俳優・柳楽優弥さんインタビュー
英語の勉強を習慣にしています
14歳で映画主演デビュー。それから現在までの20年は、柳楽さんにとって「学ぶこと」の大切さを痛感し、実践を繰り返してきた期間だった。
「憧れた世界に入ることができて、それで満足してしまいがちだけれど、学ばなきゃいけないことの多さを思い知らされたのが、10代でした。
20代ではとにかく経験の場数を増やして、意識的にいろんな役柄、いろんな現場に飛び込んで、チャレンジして。短期留学も体験しながら、英語力を磨くことも始めました。そして30代。これまで蓄えてきたことのハイブリッドが、今目指しているものです」

英語力と演技力のハイブリッド。あるいはさまざまな演技の引き出しのハイブリッド。その形はさまざまだけれど、自分の中からふつふつと湧き出るものを、柳楽さんは、はっきりと認めている。
「なんなんだろう、この内側で燃えているものは。大きな評価や国際的な賞といったわかりやすいものを求めているだけではない気もするし、それを超えたところにある、もっと大きいもののような気もするし。それを、30代のうちに手に入れたいんです。
そのために必要なのは世界のさまざまな文化を学ぶこと。そしてやっぱり英語力です。作品と作品の間の期間を使って、数か月の語学留学は何度か体験してきて、コミュニケーションはできるようになっても、インタビューで思いを伝えるのはやっぱり難しい。
先日滞在したイギリスではブリティッシュアクセントに苦労もしましたし。でも、それも楽しいものです。今は、1日1時間の時間をとって、勉強を習慣化しています」

人に教えてもらえる素直さも、教えることができるキャパシティも、持ち続けられたら
30代が終わるころ答え合わせができたら
まだまだ上を目指す思いを抱えながらも、経験年数でも年齢でも、撮影現場のなかでは「上のほう」になることが多くなった。

「年下の俳優やスタッフが増えてきて、自分が勉強して得てきたものを、継承していくことの大切さを感じます。一方で、ダイバーシティが浸透し、トレンドの変化も激しい今、年の上下や立場の違いは大きな問題ではなくなってきているのも事実です。
キャリアに関係なく、同じモチベーションを持つ人たちが引き寄せられ、支え合いながら、よい作品をつくり出すことが必要なんじゃないか。そんな場所に身を置き、人に教えてもらえる素直さも、教えることができるキャパシティも、持ち続けられたら。
トライ&エラーを繰り返しながら、30代が終わるころ、その答え合わせができたらいいなと思います」
トライのひとつに、最新主演映画『夏目アラタの結婚』がある。今まで「自然な」演技を求められることが多かった柳楽さんが、原作コミックのファンタジー感、ドラマチック感を、見事に自分のものにして、実写映画として表現した。
「心がけたのは、ファンタジーでありながらも、物語が現実世界とつながること。さらに、サスペンスでありながらロマンス的な要素もあるのがこの作品。これまで言ったことがないようなキザなセリフも多いけれど(笑)、堤 幸彦監督を信頼してついていきました。
死刑囚の品川真珠(黒島結菜)にしても、まったく共感できない存在なのかと思いきや、実は悩んでいることは普遍的なことだったり、同世代の女の子と同じことを考えていたりする。そんなリアリティもあるから、この物語に引き込まれていくのだと思います」

一方で、柳楽さんが演じた児童相談所の職員・夏目アラタはというと、柳楽さんいわく「優しさと頼り甲斐があって、器が大きい」人物。「ゆえに、極端な言動をしがち」で、「だからこそ面白い」とも語る。
物語は獄中にいる真珠へのプロポーズから始まり、そこからは想像では追いつかない展開が次々と繰り広げられる。ファンタジーとリアリティを行き来する未体験の獄中サスペンスなのだ。
さらに本作は、韓国で開催された「プチョン国際ファンタスティック映画祭」でも高く評価され、柳楽さん自身も堤監督とともに韓国へ渡った。
「14歳のときに初めて国際的な映画祭を体験し、今も映画祭の場は大好きです。さまざまなジャンルのクリエーターと会えるのは楽しみだし、そんな環境に身を置くことができる幸せを、しみじみ感じる時間でもある。
海外の人に日本映画のどんなところが響くんだろうと予想しながら、その答え合わせをするのも楽しいんです。と同時に、自分も海外に出ていきたい、海外の作品で力を試したい、という思いはますます強くなります」

経験をひとつ増やすたび、目指す仕事がはっきりしてくるのを感じている柳楽さん。では、目指す自分像はというと——。
「アラタのような、器の大きい男は大好きで憧れだけれど、自分が近づけているかどうかは…。模索しながら、いまだ成長している途中です」
【info】柳楽優弥さん出演の映画『夏目アラタの結婚』が9月6日に全国ロードショー!

映画『夏目アラタの結婚』/元ヤンで児童相談員の夏目アラタ(柳楽優弥)が切り出した、死刑囚・品川真珠・通称「品川ピエロ」(黒島結菜)へのプロポーズ。その目的は、ピエロに好かれ消えた遺体を捜し出すことだった。無罪を信じる弁護士・宮前光一(中川大志)、アラタの同僚の桃山 香(丸山 礼)も、真珠の魅力に引き込まれていく――。原作:乃木坂太郎『夏目アラタの結婚』(小学館ビッグコミックスペリオール刊) 監督:堤 幸彦 9月6日全国ロードショー
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2024年Oggi10月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/伊藤彰紀(aosora) スタイリスト/長瀬哲朗 ヘア&メイク/勇見勝彦(THYMON Inc.) 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部

柳楽優弥(やぎら・ゆうや)
1990年生まれ、東京都出身。2004年公開映画『誰も知らない』で、「第57回カンヌ国際映画祭」男優賞を最年少の14歳で受賞。近年の出演作は、映画『ディストラクション・ベイビーズ』『HOKUSAI』、ドラマ『二月の勝者-絶対合格の教室-』『母、帰る~AIの遺言~』『ゆとりですがなにか』シリーズなど。10月期ドラマ『ライオンの隠れ家』(TBS系)では主演を務める。