弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART8
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第8回目は、メディア関係の受付で勤務する、丸山早恵美さん(仮名・27歳・年収350万円)
第7回記事▶︎「不倫してないのに付きまとってくる上司とその妻への対策!」
第6回記事▶︎「仕事が落ち目の彼氏… どう接するのが正解?」
第5回記事▶︎「付き合った彼氏が既婚者… どうしたらいい?」
第4回記事▶︎「彼に貸したお金… 回収するにはどうしたらいい?」
第3回記事▶︎「優しい彼のギャンブル癖、止めさせることは可能?」
第2回記事▶︎「結婚秒読みの彼に女装癖が発覚。受け入れたいけど…」
第1回記事▶︎「小説家志望のDV彼氏。アザができるほど殴られ… でも別れられない」
◆年収一億の夫、ある日突然モラハラ化…! どうすればいい?
大学を卒業してすぐ、つきあっていた同い年の彼と結婚しました。彼は見た目はパッとしないし、少々コミュニケーションが苦手な性格ですが優しい人で、一緒にいると居心地がよかったんです。
彼は就職活動がうまくいかなかったので、大学を卒業した後アプリ開発の会社を起業。すぐに結婚したのは、そんな彼を支えてあげたいからというのもありました。彼の仕事がうまくいかないときは、私も金銭的にサポートしたりして、貧乏で地味ながらもそれなりに楽しくやっていました。
事態が変わったのは、去年彼が開発したアプリが大ヒットしてから。会社が急に大きくなり、私たちの生活レベルも上がりました。いいマンションに引っ越したのですが、それと同時に彼の人格が変わってきてしまったのです。
「オレは経営者なんだから、妻としてちゃんとした料理を作れ」と言われ、私も働いているので料理の時間が取れなくて買ってきた総菜を出すと「手抜きをするな」と激怒したり、掃除についてもトイレが少しでも汚れていると「俺をバカにしているのか」と怒鳴ったり…。
結婚してから知ったのですが、彼は子どもの頃に母親に捨てられた経験があるようで、「自分以外誰も信じられない」と口にすることも多くなりました。私の仕事についても、「チャラチャラした仕事をしてるから俺をバカにするんだ」と文句を言ってきます。
そんな中、私の妊娠が発覚しました。喜んでくれると思って報告したら、彼の一言目は「本当に俺の子どもなのか」でした…。内気だけど優しかった彼はもういないのかと思って、本当につらかったです。
そんな言動が日に日にエスカレートしてきて、家で話しかけてもふて腐れていて返事をしてくれません。子どもも生まれるので今の生活を失いたくないのですが、変わってしまった彼とうまくやっていくには、どうしたらいいでしょうか?
◆堀井先生のアンサー!
ひとことで言うと、早恵美さんの夫は、愛情に飢えているのだと思います。母親に捨てられたという過去も影響しているでしょうし、さらに会社が急激に大きくなったことによる経営者としての責任感、誰にも本音を言えなくなる孤独感、会社を維持し続けることへのプレッシャー、そういった環境の変化に彼自身の心がついていけなくなっているのでしょう。
その結果、一番そばにいて信頼しているあなたに感情をぶつけるようになったのです。あなたに甘えているとも言えます。これは経営者の人たちにとても多い相談で、環境が変わったことへの戸惑いは会社を大きくした経営者とその家族の人たちにつきものだと言えるでしょう。
とはいえ、夫が変わってしまったというのはとてもつらいと思います。対処法としては、まず、彼の言うことをいちいち真に受けて実行しようとしないことです。おそらく、早恵美さんの夫はこの相談に書かれていることよりももっと多くの要求をしてきていると思います。
でも、それはあなたにそうしてほしくて言っているのではなくて、その時のもやもやをその時思いつく形で口にしているだけなのです。それに反応して料理を真面目に作ったり、トイレをピカピカにしたりしても、彼の心が晴れることはありませんし、あなたも疲弊していくばかりです。
次に、彼が理不尽なことを言ったら、きちんと反論するようにしましょう。相談を読むと、早恵美さんは変わってしまった夫が怖くて、でも自分や生まれてくる子どもの生活を考えると、お金を持っている夫に逆らえなくて、すっかりおびえてしまっているのではありませんか?
早恵美さんのそんな気持ちを彼も察していて、自分を受け入れてもらえないと思って、ますます不安になっているのだと思います。彼は本心であなたを疑っているわけではありません。「誰も信じられない」と口にするのも、あなただけは信じたい、信じさせてほしいと思っているからです。
「料理を手抜きするな」と言われたら、「共働きで時間がないんだからどうしてもこうなっちゃうよ」と言いましょう。「本当に俺の子どもか」と言われたら、「あなたの子どもに決まってるでしょ」と言いましょう。
おびえて言うことを聞くのではなく、対等な1人の人間として接することで、彼も自分が受け入れられているんだ、あなたを信じていいんだと安心できるようになるでしょう。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士・堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら