「あ~あ、痩せなきゃなぁ~」
こんなつぶやき、したことはありませんか?
これがただのつぶやきならまだいいんです。これを人前で言おうものなら人にものすごく気を使われます。さらには心の中で「なんだこいつは」と面倒くさがられることもしばしば。
なのに人はなぜ「あ~あ、痩せなきゃなぁ~」と言わずにはいられないのでしょうか。
その心理を探ってみたいと思います。
つい言ってしまう「あ~あ、痩せなきゃなぁ~」の心理
まずは大きく分けて、言った人の体型がどうであるかでだいぶ印象が変わってくることから整理しましょう。
1.言った人が正真正銘デブである
2.言った人の体型が微妙なライン
3.言った人がどう見ても痩せている
この3パターンに分類できます。
■1.【言った人が正真正銘デブである】場合
まずは1.から考えます。これは「あ~あ、痩せなきゃなぁ~」なシチュエーションの中で、もっとも“マシな”パターンといえますね。
言った人は実際に痩せたいと思っているでしょうし、また健康という見地から痩せたほうがいい状況でもあります。したがって言われたほうもストレスをあまり感じずにすむのです。
ただどう反応していいか、その点が非常に困ります。
素直に“頑張ってね”と言うのが無難かと思いつつも、これを言うことで相手に「やはり太っていたのか」とショックを受けさせることもありえます。
そう、この自分自らが「太っていることを表明する」ことは、「防衛」でもあるんですよね。
自分が自分をデブということで、他人からは言わせてなるもんか、的な。身内の悪口を自分では言うけれど、他人からは言われたくない心理に通ずるでしょうか。
さてさて、一番マシな1.のパターンでもこんなにも面倒くさいのに、2.のパターンではどうでしょうか。
■2.【言った人の体型が微妙なライン】場合
微妙な体型であれば、聞いたほうはめちゃめちゃ気を使います。勘のいい人なら、言い放った本人から次のセリフを望まれていることに気づき、それに応える人もいるでしょう。
「痩せる必要ないのに」
そう、この微妙な体型の人が言い放つ「痩せなきゃ」宣言は、本心で痩せたいという気持ちももちろんありますが、その裏には「でも太っていることを真正面から肯定されるのはつらい、できれば否定されることで自分のデブさを緩和させたい」そんな無意識の攻防があるのです。
非常に面倒くさいですが、それが女って生き物です。
■3.【言った人がどう見ても痩せている】場合
そして3.のパターン。「痩せたい」と言い放つ本人よりも、周囲のほうが太っている場合です。
私ならこう思います。「おっと、宣戦布告か?」と。
そして私なら、内心モヤモヤしたものを抱えながらきっとこう言うでしょう。
「えー、痩せる必要ないじゃん!」と。
しかし奴らはさらに追い打ちをかけてきます。
「全然そんなことないよー。痩せなきゃヤバいよ!」
おっとーーー! 明らかに自分よりもスリムな人からこう言い放たれたとき、私はいったいどんな顔してその場にいればいいのでしょうか。さらにこう言い放つやつらの目的はなんなのでしょうか。
自分以外の体型は見えていないのか、はたまた遠回しに“お前、激デブだぞ”と指摘してきているのか、それとも第三の思惑があるのか、私には理解不能なのです。
「あ~あ、痩せなきゃなぁ~」という言葉が秘める危険性をみなさん理解したでしょうか。私も重々理解しています。人からは聞きたくありません。でも自分からは言ってしまうのです。
「あ~あ、痩せなきゃなぁ~」
つくづく自分ってメスだなって思うのはこんな瞬間です。これからも人間について、そして女についてバカバカしくも真剣に考えていきたいと思います。
初出:しごとなでしこ
吉田奈美 writer
女性誌を中心に、タレントインタビュー、恋愛企画、読み物企画、旅企画、料理企画などを担当。著書に『恋愛saiban傍聴記』(主婦の友社)も話題に。