働く女性たちに知ってほしい、女性の自立と経済の話
各家庭のお金とその家族と向き合って15年になる筆者ですが、女性が内に秘める思いと寄り添う15年でもありました。連載最終回の今回は、筆者と同世代の読者にお伝えしたい「女性とお金」についてお話します。
収入格差で、女性がガマンをしていた時代
筆者のようなファイナンシャル・プランナーという職業の場合、お金と身体、親族関係など、ディープなひと様の家庭の事情を一通りお伺いする必要があります。夫婦間、親子間などで「本音」が見え隠れする場面に同席させていただくこともしばしば。
そして今でこそ、多くの女性が職を持ち、自らの権限で何かを決定する行為が日常のいたるところにありますが、筆者が15年前金融業界に入った頃、そのような光景は今と比べてごくわずかでした。
「主人に聞いてみます」「私はそうしたいのだけど、夫がダメだと言うので…」
もしかすると断りの常套句として使われていたのかもしれませんが、その確率が低いと思う根拠は、同じ提案をしても、独身の女性はほとんど断らない、という比較対象があったからです。
相談する相手が家庭に存在すること自体、決して悪いわけではありません。しかし女性が、いわゆる「バリキャリで働く家庭」と、(年収を抑えて)「配偶者の扶養の範囲で働く家庭」とでは、多くの場合発言権に差があったように感じます。
筆者はシングルマザーで、とにかく働く毎日でした。営業でしたから身なりを整えて、ある程度専門知識も持ちながら対応をする私を見てなのか、女性からよく「カッコイイですよね、私もそんな風に働けたらなぁ…」という、呟きに似た声を聞いてきました。
同じ女性、同じ子育て世代という親近感からでしょう、時には涙しながら話してくださる方もいる中で、思うのは「働きたい女性にとって、子育てがなぜこんなにも女性(だけ)の重荷になっているのだろう」という事でした。
2020年、世界で大きく順位を下げたGGI指数
女性の地位格差を測る指数がいくつかありますが、その中でGGI(グローバルジェンダーギャップ指数)を取り上げてみると、日本は昨年の110位(149ヶ国中)から121位(153ヶ国中)に順位を大きく下げています(引用:世界男女格差指数レポート2020)。2020年末現在。
肌感覚では15年前と比べると随分、会社での立場、性的ハラスメントに対する理解、育児や家事に対する平等思考が当たり前になったと思えるのですが、それでも政治への参加や企業の役員に占める女性の割合など、数字で見えるところが世界各国と比べて大きく遅れているのだと、現実を突きつけられます。
女性が経済圏への参加をすることで、国力が上がるのは皆さんお分かりでしょう。男女格差が完全に解消された場合、日本においてはGDPが10%押し上げられる試算があります(出典:ゴールドマンサックス・ウーマノミクス5.0)。
前章の話の続きですが、育児負担のウェイトがまだまだ女性に偏っている今、それらが女性のキャリア形成の妨げになれば、少子化の歯止めと女性の経済参加の両輪を、推し進める事はできません。
「男女共同参画局」が設立されるほど、国を挙げて様々な施策が行われていますが、私たち女性自身がまず、このロジックを理解することで、堂々とパートナーへ説得し、理解を求める事ができるかもしれません。
お金は自由をもたらしてくれる
「自分の欲しいものを、誰の許可も取らずに買いたい」
「知見や知識の幅を、思う存分広げたい」
「キャリアアップで自分の力を試してみたい」
「自分の判断で、経済的余力を社会貢献に使いたい」
読者のみなさんがそう思うのであれば、結婚をしても(離婚をしても)、出産をしても(しなくても)、どんな時だってそう思い続けてください。そしてそのための行動として、経済的ポジションから離れてはいけません。
キャリアの形成は、積み重ねであると同時に、継続も大きな力になります。一時的なポジションの変更があるのは良いのですが、完全に離れてしまうのは、避けるべきでしょう。
資本社会において、就労でお金を得る行為は社会から必要とされている対価とみなすことができます。投資行為でお金を得るのもいいでしょう。リスクを採った対価として得られるリターンは、行動しなかった人には得られません。
そのすべては、自らの意志で、自由に行うものです。その為に筆者は、女性の経済的地位向上の基礎となる金融リテラシーの向上に、今後も携わっていきたいと考えます。
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佐々木FP事務所 代表 佐々木愛子
ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅰ種。国内外の保険会社で8年以上営業、証券IFAを経験後、リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。FPとして10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。
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