目次Contents
「内縁」という言葉、皆さんはどのようなイメージを持っていますか? かつては何か事情があって婚姻関係をとらない男女のことを指す言葉でした。しかし近年では、婚姻届を出して夫婦になる法律婚をあえて選ばず、「内縁関係」や「事実婚」を選ぶカップルも増えてきています。今回は、「内縁」の意味や事実婚・同棲との違い、メリット・デメリットなどを解説しましょう。
「内縁」とは?
「内縁」とは、「婚姻の届け出はないが、社会生活を送る上で夫婦同様の生活をしている関係」のこと。このような関係の夫婦を「内縁の妻」「内縁の夫」と呼びます。籍は入れないけれど、お互いが婚姻しているという意思を持っていることが特徴の一つです。
法律上の婚姻ではなく、「内縁」を選ぶ理由としては、「結婚して姓を変えたくない」「お互いが自立した関係性でありたい」「結婚をして同じ戸籍にする意義が見出せない」などの考えがあるようです。
「事実婚」や「同棲」との違いとは?
パートナーと一緒に暮らしている人にとっては、「事実婚」や「同棲」とどこが違うのか疑問に思うかもしれません。それぞれの意味や違いをみていきましょう。
「事実婚」との違いとは?
「内縁」とよく似た夫婦のかたちに「事実婚」があります。「事実婚」とは、「届け出を欠くため法律上有効ではないが、事実上の婚姻関係があり、社会の慣習上婚姻と認められるもの」とされています。
「婚姻届を出していないこと」「事実上の夫婦関係にあること」「お互いに婚姻の意思があること」。以上の点においては「内縁」と同じとされているようです。「内縁」と「事実婚」のニュアンス的な違いとしては、自分たちの意志・判断に基づいて婚姻届を出さないのが「事実婚」、そうでない場合が「内縁」だといえます。
かつて、「内縁」という言葉が多く使われていた第二次世界大戦以前には、社会情勢や身分の違いから、想いを寄せ合っていても正式に婚姻関係を結ぶことができない男女がいました。このような事情のある夫婦のことを「内縁」といったのです。現在ではそのような意味合いは薄らぎ、「事実婚」とほぼ同じような意味として使用されています。
近年では、「自分の姓で生活したい」「社会的に自立した存在でありたい」など、より自分たち夫婦の理想の形を積極的に選び取ろうとしている場合に、「事実婚」という言葉を選ぶことが多いようです。
「同棲」との違いとは?
続いて、「同棲」の意味も確認しておきましょう。「同棲」とは、「一緒に住むこと。特に、正式に結婚しないまま同じ家で一緒に暮らすこと」です。
「同棲生活」という言葉があるように、「同棲」は共に暮らしを営むことに重きを置いた言葉です。お互いに結婚の意思がなく、単に恋人と一緒に暮らしているという認識であれば「同棲」と言うことができるでしょう。
「内縁」とは何年以上のこと?
一緒にパートナーと暮らしている人にとっては、何年以上を「内縁」と呼ぶのだろう? と気になるかもしれませんね。結論から言うと、法律上は「○年同居していたから内縁関係になる」という明確な基準はありません。ただし、書類の手続きや裁判などで、「内縁」関係が認められるために、必要な同居期間の目安は3年程度と考えられています。
裁判などでは同居期間が長い方が、「内縁」関係と認められる可能性は高くなるでしょう。しかしその他の事情も考慮されるため、一概に年数のみで「内縁」かどうかを判断することは難しいようです。
「内縁」関係の定義とは?
法律上、「内縁」関係に関する定義はありません。しかし、一般的に以下のような条件が「内縁」関係として判断されることが多いようです。
・婚姻の届け出は出していないが、双方が婚姻の意思を持っていること。
・ある程度、長期間同居して共同生活を送っていること。
・家計を同一にしている。
・双方の親族から夫婦同然に扱われていること。
・友人や職場の人間に配偶者として紹介するなどしていること。
・父親が子どもを認知している。
「内縁」を選択するメリット
法律上の結婚をせず、「内縁」関係を選ぶ理由は人それぞれです。ここでは、「内縁」関係を選択することで得られるメリットを紹介します。
1:夫婦別姓が可能になる
パートナーがいても、姓は自分のものを使いたいと考えている方もいるのではないでしょうか。日本では、外国籍の異性と結婚しない限り、法律上の夫婦別姓は認められていません。法律上婚姻する場合は、男女のどちらかが一方の姓を選択し、変更する必要がありますが、変更するのはほとんどが女性です。そのため、姓を変更したくない人にとっては、「内縁」を選ぶことで、姓を変更しなくて済むというメリットがあります。
2:離婚しても戸籍上は履歴が残らない
離婚歴のある人のことを「バツイチ」と呼んだりしますね。これはかつて、法律上離婚をすると、戸籍にバツ印がついて記録が残ることがあったからなのだとか。現在は、戸籍が電子化されたためバツ印はつきませんが、離婚したことによって除籍したことが記されます。
一方で、「内縁」関係は、戸籍上夫婦として記録されないため、たとえ「内縁」関係を解消し、離婚をしても戸籍上の記録に残ることはありません。
3:親族付き合いに縛られにくい
法律上婚姻関係を結んだ場合、親族付き合いや家柄の違いなど何かとしがらみが多くなることも考えられます。しかし、「内縁」は、法律上婚姻関係を結んでいるわけではないため、親族間の付き合いから一歩距離を取れることも、精神的な負担が軽くなる点でメリットと言えるかもしれません。
「内縁」を選択するデメリット
近年「内縁」関係は、事実婚として社会的に知られるようになってきました。しかし、法律上の結婚に比べると様々なデメリットもあるようです。主な注意点をみていきましょう。
1:法定相続人にはならない
配偶者の相続人になれるのは、法律婚をしている配偶者、子ども、兄弟姉妹など。「内縁」関係は、法律上婚姻関係にないことから、相続権が認められていません。そのため、万が一パートナーが亡くなってしまった場合、遺産を相続するためには遺言状などが必要となります。法律上の婚姻関係よりも、各種手続きが複雑になる傾向があるようです。
2:配偶者控除などが受けられない
「内縁」は、税法上配偶者として認められていません。そのため、法律婚をしている人が受けている、配偶者控除や配偶者特別控除など、税金面での優遇を受けられません。また、配偶者の遺産などを相続・贈与した場合に受けられる相続税や贈与税の控除も受けることができないようです。
3:子どもは父親と姓が異なる
「内縁」関係にある夫婦の子どもは非嫡出子となるため、法律上は父子関係が生じません。基本的には、母親の戸籍に入り、母親の姓を名乗るものとされています。そのため、父親とは別の姓を名乗ることとなります。また、父親が認知をしなければ、子どもは扶養を求める権利を持たず、法的相続人になれません。
最後に
「内縁」や「事実婚」が増えている背景には、女性の社会進出や経済的自立が影響していると考えられています。あえて法律上の婚姻関係を結ばないことで、得られるメリットもありますが、法律上の婚姻関係を結んでいる場合より、法的保護を享受できないことも事実です。それぞれのメリット・デメリットについて話し合い、お互いが納得する夫婦のかたちを作っていけたらいいですね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com