人事異動が多い秋。もし実際に自分の異動を言い渡されたら何からすればいいのでしょう? 挨拶や周囲に伝えるタイミングを間違えると、信頼を落とす原因にも。異動時も円滑な人間関係に留意し、仕事が捗るように、マナーのおさらいをしましょう。
【間違えてはいけない周囲に異動を伝えるタイミング】
異動の時期になると職場内では「次は誰が異動?」みたいな空気になりますよね。でも、異動を言い渡されても、正式に辞令が出るまでは社内、社外問わず口外してはいけません。噂話は思った以上に早く、情報も歪んで伝わりやすいものです。変な憶測を生まないためにも、会社が異動の周知をOKするまではフライングしないように。
また、取引先や異動先、お世話になった人への挨拶のタイミングも上司に確認してからするのがおすすめです。「上司が先に連絡を入れた後、本人から直接ご挨拶の連絡を入れる」という流れなど、会社独自の暗黙のルールがあるかもしれません。「上司を立てる」「上司に恥をかかせない」「先方に迷惑をかけない」ことは、円滑な人間関係を築くポイントです。
【異動内示後にすべきこと。まずは挨拶・引き継ぎから】
挨拶のタイミングを上司に確認したら、1.取引先への挨拶、2.異動先への挨拶、3.お世話になった人への挨拶は欠かさずにしましょう。
知人の話ですが、取引先の担当者が異動になったときにその担当者から挨拶もなく、次の担当者も知らされないまま、後日異動を知ったことが実際あったそう。「誰に相談すればいいのか分からない」という不安な気持ちと、「社内で引き継ぎさえされていたらいい」という事務的な態度に、悲しい気持ちになったと言っていました。「引継ぎさえされていたら相談事は誰に言っても一緒」ではありません。仕事は信頼関係の上で成り立つもの、また会社の風評にも影響を与えます。自分が異動するときこそ、挨拶にはしっかり心を込めましょう。
1.取引先への挨拶
挨拶の内容としては、今までお世話になったお礼はもちろんのこと、異動時期や異動先の報告、後任者の紹介なども行います。取引先に不安を与えないためです。
私自身の体験を少しお話しますね。以前、取引先の前任の方から電話があり、新任の方と一緒に挨拶にいらっしゃいました。前任の方は、いつも親切丁寧な対応で、ちょっとした事でも話しやすく、とても信頼していました。異動を聞いたときは、少しショックでした。
でも、紹介された後任の方も誠実そうな第一印象。「引継ぎもしっかりしてあるので、また何でもお話くださいね」という前任者のひと言に、大きな安心感を覚えました。
取引先への挨拶は、前任者だけでなく、後任者の挨拶や印象も重要です。「次の人は大丈夫なのか?」という取引先の不安を少しでも軽くしてから去るように心がけるといいでしょう。
2.異動先への挨拶
先ほど後任者の印象も大切とお伝えしました。受け入れる側も「次にくる人はどんな人?」と期待と不安でいっぱいです。謙虚な気持ちと前向きな気持ちを伝え、一緒に仕事をしたいと思えるような好印象を持っていただきましょう。
3.お世話になった人への挨拶
異動や転勤で一緒に仕事が出来なくなっても、縁が切れるわけではありません。また別のかたちでお世話になることもあるかもしれません。また重要な仕事のパイプ役になってくれることもあるかもしれません。しっかりと感謝の気持ちを伝え、応援してもらえるような人になりましょう。
【異動や転勤、手書きの挨拶状作成で信頼度アップ】
電話やメールで異動の報告を済ませるより、改めて挨拶状を出すのが正しいマナーと言われています。忙しい時期に「そこまでしないといけない?」と思われるかもしれませんが、そんな時だからこそ、大切な方へ手間と時間をかけて挨拶状を出しておきたいもの。印刷物でもほんのひと言、手書きで感謝の言葉を添えましょう。挨拶状を受け取った相手は「自分は大切にされている」と感じます。「全くそうは思わない」「無意味」と感じる方がいても、それはそれ。「マナーとしてそうしなければいけない」のではなく、「大切な相手だからこその心遣い」。デジタルな時代だからこそ、こういったアナログな事が相手の心に響きます。
異動は自分だけの問題ではありません。取引先への配慮、元部署への配慮、新しい部署への配慮。信頼されるのは、挨拶に手を抜かずに、着実に人間関係を築いた人です。早く仕事を覚えたい、しなければならないことももちろんたくさんありますが、大切なことは人間関係の上に仕事が成り立っていることを忘れずにいましょう。
初出:しごとなでしこ
古岡めぐみ 現役ホテルマン・マナー講師
沖縄「カヌチャベイリゾート」や、大阪「大阪マルビル大阪第一ホテル」など、名だたるホテルでの勤務経験をもつ現役ホテルマン。お客様からの多くの支持を集め、また後輩育成にも力を注いできたことを認められ、過去に社内表彰されること多数。
現在は富山県内のホテルフロントスタッフとして勤務しながら、これまでの自身の経験をもとに接客マナーやホスピタリティなどのセミナー講師としても活動している。