会話の後悔や悩みをなくしたいあなたへ
「つい、言い過ぎてしまった」「もっと違う言い方をすればよかった」「思っていることがうまく伝わらない」こんな会話の後悔や、悩みを抱えているかたにおすすめです。
今回は、津田秀樹先生(心理研究科)と西村鋭介先生(精神科医)による『会話の9割は「言いかえ力」でうまくいく』(アスコム)から言いかえ力について学んでいきましょう。
傷つける言葉のトゲや毒を抜く「言いかえ力」
あなたの「言いかえ力」チェックをしてみましょう。以下のような「損する言葉」を使っていませんか?
1. どうして、いつも遅刻するの?
2. 会社は仲良しクラブじゃないんだよ
3. AはBとは比べ物にならないほど、おいしいね
4. どうせやる気がないんでしょ
5. これで、ミスするの何回目?
一つでも当てはまっていれば、「言いかえ力」不足かもしれません。
■言いかえ力1:「いつも」「全然」「ちっとも」など極端語を使わない
×:どうして、いつも遅刻するの?
○:どうして、遅刻するの?
相手が2、3回くらい同じミスをしたとき、「いつも同じミスばかりして!」と叱ったりすることがありますよね。この「いつも」が≪極端語≫。「2、3回」を「いつも」というように極端に表現してしまっているわけです。
「伝えたい」という思いが≪極端語≫を増やしていき、怒りや不満を表すトゲとなります。このトゲは相手に逆効果であり、≪極端語≫で叱られると、その極端語にたいして「そんなことないのに」と反論・反発を覚えるのです。
ですので、いちばん簡単な言いかえはこの≪極端語≫を抜くこと。「いつも」「全然」「ちっとも」などの言葉を使わないように心がけてみるといいですね。
■言いかえ力2:悪意の比喩は傷を深くする
×:会社は仲良しクラブじゃないんだよ
○:仕事とプライべートは分けようね
比喩は負の感情も強めてしまうもの。比喩を使うと、表現が強く鮮やかになります。ただ、それだけに、相手に文句を言うような場合に比喩を使うと、相手の感情を逆なですることに。
たとえば、「給料泥棒」といわれた相手が、反省し「そう言われないように働こう」などと思いますか? まずいないですよね。
ですので、負の感情が残るような比喩は使用しない方が賢明です。
■言いかえ力3:AをほめるためにBを否定しない
×:AはBとは比べ物にならないほど、おいしいね
○:Aはおいしいね
ほめるためのけなしは不要なトゲとなることも。ですので、Aを持ち上げるためにBやCと比較しないこと。
ほめたい気持ちが強いあまりに、それを持ち上げるだけでなく「ほかのものはダメ」とほかを下げてしまうと、それがトゲとなって人を刺してしまうのです。
下げられたものを好きな人たちもいるからです。あくまで目的は○○をほめることにあるはずです。
■言いかえ力4:断定語で決めつけない
×:どうせやる気がないんでしょ
○:やる気はあるんだよね
「本当はこう思っているんだろう」は相手を傷つける言い方。
人は、口先では「すみません」と謝っていても、腹のなかでは「ガミガミうるさいな!」などと全然反省してないこともあります。表現や態度などから、それがなんとなくわかるときもあります。そうすると、つい、「おまえ、全然反省してないだろ!」と言いたくなります。でも、相手は当然「よくわかりましたね」とは答えません。「そんなことないですよ」と否定します。「いいや、反省してない。俺にはわかる」と言ってみても、あとは水掛け論です。このような会話はただ無益なだけでなく、相手を傷つけてしまうこともあります。
■言いかえ力5:質問形式で責めない
×:これで、ミスするの何回目?
○:これで、3回目のミスだから繰り返さないように気をつけて
質問形式の攻撃は相手を追い詰めるそうです。答えようのない質問はコミュニケーションが成立しなくなってしまいます。怒るな、叱るなというわけではありません。質問形式にすれば、たしかに相手を傷つける力は増しますが、そのぶん、傷つけ返したい気持ちが相手の心に芽生えてしまいます。決まった答えを無理矢理言わせることも、できるだけやめておきましょう。
* * *
気づかされる言葉が、多数ありました。まずは、トゲや毒に気をつけてみようと思います。
本書では以下の内容も取り上げています。
・傷つく言葉のトゲや毒から心を守る「言いかえ力」
・人に好かれる人がやっている、言葉の蜜を足す「言いかえ力」
・「言いかえ」効果が倍増する話し方、半減する話し方
・大切な人との関係を深めるための「言いかえ力」が書かれています。
上手なコミュニケーション力を備えてこそ、デキる大人。一読をお勧めします。
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津田秀樹
心理研究家。筑波大学卒。「anan」(マガジンハウス)や「non-no」(集英社)などの雑誌の心理テスト作成、携帯公式心理サイトの主宰、心理学的映画紹介、心理マンガ(原作)、就職適性検査の対策本の執筆、ニンテンドーDSのソフトのディレクションなど多方面で活躍。著書に『迷いがなくなる心理学人生のサンタク」(PHP研究所)、「ジーパンをはく中年は幸せになれない」(アスキー新書)など。
西村鋭介
精神科医。精神保健指定医、精神科専門医。東京大学中退、国立大学医学部卒業。現在は理論的心理学と、科学としての精神医学を統合させ、悩みに潜む心理学的背景を解析するとともに、それを病院での臨床の場に実際に応用。「心理学」と「精神医学」の二方向からのアプローチで、人の悩みの真の解決を目指し、日々活動中。携帯公式心理サイトで、「ココロコラム」と「お悩み相談」のコーナーを長年担当。