こんにちは、国際中医薬膳師・漢方アドバイザーの大木さと子です。仕事にもプライベートにも忙しい女性のみなさんが自分の変化に向き合うヒントや、毎日を気持ちよく過ごすためのプチ知識を、東洋医学の視点からご紹介します。
暑さでうだるような毎日、夏バテ対策の食材といえば「うなぎ」ですよね。でもなぜうなぎなのか? みなさんはご存知でしょうか。
もともとは、うなぎ屋さんのPR戦略
今年の7月25日と8月6日は、夏の土用の丑の日。夏バテにうなぎ、とはよく耳にする話ですが、そもそもはその栄養価が理由というわけではなかったんです。本来、うなぎの旬は冬。江戸時代、どうにか夏にもうなぎを売りたいということで「丑の日は“う”から始まる食べ物を食べると良い」にこじつけ、「夏の土用の丑の日にはうなぎを」という宣伝文句が作られたのだとか。
薬膳的観点で見る、うなぎの効能は
薬膳で見るうなぎの効能は、めまい・疲れ・手足のしびれ・視力や体力の回復など。確かに疲労回復や滋養には有効ですが、脂質もやや多いので胃が疲れている時にはあまり適当ではありません。現代の夏バテには、どちらかといえば「食欲増進」の作用のある食材がおすすめです!
“現代の夏バテ”って?
夏はついつい冷たい飲み物や食べ物をとりたくなりますが、猛暑の現代、実際は暑い外で過ごす時間よりエアコンのきいた屋内で過ごす時間の方が長いですよね。
胃は冷えや湿(水が停滞した状態)を嫌います。そもそも冷たいものは胃に負担をかけるのですが、体を冷やすために摂取しても、冷えた場所にいれば体温も上がらず、消化もうまく進まない…ということになります。そうして食欲もわかなくなる。これが現代の夏バテです。
現代の夏バテにおすすめの食材
江戸時代、うなぎの他に夏によくとられていたものとして「甘酒」があります。実は「甘酒」は俳句では夏の季語。天秤棒を担いで売り歩く甘酒屋は、夏の風物詩だったそうです。
甘酒の薬膳的効能は、食欲不振・疲労回復・産後の回復・関節痛など。体を温める作用があり、江戸時代の人たちはこれをとって汗をかいたあと、汗が引くまで川辺で涼んでいたりしたそう。体にこもった熱を、胃から冷やすのではなく体表に汗をかくことで上手く発散していたのでしょうね。
栄養学的にもアミノ酸とビタミンが豊富な甘酒は、飲む点滴とも呼ばれています。夏バテの症状にはぴったりの栄養価。熱々の甘酒でなくとも、夏の栄養補給に向いている飲み物と言えます。
夏の不調で意識したいのは、体を冷やすことではなく、胃をいたわりながら必要な水分と、栄養の補給を行うこと。飲む点滴「甘酒」、夏の一杯にいかがでしょうか?