病院へ行くべきか? コロナ禍の不妊治療【30代からの不妊治療】
妊活を始めて3年。現在34歳の私の体験から、妊娠を考えているカップルにとって少しでも役に立つような情報をレポート形式でお届けします。
前回は、体外受精の費用のお話をお届けしました。今回は、突然世界を襲った新型コロナの影響で不妊治療を継続するか迷った時のお話。
あのウイルスが大流行し始めた2020年2月末
皆さんは昨年の2月どのように過ごされていましたか?
不妊カウンセリングを受けて、ホルモン剤のゴナール注射を打つ決意が固まった私は、「生理が来たら3日目に病院へいく!」と“D(デイ)3”と書かれた予約表を見ながら、「早く生理来ないかな~」といつもよりナチュラルハイな毎日を過ごしていました。
そんな2020年の2月末、そう新型コロナがやって来たんです。
不要不急の不妊治療については延期を…
私の中で、さぁ、いよいよ、体外受精! と覚悟が決まったときに、突如登場したのが「不要不急の外出は控えましょう」という政府からの自粛要請のお達しでした。
お店から不織布のマスクが消え、デマによってなぜかトイレットペーパーや生理用品、おむつ類までもが転売ヤーによって買い漁られる事態に。こんなオイルショック再来みたいな時代がくるなんて、全く予想してなかったですよね。
近所のドラッグストアには早朝から長い行列ができているものの、私たち現役世代はその列に並ぶ余裕すらなく…。テレビなどのメディアでは連日増えていく感染者数とともにヨーロッパやアメリカの悲惨な医療崩壊の様子が伝えられていました。
夫「今、わざわざ病院にいくことないんじゃない?」
私「できるだけ若いうちに卵子をとっておきたいけれど…。確かに治療法や特効薬がない謎のウイルスだしね。怖い気もする…。もう少し様子を見て、落ち着いたらにしようか」
あの時、注射を怖がって、体外受精を先延ばしにしてしまったことを深く後悔しました。この生理3日目をスキップしたら、ホルモン剤を打つのが、また一ヶ月先になってしまう。でもその頃には新型コロナは消えているといいな。そんな淡い期待があっさり裏切られることになったのは、皆さんもご存知のとおりです。
3月に入ると、新型コロナは急速な拡大を広げ、今が収束できるかどうかの瀬戸際とし、専門家会議の意見を踏まえた政府は、世論の後押しもありついに緊急事態宣言に踏みきることを発表。
そして3月31日付で日本産科婦人科学会(日本産婦人科感染症学会)、4月1日付で日本生殖医学会から、不妊治療は延期の選択を… といった内容の声明の発表があり、メディアで“不妊治療は不要不急”といった見出しの報道が相次ぎました。
私は、“不要不急”っていう言葉にこれほど傷ついたことはありません。
あれほど悩んで、やっとステップアップを決めたのに、少しでも若いうちに採卵をしたいと決意したのに、私にとっては必要火急な心境であったにも関わらず、社会から「必要ないから、急ぐなよ」と言われているみたい…。
クリニックによっては、来院を控えるように積極的に患者サイドへメールなどを配信していたところもあったようで、SNSなどでフォローしていた不妊戦士仲間たちからの悲痛なポストが…。
それを読みながら、少しでも「ひとりじゃないんだ、がんばろう」と自分を奮い立たせ、家での筋トレや食事療法を夫と二人で取り組む日々が続きました。
ステイホームのGW… もうこれ以上は待てない…
2020年のGW、私が住んでいる東京都は「ステイホーム週間」と位置付けられたこともあり、私たちは旅行にも外食にもでかけず、家で静かに過ごしていました。
でも新型コロナの感染が広がりつつある中でも、3密を回避すればリスクはだいぶ軽減できるなど、少しずつわかってきたこともあって、落ち着きを取り戻しつつもありました。
連休明けからは土日休みを利用して、近所の公園など屋外を散歩するようになった私たち。家から出て、外の空気を吸い込んで、澄み渡った初夏の青い空を見上げると、気分も晴れやかになっていくよう。
そんな折、近くの神社を散歩していたときのことです。
ふとスマホで撮った写真に緑色の光の帯のようなものが写り込んだのです。これ、ただ太陽光が逆光になってレンズ内で反射しただけのものなのですが、なんか神様が舞い降りてきたかのような不思議な気分になりました。私はその写真を夫と見つめながら…。
私「次、生理きたら病院へ行かない?」
夫「そうだな。僕たちのタイミングは今だよね。すぐ病院に電話してみるよ」
私「うん、ありがとう」
新型コロナには、いろんな考え方があると思うのですが、私たちが通っていた総合病院のリプロは、「患者さんが1周期1周期、とても大事にしていることを知っています。治療の延期あるいは継続の判断はそれぞれの患者さんのお気持ちや事情によって異なると思いますが、病院はいつも通り開いていますから、いつでも来てください」と言ってくださったので、通院を再開することに決めました。
このようなわけで、紆余曲折の末、緊急事態宣言明けから不妊治療を再開することにした私たち。次回はいよいよ採卵周期に突入したお話をしたいと思います。
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クロサワキコ
34歳・主婦ライター。妊活歴3年目。男性不妊の治療や人工授精に体外受精、ステップアップを重ねていくなかで感じた不妊治療のリアルな本音を発信しています。