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離婚しないで「別居」する意味
離婚せず「別居」をするメリットには、どんなものがあるのでしょうか。
◆お互いが冷静になれる
顔を合わせると喧嘩や言い合いになってしまう、イライラしてしまうといったことが日常的に起きるのであれば、選択肢の一つとして一度離れてみるというのはとても有効です。物理的な距離を置くことで冷静になれますし、お互いの存在の大切さを再確認できます。
◆精神的ストレスが緩和される
一緒にいてイライラするといったように、一緒にいることでストレスを感じる場合は精神衛生上よくありません。ストレスを感じたままだと、些細なことでも腹が立ったり相手の一挙手一投足に反応したりして心が疲れてしまいます。一度離れてみて、そうしたストレスを無くした状態で夫婦仲を見つめるのが良いかもしれません。
別居と離婚どちらが楽? 別居婚のメリット・デメリット
◆別居婚のメリット
お互いに干渉しないで済む
一緒に住んでいると、何かと干渉したくなってしまいますし、干渉されざるを得ません。一緒に生活をしない別居婚は、お互いに干渉せず自由に過ごすことができて、プライベートも大切にできます。
新鮮さがある
一緒に暮らしているといつのまにか馴れ合いの関係になってしまい新鮮味を失います。それは仕方のないことですが、それが夫婦仲を悪くし、離婚原因となってしまった夫婦もいます。
別居婚は、普段は別々で暮らし、会いたい時に会うという恋人同士のようなスタイル。毎日嫌でも顔をあわせないといけないわけではないので、いつも新鮮な気持ちで会うことができます。
◆別居婚のデメリット
精神的なメリットがある一方で、別居婚は物理的なデメリットが考えられます。
生活費がかかる
一緒に住んでいれば家賃や光熱費、食費などが一緒になりますが、別々に暮らしていればそうしたものは全て別。単純に考えると、生活費は二倍になってしまいます。
気持ちが離れてしまう
気をつけたいのは、別居婚により気持ちが離れてしまうこと。別居していることで、一緒にいないことに慣れてしまい、夫婦でいる意味を見失ってしまう恐れがあります。
別居したい。別居婚するために準備しておくこと
離婚を選択する前にひとまず別居をしたい場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
◆必要な手続き
別居婚をする場合、まず必要なことは住所の問題。これまで住んでいた場所に郵便が届いてしまうため不便なことが多くなります。郵便局に転送届を出して郵便物を居住地に届くようにしましょう。
離婚を前提とするのなら住民票を移しておいてもいいかもしれませんが、一時的な別居で様子を見るのであればまずは郵便物の転送をして様子を見ましょう。
◆住民票など知られたくないときは?
配偶者からのDVなどで別居をしたい場合、転居先を知られて困る場合もあります。
住民票まで移す場合、基本的に夫が調べようとすれば調べられてしまうのが現実ですが、配偶者からの暴力やストーカー行為、児童虐待がある場合には、住民票の閲覧制限をかける(DV等支援措置)ことができます。警察や配偶者暴力支援センターに相談し、支援措置の申出書などを提出します。
◆子連れの場合は?
子どもと一緒に別居の場合、学校をどうするか、という問題があります。配偶者からの危険が及ばない状態であれば、学区内に転居をして今まで通りの学校に通わせることがベストですが、仕事などの都合で難しい場合もありますし、実家に身を寄せる場合はこれまで通りの学校に通うことができません。
また、住民票が移っていないと編入できない学校も多いので、転校させる場合は注意が必要です。
別居してからの離婚するまで期間は?
◆別居から離婚までの期間
事情によって様々ですが、一般的に3〜5年、長い場合は別居をはじめてから10年かかるといったケースもあるようです。
しかしこれは、別居を離婚理由にする場合のもの。別居を離婚理由にするためには一定期間別居した事実が必要になるので、離婚までに長い時間かがかるようですね。もちろん、その間夫婦で話し合って離婚届を提出に至る場合はこれほどの時間はかかりません。
◆別居からの離婚率
厚生労働省の調査によると、「同居をやめたときから届出までの期間(別居期間)別にみた離婚」では、全体の82.5%が1年未満に離婚。
離婚の種類別にみても、協議離婚が80%以上、裁判離婚でも60%以上となり、離婚まで5〜10年とかかるケースは稀だと言えそうです。
◆話が進まない場合は?
離婚したい意思があるけれど、相手が受け入れてくれない。そんな場合は、弁護士を依頼したり、家庭裁判所に離婚調停を申し立てたりして離婚を進めることができます。当人同士で話し合うと私情がからんで話が進まないものですが、お互いに弁護士を入れて第三者を通して話すことでスムーズに進むこともあります。
別居するときの生活費はどうする?
先ほども触れた、別居時の生活費の問題。どのようにして決めればいいのでしょうか。
◆別居するときの生活費の相場
別居時の生活費は法律用語で「婚姻費用」と呼ばれます。夫婦である以上、別居していても収入が多い方に生活費を請求することができます。
令和元年の司法統計を見てみると、月15万以下が1784件、続いて6万以下が1651件、8万以下が1462件、10万以下が1248件となりました。それ以下の金額、もしくはそれ以上の金額は1000件以下と少なく、6万〜15万の間が相場だといえそうです。
◆専業主婦の生活費の相場
婚姻費用の金額は夫婦で話し合って決めることができますが、夫婦それぞれの年収や子供の人数・年齢をもとに「婚姻費用算定表」を用いて算出することもできます。
専業主婦の場合、働いていないので年収は0だと考えられますが、心身ともに健康で幼い子供(3歳くらいまで)の育児がない場合は“働く能力がある”とみなされ、婚姻費用の金額が変わってくる場合もあります。
別居中にしてはいけないこと
別居中に気をつけたいのは、配偶者以外の人との恋愛です。離婚を前提に別居していたとしても、法律上は婚姻関係にある夫婦なので、配偶者以外と恋愛、具体的には肉体関係を伴う恋愛は不貞行為になり、不倫していることになります。場合によっては慰謝料を請求されることもあります。
最後に
別居婚は精神的なメリットがある一方で、生活費の負担が増えることや別々に暮らすことで気持ちが離れてしまうなどデメリットもあります。
どの選択が正しいのかは夫婦次第。話し合いが持てるのであれば十分話し合い、お互いが納得できる形を取りたいですね。
【参考】
2019年司法統計 第26表 婚姻関係事件のうち認容・調停生活費支払の取り決め有りの件数|裁判所
配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。|総務省
ライター/コラムニスト コマツマヨ
WEBサイトライティングをメインに、インタビュー、コラムニスト、WEBディレクション、都内広報誌編集、文章セミナー講師など幅広く活動。