綺城:りほちゃんたち1期上さんはみんな優しかったよ。かわいい、かわいいと言ってくださって。
力丸:なんか愛おしさがあってね。余興でシュールなものを1期下さんがやったときも私たちの期だけツボって、でも周りは全然ウケてなくて。星組に行ってよかったね、持ち直したね。
綺城:うん、ウケない余興もやった。ウケなくてもやろうって星組で思ったよ(笑)。
力丸:成長したね(笑)! あかりちゃんは星組に行ってから花組に戻ったじゃない? そのときに花組の変化は何か感じた?
綺城:星組に行ってすぐコロナの影響があって、コロナに対する関わり方は組によって全然違ったんだろうなと花組に戻って感じました。コロナを経て花組に戻ったら、下級生までひとりひとりがちゃんと自立したうえで周りと関わっているという印象が強かったかな。
力丸:なるほど、それは貴重な経験だよね。花組は「おかえり」みたいな感じだったの?
綺城:お世話になった上のかたはもうほとんど卒業されていて自分がかなりの上級生になっていたから、改めてよろしくお願いしますって感じだったかな。どこに行ってもやることは同じだから、今やるべきことをやるという気持ちでした。
力丸:舞台はどうだったの? 表現の仕方とか。
綺城:私が前にいた花組時代の演目がゆったりしたものが多かったこともあるかもしれないけど、星組はパッションの組だから1曲に入っている振りの数が大変なことになっているのね。たぶん5組のなかでダントツだと思う。
基本的に礼 真琴(れい・まこと、星組トップスター)さんを中心に振りがつけられてそこにみんながついていくという感じで、すごく難しかった。もちろん花組もそうなんだけど、星組は突出していたんじゃないかな。
舞空:花組と星組では題材も違いましたよね。花組は華やかなものが多くて、星組は熱いものが多かったように思います。両方を経験できてよかったです。

悔いのない気持ちで退団できたからこそ、清々しい気持ちで次の道に踏み出せる
力丸:退団を決めたときのことを聞きたいんだけど、たぶんもうたくさん聞かれていると思うので新しいお話をお願いします(笑)。
綺城:きっかけは『アルカンシェル』。やりきった感があって。
力丸:そんな明確にあったの? 鐘が鳴った?
綺城:うん、鐘が鳴った。次が私と同じ97期入団の谷貴矢先生のお芝居と、現役のときにいろんなチャンスをくださってたくさんお世話になった稲葉太地先生のショーと聞き、おふたりの作品で退団したいと思って。「ここしかない」と決意しました。
舞空:『アルカンシェル』は花組に戻られて2作目ですか? 柚香(光、ゆずか・れい、元花組トップスター)さんの退団公演ですよね。
綺城:そうそう。私、小池先生(宝塚歌劇の演出家、小池修一郎さん)のミュージカルがすごく好きで、その小池先生のオリジナルの作品の『アルカンシェル』で印象的な役をいただけて、自分がそれに応えられたかわからないけれどこれ以上自分ができることはあるかなと思ったの。
退団を決めて発表してしまうと、もうそれまでのようには公演できないじゃない?
力丸:そうだね、退団のひとつ前の作品までが通常な感じだよね。
舞空:退団者として過ごしますもんね、最後の作品は。
綺城:そうそう、だから退団公演は私にとってはデザートみたいなものだと思ってね。
力丸:なるほどね、面白い表現。

綺城:もちろん手を抜くということではないよ。自分にとってご褒美のような期間だから、この作品が、みなさんに感謝の気持ちを伝えながら過ごせる最適な作品だなと思って。みなさんの優しさもたくさん感じられて、とっても素敵な時間でした。
力丸:本当に思い残すことなく卒業されたんですね。素晴らしい。ひとみちゃんは退団を決意したきっかけのお話はたくさんしているよね?
舞空:実はそうなんです(笑)。花組に3年いて組替えして、星組でトップ娘役という立場をいただいてから次は卒業があるということはわかっていましたけれど、本当に毎日が目まぐるしくて。
いただいた目の前のことをやるのに必死すぎて考える余裕もなかったのですが、コロナがあり、自分も落ち着いてきた頃に「今の自分で卒業できるのかな」って。
宝塚歌劇が大好きすぎて「いていいよ」と言われたらずっとここにいたいと思うくらい本当にずっと大好きだから、「どんな自分で卒業したいか」という目標を決めたんです。それで、タカラヅカに入れていただいた小林一三先生に「ありがとうございました」と悔いなく心から言える自分になろうと決め、ひと公演ひと公演を過ごしていました。
そして博多座の『ME AND MY GIRL』を終えた後くらいから(相手役の)礼さんや劇団のかたに思いを伝えて、決めた感じです。

力丸:そっか。ひとみちゃんは鐘が鳴ったのではなく、いろいろ考えながら進んでいった感じかな。
舞空:考えながら進んでいましたが、「やりきったな」という気持ちはありました。でも、作品をひとつクリアしたら次へ、それをまたクリアして次…という感じだったので、ガーンという鐘はなかったですね。
力丸:ふたりとも「やりきった」という気持ちで卒業したと聞いて、気持ちいいです。どうしても悔いを残して辞める人も少なくないと思うから。
舞空:本当に清々しい気持ちで卒業できたことに感謝しています。退団直後も少し時間が経った今日も、そう思っています。
タカラヅカを好きなまま自分の意思で卒業したから、距離は離れたけれど心は離れていないみたいな、いい距離感でいられることがすごくありがたいです。周りのかたにいっぱい幸せをいただいたんだな、って。
力丸:わかる。タカラヅカがあったから今の自分があるって感謝して、そこから次のステージに行けるのがいちばんいいよね。
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この撮影のために「Mardi Mercredi」のTシャツを用意してくれた3人。連絡を取り合いながらそれぞれのカラーを決めたそう。春らしいトーンの素敵な姿を収めることができました。
後編では、おふたりが考えるこれからの道のさらに先のことや、舞空さんもゲスト出演する綺城さんのディナーショーについてお話をうかがいます。お楽しみに!
\おまけ!/

退団してもう数回やっているというジェルネイル。「好きなモスグリーンカラーのネイルにしたから、それに合わせて全身もコーディネイトしました」と綺城さん。シンプルだけどさりげなくラメが入っていて、品のある爽やかネイルです♡
<プロフィール>
綺城ひか理
あやき・ひかり/7月14日生まれ、千葉県出身。2011年に97期生として宝塚歌劇団に入団、花組に配属される。2016年『ME AND MY GIRL』、『金色の砂漠』で新人公演主演。2019年『Dream On!』でバウホール公演のメインキャストを務めた後、星組へ組替え。2023年に再び花組所属となり、2025年『エンジェリックライ』『Jubilee』にて退団。4月13日と19日に『綺城ひか理ディナーショー2025 ~Take it Easy~』を開催予定。インスタグラムはこちら:@hikari___ayaki
舞空 瞳
まいそら・ひとみ/8月27日生まれ、神奈川県出身。2016年に102期生首席として宝塚歌劇団に入団。花組に配属され、2018年『MESSIAH』で新人公演初ヒロインを経て、『メランコリック・ジゴロ』で全国ツアー公演初ヒロイン。翌年星組へ組替え。『GOD OF STARS -食聖-』で2度目の新人公演ヒロインを経て星組トップ娘役に就任し、2020年『眩耀の谷 ~舞い降りた新星~』『Ray -星の光線-』で大劇場お披露目。2024年『記憶にございません!』『Tiara Azul -Destino-』にて退団。4月13日の『綺城ひか理ディナーショー2025 ~Take it Easy~』東京公演にゲストとして出演予定。
オッジェンヌ 力丸莉帆
福岡県出身。9年間宝塚歌劇団に所属していたという華やかな経歴の持ち主で、退団後は不動産関連会社でブランディング業務を担当。いちばんの趣味は舞台鑑賞!
インスタグラムはこちら:@riho_rikimaru
撮影/増田謙士朗 構成・文/淡路裕子