俳優・佐野勇斗さんインタビュー
目指すのは、人を思いやること、楽しませること
「この10年を振り返ってみれば、想像していたより何十倍も苦しかった…というのが正直な感想です。もちろん、大変だとわかって臨んだ仕事だけれど、現実が予想を余裕で超えてくる。思うように芝居ができなかったり、望んだ結果が出なかったり。少し進んでもまた、現状に満足できずにもがいたり。まるで修行でもしている気分でした。もちろん、今も」
2025年、佐野さんは俳優活動10周年を迎える。子供のころから望んだ道だったし、キャリアアップは順調に見えるが──。
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「たぶん、すべての目標を達成するまで、この大変さから抜け出すことはないだろうと思います。でも、それもイヤではないんです。悩むのは頑張っている証で、なんの感情もわかない人生なんて、きっとつまらない。そして30代になったとき、もがいたことも楽しかったと言えると、信じているんです」
30代まであと3年ちょっと。その年数を視野に入れながら、自分に足りないものを埋めるように走り続けている。
「〝もっといい芝居ができたはず〟〝人にキツい言い方しちゃった〟。日々反省を繰り返して、日記に書き留めておきます。読み返してみると、自分に不足していることがよくわかってくる。今の課題は、どうしたら余裕が持てるか。そして思いやりを持って人と接することができるか。
これがやがて『人間力』の土台になっていくのだろうと思っています。その先に目指すのは、歌や芝居で『人を楽しませること』。仕事を始めたときから変わらない、いや、小さいときから親に言い聞かせられてきた、僕の目標であり生き方です。そのために、1日もムダにしたくない。
焦りすぎるとよくないのはわかっているけど、かといってのんびりするのは性に合わない。どっしり構えて、でもスピードを上げて。きっと、人生は思った以上に一瞬で過ぎていくものだろうから」
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いざとなったら無鉄砲に突き進む
佐野さんが「人間力」をことさら意識するのは、ある人物たちの影響もあったという。
「『トリリオンゲーム』で演じたガク(平 学)は、ビジネスに対してアツい思いがあり、冷静に物事を見る目も持っている。そして何より、『優しい』という言葉だけで片づけたくないほど、深い『人間力』があります。
何もかも真逆なハル(天王寺 陽/目黒 蓮)と出会って人生が変わったけれど、僕も目黒くんと出会い、仕事ぶりを見て、人間性に触れ、影響を受けてきました。だからもし、僕がハッキングするなら(注:ガクは天才的なハッカーでもある)、目黒くんの頭の中をのぞき見してみたい(笑)。
どんなモチベーションでハードなスケジュールを乗り切っているのか、選択を迫られたときどう決断しているのか。知りたいことが、まだまだありすぎます」
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2025年2月に公開を控える劇場版『トリリオンゲーム』。佐野さん演じるガクは、気弱なパソコンオタクでありながら、天才的IT技術をもつ凄腕エンジニア。ドラマシリーズでトリリオンゲーム社の社長に就任し、劇場版ではその続きが描かれる。
「僕が社長という立場なら──あまり考えたことがなかったけど、働くみんなの意見を取り入れて、なんでもみんなで団結してやり遂げるでしょう。仲間を巻き込むのは僕の特技でもあるけれど、一方でビジネス書を読むのが好きなオタク的要素もあるし、がんがん突き進む無鉄砲さもある。ってことは僕、ハルとガクの両方の要素をもってるのかも!」
『トリリオンゲーム』では、真逆の性格のふたりが、トリリオンダラー(1兆ドル)を目指して成り上がっていくが、並行して「小さな幸せ」にも目を向けるガクの優しさにも触れられている。では、佐野さん自身の小さな幸せはというと。
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「今朝、ちょっとだけゆっくり眠れたこと。それから、SNSのコメントに勇気づけられたこと。 忙しすぎると、何が幸せなのかわからなくなることがあるけど、それは自分に飽きているということなのかもしれない。いっときでも、何も考えない時間をつくるようにします」
日記には、反省ばかりでなく、幸せな出来事や、ゆるぎない目標「人を楽しませる」が書かれている。こうして自分を俯瞰し、言葉にしながら、前進し続ける。日記はそのためのお守りであり言霊。
「それに僕、運もメンタルもめちゃくちゃ強いんで(笑)。たぶん、どんな試練もなんとかなる。そう確信しているんです」
【佐野さん着用衣装】ジャケット[参考価格]¥638,000・シャツ[参考色・予定価格]¥225,500・パンツ[予定価格]¥291,500・ローファー[予定価格]¥165,000(プラダ クライアントサービス〈プラダ〉) その他/スタイリスト私物
2025年2月14日(金)劇場版『トリリオンゲーム』が公開!
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(c)稲垣理一郎・池上遼一/小学館
劇場版『トリリオンゲーム』/資金ゼロからの起業を描いた連続ドラマ(2023年)が、世界規模にスケールアップ! 「世界一のカジノ王」に挑む劇場版では、「1兆ドルを稼ぐ」ために、かつてない危険と隣り合わせの世界に飛び込む。さて、ハル(天王寺 陽/目黒 蓮〈Snow Man〉)とガク(平 学/佐野勇斗)ふたりの運命は…?
出演:目黒 蓮 佐野勇斗 今田美桜 福本莉子/吉川晃司 2月14日(金)全国公開
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2025年Oggi3月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/山根悠太郎(Tron) スタイリスト/伊藤省吾(sitor) ヘア&メイク/望月 光(ONTASTE) 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
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佐野勇斗(さの・はやと)
1998年生まれ、愛知県出身。2015年に映画『くちびるに歌を』で俳優デビュー。翌年にドラマ『砂の塔〜知りすぎた隣人』で初の連続ドラマ出演。以降の出演作に、映画『ちはやふる −結び−』『青夏 きみに恋した30日』『小さな恋のうた』劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』『六人の嘘つきな大学生』、連続テレビ小説『おむすび』、ドラマ『おとなりに銀河』『マイダイアリー』など。ダンスボーカルグループ『M!LK』としても活動している。