【過多月経】経血量が多いとどうなる? 子宮内黄体ホルモン放出システムとは?
前回、一般的な生理の知識から子宮内膜症について解説しました。
前回記事▶︎生理痛がひどい… 原因は? 病院は行くべき? 子宮内膜症の可能性も〈生理の知識〉
生理の回数が多くなっている現代では、生理に関するトラブルが増加しています。今回は、月経(生理)の経血量について解説していこうと思います。
過多月経とは?
経血量が異常に多いものを“過多月経”と呼びます。一般に正常範囲の経血量は20~140gとされています。しかしながらナプキンやタンポンなどを生理中に使用すると正確な経血量を客観的に把握することは困難。また経血量をほかの人と比べることも難しいので、自分の経血量が多いかどうか迷われている方もおられると思います。
目安になるのが、ナプキンのもつ時間です。2時間もたなければ過多月経と考えてもよいでしょう。昼間でも夜用ナプキンが必要な場合も過多月経の疑いがあり、また健康診断で貧血を指摘されていれば、過多月経の疑いがあります。
過多月経には「器質性過多月経」と「機能性過多月経」の2つに分かれます。
◆器質性過多月経
子宮になんらかの病気が隠れているものを「器質性過多月経」といいます。子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症などが原因となり、過多月経を起こしている場合を指します。Oggi世代ではこのような疾患が増加するために婦人科受診をして内診、エコーで診断を受けましょう。
このような疾患があると子宮内膜の表面積が拡大することにより経血量が増加すると考えられています。このような場合には妊娠能力の低下も考えられますので、妊娠希望があれば手術をして原因となる疾患の除去が必要です。
◆機能性過多月経
子宮になんらかの病気が隠れていないものを「機能性過多月経」といいます。血液が固まりにくくなっている病気など内科的な疾患の見落としに留意すべきであると思われますが、治療法は経血量の減少を目的に薬物投与が行われます。
トラネキサム酸という止血剤を使用することや、低用量ピル内服が有効なこともあります。また子宮内黄体ホルモン放出システムを装着することにより経血量を減少させることができます。
今回はこの子宮内黄体ホルモンについて理解を深めましょう。
子宮内黄体ホルモン放出システムとは?
「子宮内黄体ホルモン放出システム」。聞きなれない言葉ですが、この子宮内黄体ホルモン放出システムとは子宮内に装着する器具のことです。
大きさは約32mmでT字の形をしておりやわらかいプラスチックでできています。この器具に付加されている黄体ホルモンが子宮内膜に直接作用することで以前から5年間という長期間の避妊目的として使用されてきました。
黄体ホルモンとは、卵巣から分泌されるホルモンの一種です。放出される黄体ホルモンは、子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、内膜は薄い状態となり、経血量を減少させるとともに月経痛を軽くします。
日本では2014年から「過多月経」「月経困難症」に対して保険適用が開始となっています。現在では世界約130ヶ国で、延べ約3,900万人の女性が使用しており、過多月経の治療薬として国内外のガイドラインで勧められています。
過多月経治療で低用量ピルを服用することがありますが、低用量ピルと比べた時のメリットとデメリットを説明しましょう。
◆メリット
低用量ピルは飲み忘れないように毎日決まった時間に内服することが必要です。飲み忘れがあるとしっかりした効果は期待できません。
しかし子宮内黄体ホルモン放出システムは一度装着すると、5年間その効果が持続しており毎日薬を飲む必要がありません。つまり飲み忘れの心配がないということです。
また保険診療で約13000円(初再診料別)が装着時に必要ですが、これで5年間その効果が持続すると費用対効果に優れているといえるでしょう。喫煙や前兆を伴う片頭痛持ちなど低用量ピル内服を避けなければならないあなたでも装着可能ですし、ピルと同等の避妊効果があります。
◆デメリット
少量の不正出血が持続することがあります。低用量ピルの内服開始時にも不正出血が持続することがありますが、ほとんどは1、2ヶ月以内に消失します。子宮内黄体ホルモン放出システム装着後数ヶ月に渡って不正出血が持続することがよくあります。
また低用量ピルは排卵痛、PMS(月経前症候群)を改善させますが、子宮内黄体ホルモン放出システムには排卵を抑制する効果がないためにこれらの問題は解決できません。
分娩経験のない貴女には挿入時に痛みが強く出ることがあるのもデメリットです。自然に脱落することがあるがあるために定期的な内診、エコーが必要です。
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知らない人もまだまだ多い「子宮内黄体ホルモン放出システム」について、今回は話を掘り下げてみました。経血量が多くて心配な貴女は一度婦人科受診してみましょう。そして自分に一番合った管理方法を提示してもらいましょう。その選択肢の一つとして子宮内黄体ホルモン放出システムがあるかもしれません。
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直レディースクリニック 院長 竹村直也
2000年神戸大学医学部卒業
2008年神戸大学医学部大学院修了
兵庫県立こども病院、日高医療センター勤務の後神戸大学病院産科婦人科助教。
淀川キリスト教病院産科婦人科部長、
竹村婦人科クリニック勤務後、2020年5月直レディースクリニック開業
資格:医学博士 産婦人科専門医 母体保護法指定医