【月経困難症】生理とどうつきあう?
年々増してくる生理痛は、もしかして子宮内膜症かも
女性のからだは、男性のからだと異なり、妊娠、出産に備えるために特有の「サイクル」で変化します。このサイクルを「生理(月経)周期」といい、この時期に赤ちゃんができなかった場合、不要なものを出血とともに体外に排出します。これが「生理(月経)」です。
周期はやや個人差がありますが、25-38日周期。精神的なストレスで1週間ぐらいずれることもあります。
昔と違う月経回数
現代の女性が一生に経験する生理の回数は、昔にくらべ確実に増えています。
食の欧米化が進み、栄養状態が昔に比べ格段に良くなっている現代では、初経年齢が低下傾向にあり、閉経する年齢が遅くなっています。
また女性の社会進出が盛んになっている現代では、晩婚化に伴い出産回数が著しく低下。妊娠中、授乳中は生理がないため、妊娠回数が減少すればするほど生理の回数が多くなることは明白です。
一人ひとり異なる生理痛
生理痛が全くない、という人もあれば日常生活に支障を来たすほどの生理痛を経験している人もいます。ひと言で生理痛といっても、痛みの程度や痛む場所など千差万別。
多くの女性の悩みでもある生理痛ですが、その痛みの程度は本人にしかわかりません。「生理痛はあって当たり前」、「なんとか気合で乗り切る」「いつものことだから」などと、がまんをしていませんか? 生理痛は子宮内膜症をはじめとする何らかの病気が隠れている場合があります。
生理痛と上手に付き合っていくためには、自分のからだの状態をしっかり把握して正しく理解し、対処することが大切なのです。
生理痛の原因物質「プロスタグランジン」
生理直前から、子宮の中でプロスタグランジンという物質が急に増えます。この物質は子宮を収縮させ生理の経血(子宮内膜)を身体の外に排出する役割を果たします。
この量が多すぎると収縮が強くなりキリキリとした痛みが発生します。血管を収縮させる作用もあるので、腰痛やだるさ、冷えがひどくなります。
さらに胃腸の動きにも影響を与え、吐き気や下痢の原因にもなります。実は陣痛のときの痛みもこのプロスタグランジンが原因。陣痛が弱い場合には、陣痛を起こすためにプロスタグランジンを成分として含む薬剤を使用することもあります。
月経困難症とは?
生理中に子宮に痛みが生じる状態のことを月経困難症といいます。月経困難症とは「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」の2つに分かれます。
子宮や卵巣になんらかの病気が隠れていないものを「機能性月経困難症」といい、子宮口が狭かったり生理に対する不安感などから痛みがより増強することがあります。
一般的に思春期から20代前半に多いです。治療法は痛みの軽減となり、薬物療法に加え、軽い運動や腰を温めたりして血流を良くすることで痛みが和らぐ場合もあります。低用量ピル内服が必要なこともあります。
一方で、子宮や卵巣になんらかの病気が隠れているものを「器質性月経困難症」といいます。子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮腺筋症などが原因となり、生理痛を起こしている場合を指します。
Oggi世代の20代後半から多くなり、症状は生理初日~3日目ごろを過ぎても続き、病状が進行すると生理期間以外にも痛みが生じることもあります。この原因の中でも子宮内膜症は放置していると不妊症の原因にもなり注意が必要です。
今回は子宮内膜症について、もう少し理解を深めましょう。
子宮内膜症とは?
◆病態
子宮内膜症は生理のある女性の5%~10%が子宮内膜症を患わっていると考えられています。
子宮内膜症とは本来子宮の内側の壁を覆っている子宮内膜組織が、それ以外の場所で増殖し、生理のたびにその場所で出血を繰り返す病気です。
生理のある限り出血を繰り返すため閉経まで病態は進行します。子宮内膜症のよくできる場所は子宮表面、卵巣、卵管などです。卵巣で子宮内膜症の出血を繰り返した場合「チョコレートのう腫」という病態になります。宇多田ヒカルさんもこの病態のために手術を受けたことがあります。チョコレートのう腫は0.7%前後で卵巣がんが発生すると報告されており注意が必要なのです。
子宮内膜症の病態が進行すると、おなかの中の臓器が癒着をおこします。例えば、卵管で子宮内膜症の病態が進行するとこの癒着のために卵管が狭くなったり、閉鎖したりしますので不妊症の原因になります。
実際に不妊症の患者さんでは子宮内膜症の頻度は15~25%にのぼると言われています。
◆診断
子宮内膜症の正確な診断は、実際におなかの中を腹腔鏡などの手術器具を用いて観察することです。
ただし生理痛のある女性全員に手術を行うことは非現実的です。このため生理時の症状や内診、エコー検査、採血などを用いて臨床的に子宮内膜症との診断がなされます。
◆治療
低用量ピルなどの薬物療法や手術など、患者さんの年齢、病状や社会的背景を考慮して治療方法が選択されます。
生理痛の原因をよく知りましょう
多くの女性の悩みでもある生理痛ですが、その痛みの程度は本人にしかわかりません。その生理痛の原因が子宮内膜症かもしれません。子宮内膜症を放置していてもよくなることはありません。
一度お近くの産婦人科を受診してみてはいかがでしょうか? QOL(生活の質)を向上させ貴女らしく輝く人生を送れるよう最適な診断、治療を受けることを産婦人科医としておすすめします。
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直レディースクリニック 院長 竹村直也
2000年神戸大学医学部卒業
2008年神戸大学医学部大学院修了
兵庫県立こども病院、日高医療センター勤務の後神戸大学病院産科婦人科助教。
淀川キリスト教病院産科婦人科部長、
竹村婦人科クリニック勤務後、2020年5月直レディースクリニック開業
資格:医学博士 産婦人科専門医 母体保護法指定医