「姑獲鳥」という言葉を目にしたことはありますか? 一見すると読み方が難しい漢字ですが、日本の妖怪伝承に由来する言葉です。また、京極夏彦さんの小説『姑獲鳥の夏』によって、さらに広く知られるようになりました。この記事では、「姑獲鳥」の正しい読み方やその伝承について詳しく紹介していきます。
「姑獲鳥」とは? 読み方と意味を解説
まずは「姑獲鳥」の読み方から確認していきましょう。

「姑獲鳥」の読み方と意味
「姑獲鳥」は 「うぶめ」 または「こかくちょう」と読みます。辞書で意味を確認しましょう。
(「姑獲鳥」とも書く)難産のために死んだ女性の幽霊。また、想像上の怪鳥。赤子を抱いて現れ、通行人に抱かせようとしたり、幼児の泣き声に似た声で夜間飛来して子に害を加えたりするとされる。うぶめどり。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「姑獲鳥」は、想像上の怪鳥で、産婦が死んで化したといわれる幽霊のことです。泣き声は幼児の泣き声に似ていて、夜間飛来して幼児に危害を加えるという伝承が各地に残っています。
『姑獲鳥の夏』とは? 京極夏彦の小説を紹介
京極夏彦さんの『姑獲鳥の夏』は、伝説の「姑獲鳥」をモチーフにした長編推理小説です。百鬼夜行シリーズの第1作でもあります。1994年に刊行され、独特の語り口と緻密なストーリーで人気を博しました。以下では、あらすじを紹介しましょう。

『姑獲鳥の夏』のあらすじ
物語の舞台は昭和27年(1952)の東京。 産婦人科医院にまつわる奇妙な噂が囁かれる中、小説家の関口巽(たつみ)と、その友人で古本屋兼陰陽師の中禅寺秋彦(通称「京極堂」)が事件の謎に迫ります。物語には、「姑獲鳥」という妖怪の伝承が深く関わっています。
『姑獲鳥の夏』は2005年に実写映画化もされました。 監督は実相寺昭雄さんが務め、堤真一さん、永瀬正敏さん、阿部寛さんなど豪華キャストが出演しました。
『鬼滅の刃』や『彼岸島』に「姑獲鳥」は登場する?
「姑獲鳥」は、妖怪好きの間では広く知られる存在ですが、人気漫画『鬼滅の刃』や『彼岸島』にもこの名前が登場します。では、これらの作品ではどのように扱われているのでしょうか?
『鬼滅の刃』に「姑獲鳥」は登場するのか?
『鬼滅の刃』本編には「姑獲鳥」という鬼は登場しません。しかし、スピンオフ小説『鬼滅の刃 風の道しるべ』には、「下弦の壱・姑獲鳥(うぶめ)」という鬼が登場します。
この姑獲鳥は、子どもへの執着が強く、幻術を操る能力を持つ鬼として描かれています。ただし、このキャラクターはあくまで小説版限定のものであり、『鬼滅の刃』の本編漫画には登場しません。

『彼岸島』の姑獲鳥とは? その正体と役割
『彼岸島』にも「姑獲鳥」というキャラクターが登場しますが、その描写は伝承の姑獲鳥とは異なります。この作品では、「姑獲鳥」は人間が吸血鬼化し、異形の怪物となった存在の一つです。
『彼岸島』の世界観では、感染によって生まれる吸血鬼たちはそれぞれ独自の特徴を持ち、姑獲鳥もその一例として登場します。見た目や設定こそ伝承の姑獲鳥とは異なりますが、恐ろしい存在として描かれる点では共通しているといえるでしょう。
最後に
「姑獲鳥」は、日本の伝承に根付いた妖怪であり、京極夏彦さんの小説をはじめとするさまざまな作品に影響を与えてきました。不気味でありながらも神秘的な存在感は、多くの物語の中で異なる解釈を与えられながら語り継がれています。
現代のエンタメ作品においても、「姑獲鳥」の名は独自のアレンジを加えられながら登場し、そのイメージを新たに更新し続けています。伝承とフィクションの交差点として、今後も「姑獲鳥」は多くの創作物の中で生き続けることでしょう。
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