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株主優待とは? 気になるそのカラクリ
株主優待の基本
「株」や「投資」というワードを見ると難しそう、ちょっと怖そうと構えてしまいがちですが、「株主優待」というワードはおトク感があって、ほんの少しワクワク感もあります。ネットの普及や金利の低下などによって、株式投資をはじめる人が増えていますが、その入口として注目を集めているのが「株式優待」。利回りなどの難しい株のお話はさておき、初心者でもすぐできる株主優待生活のノウハウをお届けします。
「株主優待」とは、株式を発行している企業が、自分の会社の株を保有してくれている株主に対して行う「お礼」「プレゼント」のようなものです。企業によって、優待を受けるためのルールが異なりますが、株を持っていることで得られる配当金とは別に、サービスとして企業が用意しているもので、明治時代に始まった、日本特有のものです。
優待の内容は保有している株数や期間によって変わることもありますが、年に1~2回程度、実施されています。会社のオリジナル商品や企業の地元の特産品、自社のサービスや商品を利用するときに優遇される利用券や、買い物優待券やポイント優遇、商品券、クオカード、ギフトカードなどの金券とさまざま。
また、オリジナルコスメや限定品、人気レストランのお食事券やエステサロンの無料チケットなど、女性をターゲットにした内容もたくさん用意されています。
最近では、より多くの個人投資家に株主になってほしいという考えから、個人投資家に人気の高い「株主優待」を取り入れる企業がどんどん増えています。「株主優待」は単なる「お礼」「プレゼント」というだけでなく、企業にとっては株主に長く自社の株を保有してもらうための〝おもてなし〟でもあり、同時に自社の商品やサービスをアピールできる、絶好のチャンスでもあるのです。現在は上場企業の約4割近くが株主優待を用意し、その内容もバラエティに富んだものになっています。
ここで優待生活を始めるまえに、株の基本的な知識と注意点を。
株主優待をもらうには、まずその企業の株を買うことから始まりますが、株主優待をもらうために必要な株数を知ることです。1株だけで株主優待を受けられる企業もあれば、1000株からしか株主優待を受けられない企業もあります。また株の保有期間に応じて優待内容を変えている銘柄もありますので、企業のホームページなどであらかじめ確認しておきましょう。
権利確定日とは
株を買えば株主優待が自動的にもらえる訳ではありません。必ず確認しておくべきことは“株を購入するタイミング”と“購入する株数”です。
株式優待をもらうためには「決まった日に決まった数量以上の株を保有」していることが必要です。その「決まった日」のことを「権利確定日」と言います。「権利確定日」までに株主になっていることが優待を受ける条件となっています。
株主として株主名簿に記載されるためには、権利確定日当日ではなく、権利確定日の2営業日前(土・日は含まない)までに株を買って持っておかなければいけません(2019年7月16日から株の取引ルールが改正)。
この権利確定日の2営業日前を「権利付き最終日」、権利付き最終日の翌営業日を「権利落ち日」と呼びます。たとえば29日が権利付き最終日の場合、この日に株を保有していれば、権利確定日に株主として株主名簿に記載され、優待や配当などの権利を得ることができるのです。
極端にいえば、翌日の30日に権利落ち日に株を売却しても、31日の権利確定日には株主として記載されているので優待を受けられるわけです。
飲料や食品、食事券、金券、チケット、生活雑貨からオリジナルグッズなど、株主優待を提供する企業は1000社以上もあるとされています。魅力的な優待があれば、ついついその銘柄を買いたくなるものですが、そこには思わぬ落とし穴も…。
注意すべきは株の継続保有期間です。企業によっては株主優待を取得するために、権利確定日の「半年前」や「1年前」から株の継続保有期間を定めているものがあります。その継続保有期間に株を持っていなかった場合は、権利付き最終日の1日だけ株を買っても優待は受け取れません。
優待にばかり目が行ってしまい、慌てて株を購入したものの、後から継続保有期間が定められているのに気が付いて株主優待を受けられなかった…というミスが少なくありません。継続保有期間の確認は忘れないようにしましょう。
また、権利付き最終日直前には、株主優待を狙って株を買う人が増えるため、各企業とも株価が上昇する傾向にあります。
一方、この権利付き最終日の翌日(権利落ち日)以降になると、株を手放す人が増え、株価が下がることが多いようです。株式優待の内容だけで銘柄を選んでしまい、権利付き最終日の直前に慌てて購入した場合、株価の下落により株式をずっと売ることができないという事態になることもありますので、購入のタイミングには注意が必要です。
12月に権利確定日を迎える企業はとても多いので、「株主優待」を目的として駆け込み買いをする方も多くなりますが、その前に株主優待のある企業をチェックしておけば、良いタイミングで効率的に買うことができそうです。
株主優待で生活するための資金はいくら必要?
実際に株式投資を始めるのに、どのぐらいの金額が必要なのでしょうか? 株の配当金で生活するといった大げさなものではないのが、株主優待。お小遣いプラスαの投資で、どのぐらいの優待生活が可能になるのでしょう?
まず株を購入するために必要な金額は、購入する銘柄の株価によって異なります。高いものだと数十万、数百万円も必要になりますが、1万円以内で購入できる銘柄も。
銘柄の選び方は、日常的によく利用している商品やサービスを提供している企業を選ぶといいでしょう。そうした企業の優待は有効活用できるものが多く、せっかくもらっても利用しなかったということはありません。
たとえばベビー服の企業ならば優待券で子ども服を買うことができるし、ドリンクや食品メーカーなら、自社製品を提供しています。最近は業種を問わずコンビニやドラッグストアなど、全国どこでも使えるクオカードを株主優待にしている企業が増えています。
複数の銘柄を購入すれば、1社の株価が下がったとしても、他の株価が上がっているなどリスクも分散できるうえ、さまざまな優待を受けることができます。5万円~10万円ほど用意すれば少額で複数の株を購入でき、複数の優待を受けることが可能です。
株主優待は、投資資金の多い株主に対して、より魅力的な優待を提供するしくみになっています。ただ、資金の多少にかかわらず、1つの銘柄に資金を集中して投資すると、値下がりリスクは大きくなりますし、銘柄は別でも同じ業種ばかりに投資していると、業界全体の相場が下落した際に、大きな損失を被ることになります。値下がりリスクを抑えるためにも、こうした分散投資がオススメです。
また優待狙いで投資する場合、優待利回りがよい銘柄を探すことが重要なポイントになります。優待利回りとは、優待の取得に必要な株数を買った金額に対して、“1年分”の優待の価値がどれくらい(%)あるかを表したものです。一般的に、この数値が高いほどお得な優待といえます。
計算方法は次のようになります。
優待利回り(%)=優待の価値(円)÷優待取得にかかった金額(円)
これ以外にいろいろな優待をもらうために複数銘柄に投資する場合、気をつけなければいけないのが1銘柄ごとの売買手数料です。手数料の負担が重く、せっかくの優待利回りを下げてしまうなんてケースもあります。
技士・桐谷さんの優待生活をのぞく
「桐谷さん」って誰? 株式投資を始めたきっかけは
「株主優待」「優待生活」を広く知らしめた立役者といえば、元プロ棋士の桐谷広人さん。
桐谷さんを一躍有名にしたのは、バラエティ番組『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)でした。リュックを背に、自転車で移動し食事も、服も、生活雑貨も、すべてを株主優待だけで過ごす桐谷さんは、いまでこそ優待生活のスペシャリストとして知られていますが、はじめから株が上手だったわけではありません。
桐谷さんが株取引を始めたのは約40年前、まだプロ棋士の頃。東京証券協和会の将棋部で指導をしたのがきっかけだったといいます。試しに商社の株を25万円分購入したら、1か月後に5万円ほど儲かりました。その後、投資を続け、いつしか新聞に『株で1億円儲けた男』として紹介されるまでに。資産が3億円を超え、プロ棋士を引退。それを機に信用取引を始めるも、サブプライムローンで一気に株が値下がりし、資産は1億3000万円まで減ってしまいました。
そしてリーマンショック。この時、残った資産は5000万円を割り込み、手元には現金がなく、株を売らなければ生活もままならない状態に。そんな桐谷さんを救ったのが株主優待だったのです。「元本割れした株を売りたくない」という思いから始まったのが株主優待生活。
「桐谷さん」の投資スタイル
メディアでは株や先物取引、仮想通貨などで100億円儲けたという人が話題になりますが、誰もがそうなれるわけではありません。桐谷さんのように株主優待を楽しく使って利回りを稼ぐには、どんな投資をすればいいのでしょうか?
桐谷さんの投資をする判断基準は、ずばり「株主優待と配当利回りが合わせて4%だったら買う」というもの。優待利回りを考えると、個人投資家は株主優待が提供される最低単位で購入し、分散投資するのが一番良いといいます。
また株を買うタイミングは、権利確定日の2〜3か月前がオススメ。権利落ち後の株価は下がりますが、そこで購入しても次の権利確定日は半年から1年先ですから、優待品がもらえるまで時間がかかります。
「桐谷さん」の優待生活
多数の優待株を持つ桐谷さんの暮らしぶりは、もちろんほぼすべて優待生活です。
優待券で映画鑑賞、食事も優待券で支払い、端数はこれまた優待でもらったグルメカードを利用してお釣りをもらう。移動には自転車を使いますから交通費はかかりません。靴も靴下も優待券でもらえます。家賃や公共料金などの支払いは株の配当金で支払っているそうです。つまりレジャー、外食、食品・飲料の3つのカテゴリーの銘柄の優待株を持っていれば、最低限生活には困らないというわけです。
最近はクオカードを優待品にする企業が多くなりましたが、例えば1000円分のクオカードなら、買い物代金の節約ができます。そうやって優待で浮いた金額を貯めて、次の銘柄の購入資金にするという地道な投資を続けることが、優待生活を賄うための一歩になるといいます。
おすすめの優待生活ブログをご紹介
1.「株主優待生活のススメ」
小額からスタートする株主優待投資で得た優待品を写真入りで紹介します。具体的な手順やおすすめ銘柄などの説明付きで初心者向け。
2.「株主優待と高配当株を買い続ける株式投資ブログ」
30代会社員。株主優待や配当金の収入を重視した長期投資。オススメ銘柄を随時更新。
3. かすみちゃんの株主優待日記
優待変更や優待新設情報がリアルタイムで更新されます。
優待品がもらえるおすすめの銘柄10選
全国保証(7164)
クオカード(¥3,000〜100株以上)
楽天(4755)
2024年2月14日、楽天モバイルのSIMカードを株主優待にすると発表したことで、大きな話題をさらった楽天。2024年は「楽天モバイルの音声+データ(30GB/月)プランを株主様全員に1年間無料にてご提供」が株主優待となります。
ちなみに過去を振り返ってみると、下記のような優待が提供されていました。その時、楽天が売り出したいガジェットやサービスを株主優待としてもPUSHしていることが見てとれます。
楽天グループで使える株主優待券(100株以上で楽天市場クーポン¥1,000)※2018年度実績
1. 楽天トラベル
以下より、1点を選択
i)2名様以上2,000円クーポン1枚
ii)1名様以上1,000円クーポン2枚
2. 楽天Koboでの対象期間中の電子書籍コンテンツ購入に対し、通常の3倍の楽天スーパーポイントを付与
3.(抽選)株主限定楽天イーグルスグッズをプレゼント
4. 楽天イーグルス公式戦観戦チケットの優待価格販売
5.(抽選)株主限定ヴィッセル神戸グッズをプレゼント
6. ヴィッセル神戸主催公式戦観戦チケットを優待価格で提供
7.(楽天証券の口座開設者限定)自社株式手数料のポイント 30%還元
ファーストコーポレーション(1430)
クオカード(¥1,000~)
串カツ田中ホールディングス(3547)
食事優待券(100株で¥2,000~900株で¥8,000)
日産自動車(7201)
新規に日産車新車を購入した場合、紹介者である株主、日産車新車を購入した購入者、それぞれに5,000円相当のカタログギフトを贈呈。
RIZAPグループ(2928)
優待品交換ポイント。
1ポイント=1円相当にて自社グループ商品と交換できる。
※ポイントは最大3年間積み立てが可能。
※積み立てには継続保有が必要となる
サムティ(3244)
自社保有ビジネス・リゾートホテル割引券・宿泊無料券
メルキュール東京羽田エアポート、センターホテル東京、エスぺリアイン日本橋箱崎、エスぺリアイン大阪本町など。
キューピー(2809)
自社グループ製品詰め合わせ。100株で最大1,500円相当、500株以上で最大5,000円相当の商品詰め合わせをもらえます
イオン(8267)
株主優待カード(持株数に応じて半年ごとに、買物金額の合計から3%〜7%返金)、自社グループ優待券
すかいらーくホールディングス(3197)
「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」などのファミリーレストランを全国展開するすかいらーくホールディングス。優待利回りと使い勝手の良さで大人気の株主優待。優待食事券(¥4,000~34,000)