「注意」は否定ではなく育成という視点が大切
新人に注意をする目的は「責めること」ではなく「本人の成長を促すこと」にあります。
つまり本人への指摘は、あくまでも改善のため。注意に熱が入って相手の人格まで否定しないことが大切です。
この視点が抜けて新人を責めるように注意をしてしまうと、離職や出社拒否、パワハラ問題などの深刻な話に発展する懸念もあります。
【新人への効果的な注意】5つのポイント

新人に注意をするときには、最大限に効果的になるよう努めましょう。
意識すべきポイントを解説します。
♦︎事実に基づいて伝える
どんなにイラッとしたとしても、感情的になるのはNG。
「○○の場面で××という行動があった」や「△△の手順が抜けていた」など、具体的な事実に基づいて伝えます。
できるだけ主観を排除して「〜だと思う」よりも「〇〇という事実があった」と、言い方にも工夫を取り入れると、相手も受け入れやすくなるでしょう。
♦︎注意をするタイミングを見極める
注意のベストタイミングは「早すぎず、遅すぎず」です。
ただし相手が疲れていたり落ち込んでいたりするときは避け、冷静に聞き入れてくれそうなときに声をかけましょう。
ミスの直後には注意をする側もされる側も感情的になりやすい傾向があるので、双方が落ち着いて話ができる状況を選ぶとベターです。
♦︎相手の良い点にも触れる
否定的な言葉を伝えるときにはいわゆる「サンドイッチ話法」を用いて、良い話のあとに課題(注意の内容)を話し最後も良い話の順に進めると、相手の心にポジティブに届きやすい傾向があります。
良い話を省いて改善点だけを伝えると、新人が自信を失ってしまうだけでなく上司や先輩に対して不必要に反発を覚える引き金にもなるため、相手の努力や成長も認める言葉を意識的に盛り込みましょう。
♦︎期待をしている旨を伝える
注意を「叱責」だと受け取られないためにも、相手に対して「期待している」や「伸びしろがあると感じている」といった思いも言葉にして伝えましょう。
意地悪で注意をしているのではなく、“もっと活躍をしてほしいからこそ、あえて伝えている”というスタンスを理解してもらえると、注意の言葉が新人の心に響きやすくなります。
♦︎押しつけずに選択の余地を与える
指摘をしたあとに本人が選択できる余地を残しておくと、押し付けにならず双方向のコミュニケーションを図りやすくなるでしょう。
注意の終盤で「どう思う?」や「何か迷いや困りごとはある?」などと新人が意見を言いやすくなるようなひと言を添えるだけでも、相手に話す機会を与えられます。
これはNG! 新人が反発する注意の仕方

せっかく新人に注意をしても、相手の心に響くことなく反発だけを招いてしまったら残念です。
新人が反発しやすいNGな注意の仕方をチェックしておきましょう。
♦︎感情的な言葉で怒る
注意をするのと怒るのは、似ているけれどまったく別のお話。
たとえば、新人のミスを見つけた瞬間に「なんでこんなことしたの⁉」と声を荒げてしまえば、萎縮や反発を招くだけでなく、改善意欲すら奪ってしまいかねません。
また感情的に注意をしている姿は、当事者以外の周りから見ても「近づきにくい人」や「怖い人」といった悪い印象を抱きがちです。
♦︎他人と比較をする
他人と比較をした注意は、相手の自尊心を傷つけやすいもの。関係がこじれるデメリットが大きいだけでなく、比較対象として出された人にまで悪影響を及ぼすリスクがあります。
仕事の成長スピードや適性は、個々で大きく異なるという前提を忘れない意識も大切です。目の前の新人の成長だけにフォーカスして言葉を選びましょう。
♦︎過去の失敗を何度も持ち出す
同じ失敗を繰り返す新人には、ついイライラも募りがち。
しかし過去の失敗を何度も持ち出し続けると、信頼関係が築きづらくなるだけでなく新人の自信を失う引き金にもなりかねません。
新人はミスへの恐怖心が強まってしまうと、新しいことに挑戦しにくくなりがちです。ミスの背景を一緒に見直すように努め、苛立ちをぶつけないように気をつけましょう。
♦︎みんなの前で叱る
みんながいる前で注意をしてしまうと恥をかかせる形になってしまうために、人間関係が一瞬にしてこじれがちです。
会議中や現場でミスをした新人に対してそのまま叱り始めてしまえば、周囲からパワハラと受け取られるリスクも低くないでしょう。
注意をするなら、1on1の状況がベスト。相手が聞き入れやすい場所とタイミングを考慮しましょう。
♦︎曖昧な言い方をする
「ちゃんとして」や「しっかりして!」などの曖昧な注意では、注意を受けた新人は具体的な改善点がわからずに、戸惑うだけで終わってしまいがち。
言葉の解釈には個人差があるので、注意をする側は「正しく伝えたつもり」でも、注意を受けた側にはまったく伝わっていないリスクが潜みます。
注意は、わかりやすい言葉で具体的な行動にまで落とし込んで伝えましょう。
新人への注意は信頼を築く行為
新人の時期には、先輩からのちょっとした言葉ひとつでも心が揺れやすいものです。
伝え方に工夫を取り入れながら前向きな成長を促せるのが「良い注意」ですから、注意を受ける側の気持ちに寄り添った言葉や振る舞いを心がけましょう。
また注意をするときだけでなく、日頃から声をかけて信頼関係を構築しておくことも大切です。
適切な信頼関係が構築されている間柄での注意であれば、新人も萎縮することなく聞き入れやすくなるでしょう。
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並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。