朝ドラ『あんぱん』を語りたい!今週の見どころと感想をレポ
朝ドラ『あんぱん』観てますか? やなせたかし先生の妻・小松暢さんをモデルに、“逆転しない正義” 『アンパンマン』にたどり着くまでの愛と勇気の物語を描くドラマ。ヒロインの「朝田のぶ」を今田美桜さん、やなせ先生をモデルにした「柳井嵩」を北村匠海さんが演じます。
朝ドラ大好きOggiチームきってのNHK「連続テレビ小説」ウォッチャー、ライター・朝 ドラ子が、今週の『あんぱん』のツボを自由きままに語りたいと思います!
◆先週のレビューはこちら:フラグに次ぐフラグ!朝ドラで急に日常を丁寧に描き出したらそれは…|『あんぱん』第10週
今週は第11週。太平洋戦争開戦から半年経ち、嵩は高知連隊から小倉小隊へ転属。そこで待っていたのは理不尽な暴力の日々でした。
第11週「軍隊はだいきらい、だけど」振り返っていきましょう
古参兵(先輩兵士)からのビンタ、拳、怒号、これでもかと繰り返される暴力描写に「突然違うドラマ始まった!?」と困惑した第11週。幼馴染のコンタくんや岩男、高等芸術学校の同期・健ちゃんとの再会にはホッとしたものの…あれよあれよと時は過ぎ、弟の千尋まで海軍に志願して南方へと発つというではないですか! 先週もひたすらつらかったのにまだまだつらくなるの…?
やれ芋が少ない、帽子がなくなった(大嘘)、などと難癖をつけては殴ってくる古参兵には「いい加減にしろよ〜」とムカつきつつ、なかには暴力を振りかざさない先輩もいるのです。妻夫木聡さん演じる謎めいた存在・八木上等兵。彼の正体とは一体。
嵩は軍隊での訓練をどうにかこうにか生き抜き、八木上等兵の力ぞえもあって最終的には伍長に昇進。嵩入隊から3年ほどでしょうか、いよいよ戦地・中国福建省へと向かうことになるのです。
朝ドラウォッチャーの「今週のツボ」
1. 嵩、思いのほか訓練をがんばっている
古参兵からの難癖&暴力の連続。新人を殴ることになんの疑問も感じていないどころか、それが正しいとすら思っていそうな態度にふるえます。軍隊という環境が、人をそうさせるのかもしれない。のぶちゃんを愛国に目覚めさせてしまった女子師範学校のことをなんだか思い出します。あの学校も先輩に絶対服従だったり先生のパワハラがすごかったりしたよね。でも結局のぶちゃんは染まってしまった。周囲に流され、人は不条理に対して抵抗がなくなっていくのかな…と切ない気持ちに。なんやかんやの末、幹部候補生試験に合格した嵩に手のひらを返すように媚びてくる古参兵も嫌な感じでした。

洗濯物はきれいにたためないし、食器をかたづける手つきはモタモタしているし、不器用な嵩は古参兵に殴られまくり。なんですが…ドラ子は思うのです。「嵩、そこまで悲壮感がないな」と。ひょっとしたら朝から視聴者が傷つかないよう、マイルドな表現にしてくれているのかもしれませんが、イヤイヤながらもなんだかんだ馴染んでいるようにも見えちゃう。「僕ここでやっていけるのかな」とコンタくんにこぼしていたけれど、嵩、君は貧弱そうに見えて意外と、どんな場所でもどうにか生き抜く才能があるのかもしれないぞ。この才能はこれからも活きてきそうな予感です!
2. 誰もが環境に流されていくなかで、「変わらない」という強さ
嵩のすごいところは、軍隊に「染まる」ことで環境に馴染むのではなくて、自分らしさを保ちながらなんとか折り合いをつけていること。古参兵にいびられたときに正直すぎる言い訳をするマイペースさ、殴られてもただただ悲しむだけじゃない冷静さ。入隊して数年経ち、後輩ができても自分は絶対に殴らない優しさ。多くの人が戦争ムードに流されていく時代に、変わらない「自分」をちゃんと持っている人もいる。健ちゃんの天真爛漫さにも救われたし、八木上等兵のニュートラルな態度も、その類なのかもしれません。先週の登美子もそうでしたね。
3. おい千尋、のぶちゃんの気持ちもちょっとは考えなさい。だけど…
そして今週もっとも息を飲んだ、兄弟の対話シーン。あの優しかった千尋が海軍に志願して、駆逐艦で爆雷を投下するだなんて…。駆逐艦に乗って南方へ──この意味を、未来人である私たちはよくわかっていますし、千尋も「そのつもり」で嵩に会いに来たようでした。
学友たちが次々と志願するなか、自分だけがそうしないわけにはいかないと千尋。彼もまた、時代の流れにのまれて変わらざるをえないのです。この戦争がなかったら、法学の道をきわめて弱い人を救いたかった。冷たい態度をとってしまった実のお母さんに優しくしたかった。そして愛する国のために死ぬより、愛する人のために生きたかった。語り合いの末に、こぼれる千尋の本音がただただ悲しい。
けどね、一個だけよいでしょうか…。千尋は昔からのぶちゃんが好きだったわけですが「兄貴の嫁さんになるがやったら諦めもついたのに」という発言には「いやいやいやのぶちゃん本人の気持ちも考えなさいよ」と突っ込みたくなってしまいました。朝ドラウォッチャーとしては2021年度後期の『カムカムエヴリバディ』安子・稔・勇の三角関係を彷彿させないこともないですが、この場合は安子と稔が両思いだったからなあ。
生きて帰ったらのぶちゃんをつかまえる!と息巻く千尋に「彼女は人妻だぞ」と釘を刺す嵩。そりゃそう。この戦争がなかったら、のぶちゃんは優しい次郎さんと穏やかな日々を過ごしているとドラ子は思うぞ。無事告白できたとしても、きっとのぶちゃんは「千尋くん何言うとるん?」って困惑する結果しか見えないって! それに細かくて申し訳ないんだけど、窓開けっぱなしで大声でそんなお話ししてて大丈夫!?
…と思いつつ、、、こんなふうに、冷静に突っ込めるのも、平和だからこそなんだよね…。
千尋は「もう後戻りができない」。最期(この漢字まじで使いたくない泣)くらい、たとえめちゃくちゃな気持ちだったとしても言葉にしておきたかったのかも、と思うとつらいです。あと、このタイミングで意味ありげなアイテム「お父さんの手帳」を嵩に渡すのやめてくれー!『あんぱん』において、大事なものを誰かに託すのは退場フラグなんだってば…。兄弟トークに朝から涙が止まりません(録画なので、夜ですが)。優しかった千尋、ああ、あなたのこの先を考えるのがつらいです。
来週のあんぱん、サブタイトルは「逆転しない正義」
さてさて、中国に上陸した嵩たち小倉連隊。今のところ地元の市場を訪問したり幼馴染と思い出話をしたり、戦地とはいえおだやかな時間も。これは…地獄の戦場描写に向けて助走つけているんですか…? アンパンマンの根底にあるテーマ「逆転しない正義」に嵩はどのようにたどりつくのか。どうやら次週は、のぶちゃんの暮らす高知でも大きな空襲が起こるようです。ううう、頼む、みんな生きてくれ〜(涙)
【おまけ】今週のあんパン

東京都・中野駅から徒歩4分、ボンジュール・ボンのこしあんパン&つぶあんパン各190円。しっとりやさしい小麦の香りに、上品な甘さのあんがたっぷり。あんの種類ごとにゴマのトッピングが違うのもなんかいいですね♡
「朝ドラウォッチャー」ライター・朝 ドラ子
NHK「連続テレビ小説」(通称・朝ドラ)をこよなく愛するアラフォー。毎日退勤後に録画をじっくり観るのが日課。会議でのアツい朝ドラコメントが「天才的なウォッチャー」と編集長に認められ、この連載を開始。歴代ナンバーワン朝ドラは『スカーレット』(2019年度後期放送)。