ライフイベントの変化・キャリアは焦らず長期視野で
「もう一段ステップアップしたいけど、何が効果的？」「仕事は楽しいけどいずれ子供も。ベストタイミングはいつ？」「キャリアプランをたてろと言われるけど、この先のことは想像もできない」。
仕事の手ごたえも感じ、プライベートも充実しているからこそ、さまざまな悩みが生まれてきますね。ここでは、そんな皆さんの「仕事」や「キャリア」の悩みに、リクルートマネジメントソリューションズの人事メンバーがアドバイスしたいと思います。
◆「職場復帰したけれど育児と仕事に追われる毎日。焦っています」
【ご相談】
第一子を出産して1年、職場に復帰したばかりです。育児も楽しみながら仕事もがんばるワーキングマザーになろうと思って戻りましたが、両立の現実にくじけそうです。早朝から育児・仕事・家事と時間に追われ、夜は疲れて寝かしつけのまま寝落ち。そんな自分にがっかりしながら朝を迎える日々です。仕事は好きだしキャリアアップしていきたいと考えていましたが、妊娠前のような成果もだせない現状に焦りを感じています。
【アドバイス】
お子さんは1歳とのこと。手がかかる時期ですよね。仕事を再開し、時間に追われる状況はよく分かります。お子さんもあなた自身も、新たな環境に適応しようと頑張っていらっしゃる最中かと思います。まずは『よく頑張っている！ えらい！！』と自分自身を褒めてあげてください。
妊娠前と比較して成果がだせていないと感じていらっしゃるようですね。妊娠前と今の“1日の時間配分”を比べてみましょう。妊娠前は、仕事が終わらないときには遅くまで残業して間に合わせ、翌日はゆっくり起きて仕事を始める、といったこともできたかもしれません。
今はいかがでしょう。朝早く起きて、ごはんの支度、子供の食事・保育園への登園をすませ、ようやく仕事へ。お迎えの時間に間に合うように仕事を急いで終わらせ、保育園から帰宅して子供を寝かしつけるまでの数時間に、夕食の用意・夕食を食べさせ、お風呂、ようやく寝かしつけ。子供が寝たあとも、片付けや洗濯等、翌日の登園準備。目が回るようです。
妊娠前と今とでは、仕事にかけられる時間が想像以上に短くなっていることが実感できますね。仕事の進め方が同じだとすると、かける時間の量が異なるのですから、妊娠前に出せていた成果と同じレベルの成果がだせないのは、ある意味で当然のことかもしれません。
かける時間の長さではなく、アウトプットの質にこだわって仕事をしましょう。あなたの1時間当たりの集中度は、妊娠前と比較してずいぶん高まっているはずです。なぜならば、決まった時間内に仕事を終えなければならないのですから、スケジューリング・仕事の組立・関係者との調整・PCスキルなど、仕事を効率的に進めるための意識も力も以前よりも高くなっているのではないでしょうか。
ワーキングマザーの生産性（単位時間あたりのアウトプット）は一般社員と比較して高い、と一般的に言われています。時間が限られているからこそ、効率化する力をフル稼働させ、そのうえで取り組む仕事の本質をしっかり見定め、質の高いアウトプットへとつなげましょう。
子育てにも、いずれ終わりがやってくる
復職したばかりの時期は、新しい生活に慣れるだけで精一杯であっという間に1日が過ぎていきます。目の前の子どもと仕事で頭の中はいっぱいだと思います。
ここで少し、視点を変えてワークをしてみましょう。
こちらは、育児休職からの復職者向けに弊社が行っているガイダンスで利用しているキャリアシートです。シート1行目はあなたが仕事と育児を進める際の関係者の欄です。「私」「パートナー」「子供」、育児にご両親の支援も得ている場合は「父」「母」、第二子を予定している場合は「第二子」といれましょう。左の列の西暦に合わせて、それぞれの年齢を入れます。お子さんが6歳になる年の下段に「小1」と記載、同じように「中1」「高1」と記載します。
「1年前に生まれたばかりの我が子が、5年後には小学校に入るのか、その時、私は○歳になっているのか！」と、子供は大きくなっていくものなのだということを実感するはず。
子供も今はまだ何もできませんが、3〜4歳になると食事もトイレも自分でできるようになります。お手伝いもしてくれるようになるかもしれません。小学校に入学する頃には、学校の用意も登下校も一人でできるようになります。晩御飯の時には、学校で教わったことや友達と遊んだことを、目を輝かせながら話してくれることでしょう。
いかがですか？ こうやって表にして眺めてみると、育児に手がかかる期間は思っているよりも短いということが実感できますね。育児に追われる日々は緩やかに終わっていきます。“ほんの少し先”にそんな時間がやってきます。
その時、あなたは何をしていたいですか？
自分の人生を描く
10年先というと遠い未来の話のように思いますが、こうやって書いてみるとあっという間にやってきそうです。その時、あなたは何をしていたいでしょうか？ 子供たちからどのようなお母さんだと思われていたいですか？
◆第一線で活躍する管理職？
会社から独立して、プロフェッショナルとして活躍していたいですか？
子供はパートナーに任せて、大学院で学びなおすのも楽しそうですね。海外の大学も楽しそうです。
仕事から離れて、家族や自分の趣味の時間を楽しんでいたいでしょうか？
どれも魅力的ですね。
どんな自分になっていたいか、ありたい姿をイメージしたら、先ほどのキャリアシートの右側10年後の欄に言葉にして書いてみましょう。会社に提出する申請書ではないので、あなたの心の声に耳を傾け、素直な気持ちで書きましょう。夢物語と笑われないかなんて心配も不要です。
ありたい自分を言葉にしたら、10年後の“ありたい”自分に向けて準備をしましょう。“10年後”は、急にはやってきません。なりたい自分に向けて準備する時間はたっぷりあります。
管理職を目指すのであれば、任用試験の日程を調べるところから始めましょう。試験を受けるタイミングまでに少し大きな仕事をやり遂げておきたいですよね。独立も、大学院進学や留学で学びなおしを考えている場合も同じですね、大学院や留学できる時期を仮において、受験準備開始までを逆算しておいてみましょう。仕事から離れようと思う場合は、逆にいつまで働くかを決め、それまでの間にどんな仕事を経験しておきたいかを書きましょう。
10年後の自分に向けて、ステップを刻みながら1つずつ準備を進めてみませんか？
自分では気づかなかったかもしれませんが、出産前よりもあなたの仕事の能力はアップしているはずです。時間の長さではなくアウトプットの質にこだわって仕事をしていきましょう。また、時間に追われている現状は、子供の成長に伴い、少しずつ軽減し、いずれ解消されます。目線を少し先に移し、10年後のありたい姿と、そのために必要なことを言葉にしておいてみましょう。あとは、第一歩を踏み出すだけです。
加えて、未来への最初の一歩は、パートナーと話すことをお勧めします。
パートナーと一緒に、あなたの将来の夢やありたい家庭の状態を話してみませんか。パートナーの夢も改めて聞いてみましょう。お互いが相手の夢の実現に協力できることもきっと見つかるでしょう。
パートナーと二人でワインでものみながら10年後の家族について語らう時間は、きっと、楽しいひとときになることと思います。
ありたい未来へ、ありたい私にむけて、ありたい私たちにむけて、どうぞ良いスタートをきってください。
TOP画像／(c)Shutterstock.com
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初山智美
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 経営企画部人事グループ。自動車メーカーに新卒入社後、リクルートへ転職、2021年に同社へ。一貫して人事を担当し、人事制度・労務管理などの経験を経て、現在は人事企画・人材育成に従事している。プライベートでは6歳と4歳の姉妹を子育て中。
