万屋とは?
万屋は、現代ではあまり一般会話では使われない傾向にありますが、店名、屋号などには現代でも用いられています。
ここでは、万屋の読み方や意味について解説します。
万屋の読み方
万屋は「よろずや」と読みます。「万」は音読みで「まん」、訓読みでは「よろず」と読み、万屋は訓読みを使います。「よろず」という読みは、古典や和歌、漢詩、神道・仏教などの文脈でよく見られる言葉です。
「万」は「1万円」のように数の単位として使われるだけでなく、「万病(まんびょう)」「万策(ばんさく)」「万能(ばんのう)」など、「あらゆるもの」「多くの」といった意味でも用いられる言葉です。万屋の「万」もこの意味を持ち、さまざまな品物を扱う店を表しています。
2つの意味
万屋という言葉には、「多種多様な商品を扱う店」という意味のほかに、「なんでも知っている人」といった意味合いも含まれています。
これら2つの異なる意味について、それぞれ詳しく解説します。
いろいろな品物を販売している店
万屋は、 生活に必要なさまざまな品物を扱う店という意味です。「なんでも屋」と呼ばれることもあり、平安時代から江戸時代にかけて、地域に根差した小売店の総称を指して使われてきました。
食料品から日用雑貨、文房具、衣類まで、幅広い商品を取りそろえていたとされています。現代においては、こうした多様なニーズに応える点で、コンビニエンスストアが万屋に近い存在だといえるでしょう。
なんでも知っている人
万屋は「なんでも知っている人」という意味で比喩的に使われることもあります。さまざまな知識やスキルを持ち、専門家ではないものの、一通りのことがこなせる人を指す表現です。
たとえば、職場で幅広い業務を柔軟にこなせる人や、マルチな才能を発揮する人などが「万屋的存在」と称されることがあります。
一方で、「あれこれ手を出すものの、どれも中途半端で身につかない人」という否定的なニュアンスで使われることもあり、状況によっては揶揄や皮肉を含む表現として受け取られる可能性も。そのため、文脈によっては注意が必要です。
よろず‐や〔よろづ‐〕【▽万屋】
出典:小学館 デジタル大辞泉
1 生活に必要ないろいろな品物を売っている店。雑貨屋。なんでも屋。
2 なんでもいろいろなことをひととおり知っている人。また、なんでもいろいろひととおりできる人。なんでも屋。

万屋の使い方・例文
万屋の使い方について、例文を通して確認していきましょう。
いろいろな品物を販売している店という意味の例文
・この街には昔から続く万屋があり、どんな物でも手に入る
・昭和の時代、商店街には食料品から日用品、おもちゃまでなんでも揃っている万屋があり、地域の人々に親しまれていた
・その地域では、コンビニが進出してくるまで、日用品から灯油まで揃える万屋のような店舗が人々の生活を支えていたらしい
・我が社は創業当初、万屋のように多岐にわたる商品を扱っていたが、現在は自社ブランドに特化した商品を扱う戦略に転換している
なんでも知っている人という意味の例文
・彼は営業からマーケティング、ITまでなんでも対応できる、まさに万屋のような存在だ
・彼女はあらゆる仕事を器用にこなすため、部署の万屋として頼りにされている
・彼は特に役職にはついていないけれど、トラブルがあると呼ばれる万屋のようなポジションに定着してしまっている
・変化の激しい業界の企業では、一人ひとりの社員に万屋のような働き方が求められている
万屋の類義語・言い換え表現
万屋には、次のような類義語や言い換え表現が挙げられます。
・雑貨屋
・便利屋
ここでは、それぞれの意味や例文をみていきましょう。

雑貨屋
雑貨屋とは、その名の通りおもに雑貨類を中心に取り扱っているお店のことです。日常生活で使用する実用的な小物から生活を彩る装飾品まで、幅広い商品を扱っています。
具体的には、文房具やインテリア用品、キッチン用品、バスグッズ、アクセサリーなどが挙げられ、店舗によってはおしゃれなデザイン雑貨やプレゼント向けの商品も多く取りそろえています。生活を豊かにしてくれるアイテムが見つかる場として、多くの人に親しまれているお店です。
〈例文〉
・駅前に新しくできた雑貨屋には北欧風のインテリア雑貨が並び、多くの女性客で賑わっている
・彼女は週末ごとに雑貨屋を巡るのが趣味で、おしゃれな小物をコレクションしている
便利屋
便利屋(べんりや)とは、客の依頼を受けてさまざまな業務を代行する業者のことです。引き受ける仕事は、日常生活のささいな困りごとや雑用をはじめ、水回りの修理など専門的な知識が必要なことまで、多岐にわたるといえます。
また、業者ではなく、どんな用事でも簡単に引き受けてくれる人を指して「便利屋」という場合もあります。
〈例文〉
・実家の両親は高齢なため、家の掃除や庭の手入れは便利屋に依頼している
・便利屋として起業するには、幅広いスキルと地域に密着した信頼が求められる
「万(よろず)」を使った言葉
「万(よろず)」を使った言葉は、万屋のほかに次のものが挙げられます。
・万度(よろずたび)
・万売り帳(よろずうりちょう)
・万世・万代(よろずよ)

万度とは、「何度も」「何回も」という意味です。万売り帳は、売った品物とその価格などすべてを記入しておく台帳のことです。万世・万代は、限りなく長く続く世という意味があります。
このほかにも、「万」を使った表現としては、数多くの神々を意味する「八百万の神(やおよろずのかみ)」があります。これは、日本の神道における多神信仰を象徴する言葉です。
万屋の意味を正しく覚えよう
万屋は「いろいろな品物を販売している店」と「なんでも知っている人」という2つの意味があります。かつて万屋と呼ばれていた店舗は、現代ではほとんど見かけませんが、コンビニエンスストアがそれに代わる存在といえるかもしれません。
万屋の類義語には「雑貨屋」や「便利屋」がありますが、それぞれ使われる場面やニュアンスは異なるため、文脈に応じて正しく使い分けるようにしてください。
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