「はい論破」への大人の返答5つ

相手が「はい論破」と言ってきたシチュエーションで、相手に乗せられすぎずに自分の立場も守るための「返し方」について解説をします。
♦︎「その論破、誰が判定したの?」
「はい論破」という発言の多くは客観的な勝利というよりも、主観的な“気持ちいい終わり方”でしょう。そのため「誰がそれを決めたのか?」という問いを投げかけると、冷静な空気を取り戻しやすくなります。
言い返すような強い口調ではなく、相手の独りよがりな勝利宣言を冷静に突くような落ち着いた言い方を心がけると良いでしょう。
♦︎「論破したいんじゃなくて、話し合いたかったのだけど」
話し合いの目的は“勝ち負け”ではなく、“理解し合う”ことです。そのため「論破=勝ち」ではないという価値観を、相手に対して静かに示すのも大人の対応として有効でしょう。
相手が一方的な勝利宣言をしているけれど、議論の本質を問い直したい場面などで役立ちます。
♦︎「話を聞く気がないなら、この先は意味がないのかも」
相手が一方的に「はい論破」で終わらせようとしている姿勢が強く見えるときには、こちらも毅然と対話を終了するのも一案です。ケンカ腰になるのではなく対等な立場を示し、感情的に聞こえないよう伝えるのがベターです。
まだ話し合いを続けたいけれど、相手が興奮していたり話を聞く気がなかったりするときほど、その場での話し合いは終えて後日、また別の機会に持ち越すほうが得策です。
♦︎「その論破で何が変わる?」
論破はあくまでも手段です。その場で何を目的として話していたのかを再確認できれば、相手の“勝ち誇り”を無力化しやすいだけでなく、現実的な視点に引き戻すきっかけになるでしょう。
議論の目的が達成できていない場面では、このフレーズで議論の“目的”を問い直すよう働きかけていきましょう。
♦︎「勝ちたいなら勝っていいよ」
「はい論破」を口にして勝敗にこだわる相手に対して、勝ち負けの世界から一歩引くのも一案でしょう。こちらの考えを貫きながらも、争いをエスカレートさせない大人の対応です。
相手の自己満足とこちらの意思を分離できるフレーズとして、ここぞ! という場面で使えます。
【大人のスルースキル】「はい論破」に乗らない選択肢

議論の場やSNS、日常会話でもときおり現れる「はい論破」という言葉には、大人のスルースキルが非常に有効です。
「はい論破」は理屈で相手をねじ伏せたという“勝利宣言”に見えますが、その実態は相手を黙らせるための一方的な幕引きにすぎません。あえて戦わない選択肢を解説します。
♦︎あえて“無視”をする
「はい論破」と言ってくる人の多くは、リアクションを期待しています。つまりあなたが悔しがったり反論したりすると、相手の“勝った感”が増してしまいます。
そのためあえて無反応を貫くと「相手の土俵に立たない」という最上級の返しに。「あなたとは議論が成立しない」という意思を暗黙のうちに示すことができ、格の違いも示せるでしょう。
相手の「勝ちたい」という意思に対して、こちらは「関わらない」という意思を示すテクニックです。
♦︎その場では“流す”
議論や会話の途中で「はい論破」と言われたからといって、常に真っ向から反論する必要はありません。大人のスルースキルとして、その場では一度流してしまいましょう。
「そう思うなら、それでいいんじゃない?」などと相手の価値観を否定しないけれど巻き込まれない意思を貫くと、自己防衛ができるとともに無用な衝突を避けられます。
♦︎相手よりも一段上の視点を持つ
「はい論破」と言ってくる相手に対して、もしもこちらが本気で腹を立ててしまったら相手の思うツボ。
「ああ、子どもっぽいな」と少し距離を置いて見られれば、相手が幼稚に見えてくるでしょう。
大人のスルースキルは相手を見下すことではなく、巻き込まれないことにあります。冷静に判断できるよう努めましょう。
「はい論破」がビジネスに及ぼす悪影響とは

「はい論破」はネットスラングとしては軽いノリで使われがちですが、ビジネスの場で出てくるとなれば単なる口癖では済まされません。
言葉の裏にある“勝ちたい”“相手を封じたい”という心理は、職場のコミュニケーションに深刻なダメージを与えるでしょう。「はい論破」がビジネスに与える悪影響を解説します。
♦︎建設的な議論が止まってしまう
本来、ビジネス上の議論はより良いアイデアを出したり問題を多角的に検討したりするために行うものです。
そのため議論を“勝ち負け”で捉えてしまうと目的が自己満足にすり替わり、本質的な議論が行えなくなります。
「はい論破」は相手の意見に対する一方的な終結宣言であるために、議論の参加者に不快感を与えるだけでなく議論の目的を達成できなくするほどの破壊力のあるフレーズです。
♦︎チームの心理的な安全性を損ってしまう
チーム内の誰かが「はい論破」と口にすれば、周囲のメンバーは「自分の意見もバカにされそう」と感じ、余計なことを言わないようにしようと考えがちです。
するとチーム内に意見を言いにくい空気が生まれ、チーム全体の発言量や協調性が下がってしまいます。
♦︎支配を優先するマインドを助長する
「論破したい」という姿勢は、相手との“共創”よりも“支配”を目指す発想。そのため、場合によってはパワハラにも繋がりかねません。
また同僚間での「はい論破」は社内に上下関係とは別の“マウンティング構造”ができてしまうので、健全なフィードバック文化が崩れるリスクもあります。職場の環境が悪化する引き金になりかねず、職場の人間関係が歪みやすい環境を生みやすくなるのです。
♦︎誤った意思決定を誘発するリスク
論破をしたら勝利という空気があると「論理が強い人の意見」だけが通りやすくなりがちです。
一方で現実の課題には、感情や現場の声など単純な理屈だけでは解決できないものも多く存在しますので、論破型の文化は多様な視点を排除してしまいます。つまり、論破を好む人がいると視野の狭い意思決定を招くリスクが大きくなりやすいのです。
「はい論破」には乗らないのが最善
「はい論破」は挑発的なフレーズです。「勝ちたい」「支配したい」「話を終わらせたい」といった欲求が透けて見えるからこそ、大人のスルースキルとして「反応しない」という知恵を持ちましょう。
感情的にならずに一段上の視点から対処できれば、“会話のレベル”そのものをコントロールする術にもつながります。
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並木まき
ライター、時短美容家、メンタル心理カウンセラー。企業研修や新人研修に講師として数多く携わっている。シドニー育ちの東京都出身。28歳から市川市議会議員を2期務め政治家を引退。数多くの人生相談に携わった経験や20代から見てきた魑魅魍魎(ちみもうりょう)な人間模様を活かし、Webメディアなどに執筆。