知っておきたい性感染症「クラミジア」について徹底解説!
性感染症については以前にこちらの記事でご紹介させていただきました。
性的な接触によってうつる感染症を性感染症といい、なかには、不妊の原因となるものや胎児にうつしてしまう可能性があるもの、現在の治療法では完全に治すことはできないものもあります。
さらに多くの性感染症には自覚症状がなく、「パートナーのからだに異変が出るまで気づかなかった…」という声や「妊活を始めて数ヶ月たって検査すると、性感染症になっていた…」という声も耳にします。
今回は性感染症の中でも日本人が最も多く感染している「クラミジア感染症」をテーマに、自覚症状や対処法・リスクなどについてみていきましょう。
◆クラミジア感染症って?
「クラミジア感染症」とは、一般的にクラミジア・トラコマティスという細菌による感染症のことを指します。
クラミジア感染症は、性活動が盛んな若者に多く発症します。なかでも女性の患者さんは男性の2倍以上いるとされています。
男性の場合も、女性の場合も、クラミジアは不妊や早期流産の原因となります。女性の場合、感染したまま放っておくことで、子宮頸管炎から卵管炎へと波及し、卵管内の幅が狭くなる「卵管狭窄」を生じる可能性があります。
男性の場合、感染したまま放っておくことで、クラミジアが尿道の奥に入り込んで「前立腺炎」を引き起こしてしまいます。さらに、前立腺炎を放置してしまうと、前立腺の奥にある睾丸(精巣)へ菌が移動し、睾丸の周りにある副睾丸(精巣上体)が病原菌を捕らえることで「副睾丸炎(精巣上体炎)」が起こる場合もあります。
2つ存在する睾丸がどちらも副睾丸炎になった場合には不妊のリスクも高まります。
◆感染経路は?
性感染症は一般的に、性交渉によって感染するとされていますが、クラミジアを含む性感染症にかかった方の中には、「全く身に覚えがない」という方もいらっしゃいます。
「性交渉」のなかには口腔性交(オーラルセックス)や肛門性交(アナルセックス)も含まれており、コンドームを付けているから絶対に大丈夫ということはありません。
また、ごくまれに銭湯での入浴やスポーツクラブなど不特定多数の人が使うタオルが感染の原因となる場合もあります。
◆クラミジアの症状
ここからはクラミジアの症状を男女別に見ていきましょう。
【女性】
女性がクラミジアに感染した場合、自覚症状はほとんどないとされています。
軽い下腹部の痛みなどがある場合もありますが、PMS(生理前症候群)などの症状との区別はつけ難いことから、ほとんどの女性はご自身がクラミジアに感染していることを気づかないままにしていることがあります。
【男性】
男性の場合、クラミジアを発症されたかたのうち約半数の方に自覚症状が発生するとされています。
症状としては「排尿時の軽い痛み」「尿道から膿のようなものが出たり、かゆくなったりする」などがあげられます。
◆からだの異変を感じたら病院へ
男性も女性も、前述のような症状や、からだの異変を感じた場合には病院にいかれることをおすすめします。
男性の場合は泌尿器科にて尿検査を、女性の場合は婦人科にて内診を行います。
検査結果は約2週間後にわかりますが、クラミジアと診断された場合、多くはアジスロマイシンなどの「抗菌薬(抗生物質)」を用いて治療していきます。内服後3週間を目途に再検査を受け、陰性と診断された場合には治癒と判定されます。
ここで気を付けておきたいのが、パートナーの治療について。どちらかがクラミジアに感染していた場合、パートナーにも感染している可能性が高いため、検査・治療のタイミングを合わせることが大切です。
治療のタイミングがバラバラなまま、通常通り性交を行ってしまうと、クラミジアをうつしたり、うつされたりを繰り返す「ピンポン感染」の状態となってしまう場合があります。
そのため、クラミジアの治療中には性交渉を避けることもおすすめしています。「自分は大丈夫だ」と思っていても知らないうちにかかっているかもしれないクラミジア感染症。
妊活中の方は不妊へのリスクを考え、一度検査を受けてみてもいいかもしれません。
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医師 杉山力一
杉山産婦人科院長。不妊治療の名医。日本における生み分け法の権威・杉山四郎医師の孫。
東京医科大学産科婦人科医局では不妊治療・体外受精を専門に研究。その後、1999年より杉山産婦人科勤務。
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