「怒り」をコントロールできてこそ、群れから外れた真のソロタイムを過ごせる!
「会社で理不尽なことを言われて腹が立った!」「後輩が思うように動いてくれなくてイライラした」など、日常で怒りを覚えることって多々あります。
怒りは一見、勇ましいのですが、実は私たちが群れの中にいて、人間関係に翻弄されてしまっている証拠。他人を責めたり支配しようとするとき、私たちの感情は荒れ狂います。
僕は、今でこそ怒りをコントロールできるようになりましたが、かつてはすごく短気でした。怒ると血圧は上がるし、体はもちろん心も消耗するので、日々負担が重なることになります。実は、怒りによって相手を馬鹿にしたり否定してしまう感情って、自分に対する感情へとすり替わる危険性が潜んでいるのです。
どういうことかと言うと、大なり小なり怒りをコントロールできずに溜め込んでいると、集中力が下がります。そうすると、目の前の仕事が(そのほかのことも)できなくなる。能率が下がるわけですね。
本来もち合わせているはずの能力が発揮されません。ぜんぜん文章がまとめられないなあ(視野が狭まる)とか、覚えられないなあ(記憶力は特に低下してしまう!)とか、発想が湧いてこない(心が頑なになる)という事態に。
最後は、そんな仕事ができない自分を嫌いになってしまうのです。こうなると悪循環! そしてパフォーマンスが下がった理由を、多くの人は「怒り」のせいだとは思いません。
大なり小なり「怒り」は、その都度、払っていこう
自分の心を健康で明るい状態にしておくため大切なことは、心の中の小さな怒りに気づいたときに躊躇せず消してしまうことです。たとえ怒らせた人がいたとしても、そのことで消耗するのは自分だけ。
僕がおすすめするのは、静かに自分の状態を声に出すという方法。つまり「私は今、怒っています」と声に出して、ゆっくり3回唱えてみてください。
「… え…」と思っている、そこのあなた!「なんで声に出したくらいで怒りが消えるの?」と思っていませんか? やってみてから「なんで」を考えてみて欲しい。理由は後で考える、ということも大切です。
さて、声を出すって、みなさんが思っている以上に影響力があるもの。たとえば劇場などで、本当は笑いたい場面なのにそういう空気じゃなとします。でも、だれかひとりが笑いだすと、それが呼び水になって全員が笑うってことあるでしょう。
人間の肉声の影響力って絶大です。自分の声と言葉で自分を客観視することで、心を落ち着かせることができれば、普段でも本来の自分に簡単に戻ることができるようになります。つい感情的になって、自分を見失いそうになったら、「私は今、怒っています」とゆっくり間合いを空けて3回。
ネガティブな感情に支配されることなく、本来の自分に戻ることができたら、群れから解放された本当のソロタイムを満喫することができるでしょう。
2018年Oggi12月号「名越康文の奥の『ソロ』道」より
イラスト/浅妻健司 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
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名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など幅広く活躍中。著書に『SOLO TIME「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)ほか多数。