夏至の食べ物とは?

毎年6月にやってくる夏至(げし)には、その日に食べることが習慣となっている食べ物があります。地域により食べ物の種類は異なりますが、冬瓜(とうがん)を食べるのが一般的です。冬瓜は水分が多くさっぱりとした夏野菜で、スープや煮物などに使われます。
ここでは、そもそも夏至とは何かを説明し、夏至の食べ物である冬瓜についてもご紹介します。
そもそも夏至とは何?
夏至とは、立春や春分など季節の指標になる「二十四節気(にじゅうしせっき)」のひとつです。二十四節気とは季節を表す言葉のこと。1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらに季節ごとに6等分にしています。夏を6つに分け、4番目に来るのが夏至です。
夏至は「夏に至る」という表記通り、これから夏に向かうことを示します。毎年6月21日〜7月7日ごろで、正確な日にちはその年により異なります。
2025年は6月21日
2025年の夏至は6月21日(土)から7月6日(日)までの16日間です。カレンダーでは初日が夏至と記載されており、一般的にも初日の21日が夏至と考えてよいでしょう。
夏至は、太陽が地球上で最も北に位置する日です。北半球では太陽の南中高度が最も高くなり、太陽のパワーが最も強くなる日でもあります。また、1年のうちで昼の時間が最も長い日となります。
一般的な食べ物は冬瓜
二十四節気ではその季節ごとに旬の食べ物を食べる習慣がありますが、夏至に食べるのは一般的に冬瓜です。
冬瓜は漢字の「冬」が含まれるため冬の野菜と思われがちですが、実は夏が旬の野菜。冷暗所で保存すれば冬までもつことから、冬瓜と名付けられたとされています。
カリウムやビタミンCを多く含み、疲労回復や夏バテ防止に効果的であることが夏至の食べ物とされる理由です。また、水分が多いため、「暑い時期に水分補給として食べる」という点でも夏至の食べ物としてふさわしいといえるでしょう。
地域ごとに異なる夏至の食べ物

夏至の食べ物は地域によってさまざまで、冬瓜以外のものを食べる地域もたくさんあります。関西地方はタコを食べる習慣がありますが、関西でも京都や奈良で食べられているのは別の食べ物です。
関東地方では焼き餅、愛知県の一部ではイチジクの田楽など、バラエティに富んでいます。
各地域で食べられている夏至の食べ物について、詳しく見ていきましょう。
関西地方はタコ
関西地方では、夏至にタコを食べる習慣があります。夏至の時期は田植えが終わって稲が成長する時期であり、「タコの8本足のように稲が深く根を張るよう祈る」というのがタコを食べる由来とされているのだとか。
夏至の時期のタコは旬を迎えて栄養価が高く、夏バテにいいとされるタウリンも豊富に含まれています。この時期はスーパーなどでも売り場が広げられ、タコを求める人々で賑わいます。
京都・奈良は和菓子、餅
同じ関西でも、京都では夏至に水無月(みなづき)という和菓子を食べるのが習慣。水無月とは、ういろうに小豆をのせて固めた三角形の和菓子で、京都では6月の半ばごろから、多くの和菓子屋の店頭に並びます。
奈良では半夏生餅(はんげしょうもち)という和菓子を食べるのが習慣です。小麦ともち米を半量ずつ混ぜてついた餅で、小麦餅または、さなぶり餅とも呼ばれています。食べるときはきな粉をまぶしていただきます。
半夏生とは夏至から数えて11日目ごろのことで、奈良盆地ではこの時期に小麦の収穫が終わって田植えが一段落するため、半夏生餅をつくってひと休みするのが習慣です。また、田植えが無事に終わったことを神様に感謝し、半夏生餅を捧げて豊作を祈るという古くからの風習もあります。
現代では農家でないところでも、夏至の時期になると郷土食として半夏生餅を食べるのが一般的のようです。この時期は奈良の和菓子店でも、半夏生餅を購入することができます。
関東地方は新小麦の焼き餅
関東地方で食べられている夏至の食べ物は、新小麦で作った焼き餅です。同量の小麦ともち米を混ぜ合わせてついたお餅で、奈良の半夏生餅と似ています。
奈良の半夏生餅と同じで、古くから田植えの豊作を祈ってつくられていたことが、焼き餅を食べる由来。小麦を餅に混ぜるのは、小麦の二毛作をしている農家が多かったからです。
焼き餅は奈良の半夏生餅とお餅の素材は同じであるものの、半夏生餅がついた餅に直接きな粉をまぶすのに対し、焼き餅はついた餅を焼いて食べるという点が異なります。
愛知県の一部ではイチジク田楽
愛知県の尾張地方など一部の地域では、夏至にイチジク田楽を食べています。半分に切ったイチジクに、田楽味噌をかけた食べ物です。
イチジクは、かつて不老長寿の果物と呼ばれていたほど栄養が豊富。田楽は、平安時代中期に成立した豊作を祈願する踊りを起源としています。それらのことから、イチジク田楽は健康と豊作への願いを込め、夏至に食べられるようになったのだそうです。
福井県は焼き鯖
福井県の奥越地域では、夏至に焼き鯖を食べる習慣があります。正確には、夏至から数えて11日目に食べる「半夏生鯖」です。江戸時代に当時の大野藩主が農民が暑い夏を乗り切るために鯖を食べることを奨励した、あるいは丸焼きにして配ったことが始まりとされています。
当時は鯖の水揚げが非常に多く、漁村が年貢としても納めていたのだそう。
鯖は良質のタンパク源で夏バテ防止にも効くとされ、現代でも夏至の時期になると食べられています。福井県大野市内の鮮魚店では、鯖を焼く香ばしい煙が一日中漂っているというほどです。
世界では夏至をどう過ごす?

夏至の行事は世界各地でイベントが行われます。まず、日本では、三重県伊勢市の二見興玉神社で行われる夏至祭が有名です。
毎年、夏至の日の出前から始まる行事で、太陽のエネルギーが最も高いとされる夏至の日に、夫婦岩の間から昇る朝日を浴びながら禊(みそぎ)が行われます。夫婦岩の付近は古くから、伊勢神宮を参拝する前に人々が心身を清める禊浜(みそぎのはま)と呼ばれてきた場所です。
また、夏至のころは多くの神社で、茅や藁を束ねた茅の輪をくぐる大祓(おおはらい)が行われます。年末のほかに行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」と呼ばれるもので、心身の穢れを清めることが目的です。
海外では、ヨーロッパの各地で夏至のお祭りが行われます。特に北欧は日照時間が短いため、昼間の時間が最も長い夏至は特別な日です。
フィンランドやスウェーデンでは、夏至のお祭りはクリスマスと並ぶ行事とされ、スウェーデンではキリスト教が伝わる以前から祝っています。各地で盛大なイベントが開催され、賑やかな宴が夜遅くまで繰り広げられるのです。
夏至の食べ物で夏を乗り切ろう

夏至の食べ物として一般的に冬瓜が食べられているほか、各地で古くから食べられている郷土食があります。関西地方ではタコ、福井では焼き鯖などで、どれも夏の時期にふさわしい栄養豊かな食べ物です。
奈良や京都では和菓子を食べる習慣があり、地域の夏の風物詩ともいえます。夏至を迎える時期は栄養豊かな旬の食べ物で、ここから始まる暑い夏を乗り切りましょう。
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Oggi編集部
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