弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART7
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第7回目は、証券会社に勤務する佐藤香枝さん(仮名・33歳・年収450万円)
第6回記事▶︎「仕事が落ち目の彼に、どう対応すればいい?」
第5回記事▶︎「付き合った彼氏が既婚者… どうしたらいい?」
第4回記事▶︎「彼に貸したお金… 回収するにはどうしたらいい?」
第3回記事▶︎「優しい彼のギャンブル癖、止めさせることは可能?」
第2回記事▶︎「結婚秒読みの彼に女装癖が発覚。受け入れたいけど…」
第1回記事▶︎「小説家志望のDV彼氏。アザができるほど殴られ… でも別れられない」
◆不倫していないのに、つきまとってくる上司とその妻への対策方法
新卒の頃からお世話になっていて、とてもかわいがってくれる10歳年上の上司がいます。上司はいつもほめてくれるのですが、時には、みんなの前で「佐藤はかわいいな」「佐藤を愛している!」などと、つきあっていると思われそうな言葉でほめてくるんです。
先日、私は大きなプロジェクトに抜擢され、その上司もチームに加わりました。そのプロジェクトの出張があったのですが、二人きりになった時に、上司から「きみのことがずっと好きだった」と告白されました。でも、私はその上司のことを男性として見られません。生理的に無理なので、恋愛対象ではないのです。
想いを伝えられてからはLINEで口説いてくるのですが、上司なので冷たくすることもできず、「お気持ちはうれしいです」程度の返事をしていました。
仕事の反省会と言われて、何度か食事に行ったこともあります。そこでも、つきあって欲しいと口説かれましたが、不倫はできないと伝えて、お断りしました。
そんなことを繰り返していると、ある日、尾行されていることに気づきました。
地味な中年女性で、全く心当たりがない人です。それと同じ時期に、上司に「妻が君と不倫していると思って怒っている」と言われました。
どうやら奥さんがLINEのやり取りを見て、私と上司の関係を疑い、探偵を雇ったようです。私のことを尾行していたのは奥さんか、探偵の雇った人間なのかもしれません。
私は言い寄られただけで何もしていないので困っているのですが、探偵を雇うほど疑われているとなると、説明しても信じてもらえる自信がありません。どうしたらいいでしょうか?
◆堀井先生のアンサー!
男女の関係も恋愛関係もない、全く事実無根な疑いであっても、不倫を疑われてしまったとなると対応には注意が必要です。というのも、こういった誤解のまま裁判になったケースが実際にあるからです。
多くの場合は実際に夫婦仲が悪くなっていて、離婚の証拠を集めているときに奥さんが「夫が冷たくなったのはこの女性のせいだ」と思い込むのが発端です。もちろん不当な裁判なので勝つことはできますが、不毛な紛争に時間とエネルギーをかけると、とても消耗してしまいます。
私が知っている事例を紹介しましょう。弁護士から不倫の慰謝料請求の通知がきたという相談で、もちろん実際に交際したことはありませんでした。証拠は夫が書いた、「自分は◯◯さんと肉体関係を持ちました」という書面です。
夫に話を聞いてみると、嫉妬にかられた妻に騒がれて、面倒だからその場を収めるために一筆書いてしまったものだということでした。そういう男性は少なくありませんし、場合によっては「君からも妻に一言謝ってくれないか」などと言ってくることもあります。
このようなトラブルに巻き込まれることを防ぐために、まずは上司に対して「夫婦の問題は夫婦の間で解決してください」とはっきり言っておきましょう。そして明確に距離を置くようにします。私的に連絡を取ったりしない、食事会や飲み会もその上司がいる場合は参加しないなど、誤解を招くような行為は徹底的に避けることです。
奥さんが誤解した原因の一つには、香枝さんのLINEの思わせぶりな返事もあるのですから、上司であってもあいまいな返答はやめて、LINEでの連絡もしないように気を付けましょう。
もう一つの手段として、会社に相談して守ってもらうことが考えられます。上司部下の関係を利用して交際を迫ることはセクハラになります。会社のしかるべき窓口を通して、ハラスメントの相談をしておきましょう。場合によっては部署異動などの手段を取ってもらうこともできます。
そうしておけば、上司の妻が会社にクレームを入れたときに、「事実無根です」と対応してもらえるかもしれません。「自分は言い寄られただけ」と思いがちですが、放っておくと奥さんの行動がエスカレートする可能性があるので、自分から距離を置くように、積極的に行動しましょう。
そういう姿勢を貫けば、いずれ奥さんの対応も変わるはずです。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士・堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら