ち位置の「マネージャー」。世代間ギャップやコロナ禍、物価高騰などあらゆる情報をキャッチアップして仕事を進めなくてはいけません。
人と組織の変革を支援するコンサルティング会社ジェイフィールは、そんなマネージャーにフォーカスし、現役マネージャーの実態を調査しました。この調査から会社側がマネージャーに対して、どんなことが苦しんでいるかを把握し、サポートできる具体的な対策とは何かについて探っていきます。
まずはじめに、12名にオンラインによる聞き取り定性調査をおこなったところ、マネージャーはプレーヤーとして業務を兼任しながら仕事を進めているため、「部下の育成、メンタルケア」へは全体の業務時間の15%ほどしか割けていないことが判明。また、多くのマネジャーは仕事のテクニカルなマネジメントより人のマネジメントに課題感を持っており、約4割のマネジャーはマネジメントの苦労を共有できる「場」が必要だと感じているようです。
その後、ジェイフィールでは、300名以上にアンケート形式による定量調査をおこないました。
【インターネットによる定量調査概要】
調査形式:インターネット調査
調査地域:全国
調査対象者(1~4 and 条件):
1. 従業員数300人以上の民間企業の従業員
2. 正社員
3. 入社3年以上
4-1. 営業職、情報システム職、研究開発職のいずれかの54歳以下の課長職
4-2. 人事/労務職(年齢不問、役職の条件あり)
サンプル数:合計376s
現役マネージャーは「従来型マネジメントが通用しない」という悩みを抱えている
アンケートの結果、以下のようなことがわかりました。
◆MBO(目標管理)が通用しない
・環境変化が激しく年初の目標が意味を持たず、その場での現場対応が進む。
・ジョブ型で年初に掲げなかったものを、メンバーが進んでやろうとしてくれない。
・情報共有ツールが高度化した結果、情報が階層を超えて共有されるケースが増えており、大きな意思決定は部長が行うように。課長の存在感が薄れていると実感する。
◆上下の価値観の違い
・上からは厳しい成果のプレッシャー、しかしメンバーには優しくしろ、と言われて戸惑う。
・課長に必要なのは、成果とタフネスさとゴルフの腕という認識がいまだにある。
・昇進を目指すことが前提の世代と前提ではない世代、上司の指示は絶対という認識と絶対ではない認識などの価値観の違いがあり、マネジメントの難しさが高まっている。
・自らは、上を目指す最後の世代という認識が強い。しかし、若い世代がマネジャーを志してくれるかは疑問が残る。マネジャー人材に懸念がある。
◆マネジメントの変化
・これまでの常識:会社の価値観を浸透させること。
・上司は出世をさせることが幸せという考え、メンバーは別のことに幸せを感じていると思う。
・これから(今)の常識:個々の価値観を受け入れること。
・課長がメンバーに1対1を申し入れても、素直に受けてもらえない。
このほか質問事項もありましたが、それぞれが人のマネジメントに課題を持ち、その重要さを認識しているようでした。
マネジメントに会社側はどのような対策が必要でしょうか。
マネージャー同士で情報を共有する場、マネージャーを支援する場も必要
マネジメントには正解がないため、日々マネジャー自身がマネジメントをアップデートし続ける「場」をつくってあげることが企業側の支援として必要かもしれません。
具体的な対策として…
1. マネジャー同士の対話の場を設け、悩みを共有できるようにする。
2. マネジメントの理論をインプットして実践し、経験から学ぶという経験学習の場をセットする。
3. 仲間同士の経験から学ぶ場を設け、ピアラーニング(マネージャー同士が協力しながら学び合う)を促進させる。
これらは多くのマネジャーが求めていることでもあるので、高い効果を発揮するはず。若手社員がマネジャーたちのイキイキと働く姿を見て、またその人たちから適切な関わりをしてもらえること。そうすることで、マネジャーを希望する次世代マネジャー人材の増加につながっていくでしょう。
誰もが楽しく、幸せに仕事ができるのは難しいかもしれないけれど、努力はできるはず。会社側の支援が、よりよい仕事環境へアップデートされることを願っています。
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