俳優・出口夏希さんインタビュー

出口夏希(でぐち・なつき)
2001年10月4日生まれ。スカウトをきっかけにモデルを始め、2019年より俳優としても活躍。主な出演作は、ドラマ『アオハライド』 シリーズ『君が心をくれたから』『ブルーモーメント』、映画『沈黙のパレード』『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』『赤羽骨子のボディガード』、Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』、Netflix映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』など。
この仕事に向いているのか、わからない時期もありました
トレードマークだったロングヘアを、この春ばっさりと切った出口さん。次に控える役づくりのためではあったけれど、「ちょっと幼くなっちゃったかな」とはにかみながら笑顔を見せる。その瞬間、周囲もパッと明るくなり、笑顔が伝播する。
「私は強いわけでも、すごく自立しているわけでもないけれど、周囲を元気にできる存在になりたいなと思います。年を重ねるにつれて、大変なことも増えるだろうけれど、今と変わらず『やりたいこと』『楽しいこと』を続けていけたら。楽しくないときは…『楽しいことないかな〜』って口にして発散する(笑)。それだけでも、気持ちはずいぶん違います。
もともと、将来の夢ややりたいことがなくて、そんなときにスカウトされて〝たまたま〟この世界に入りました。最初は戸惑ってばかりで、この仕事に向いているのかどうか、わからない時期もありました。それに私、悩んだり言いたいことがあったりしても、なかなか口にできなくて、自分の中に沈めて解決したことにしちゃったり。〝言えない〟というより、面倒くさがりなのかもしれません。
でも、少しずつ仕事で評価をしてもらえて、それがうれしくて、また頑張ろうと思えて。忙しくて友達に会えないのはつらいけど、ストレスがたまるような忙しさじゃないし、お休みもあるから大丈夫。疲れても、おいしいごはんを食べて、たっぷり寝れば、元気になれます! でも、本当の楽しさは、きっとまだこの先にあるんじゃないか。そこに向かって進んでいるところです」

最新主演映画『か「」く「」し「」ご「」と「』の現場で見せたプロフェッショナルな姿
正直な気持ちを、正直な自己分析とともに、自分の言葉で伝える出口さん。まとっているのは、ほがらかでやわらかい空気感だけれど、いざ映画の撮影となると一変する。それを周囲も認めたのが、最新主演映画『か「」く「」し「」ご「」と「』の現場だった。
「その瞬間は、はっきり覚えています。撮影期間の中盤、高校の演劇祭のシーンでのこと。ものすごく暑い日で、スタッフもキャストも疲労感がピークに達して。大事なシーンを前に、集中力が切れそうだったけど、もう一度気合いを入れ直して、気持ちをつくって。すると、一発OK。監督が駆け寄って、『よくできたね!』と言ってくれました。緊張したり弱気になったりすることはあるけど、OKの声を聞くごとに自信に変えて、それを繰り返す。私にできることは、それしかないのかなと」
その姿に対して、本作の監督・脚本をつとめた中川 駿さんは、「プロフェッショナルな姿を見せてもらった」と評している。では、出口さん自身のプロフェッショナルはというと――。
「正直まだわからないんです。周囲の先輩方を見ていると、こういうことなのかな、と思ったりもするけれど、今はその背中を見て、見習いながら歩いているところ。大人として、プロとして、成長するのはまだこれからなのかもしれません」

この映画『か「」く「」し「」ご「」と「』は、5人の高校生を中心とした物語。出口さんが演じるのは、クラスの人気者・三木直子・通称ミッキー。内気な京(奥平大兼)にとっての、「気になる女の子」だ。面白いのは、このふたりを含めた5人それぞれが、それぞれのものさしで、人の気持ちが少しだけ見えてしまうこと。しかも、そのチカラをだれもが隠していて、それが役立つことがあれば、悩まされることもある。
「私だったら…。そんなチカラがあったら、かえって苦しくなりそう。心の中が読めたら、人を傷つけなくて済むような気もするけれど、やっぱり言葉で伝え合うことが大事だと思うから。好きな人の頭の中ほど、見たくないと思ってしまいます。逆にのぞいてみたいのは、科学者とか天才といわれる人の頭の中! どんなこと考えてるの? どんな計算が入ってるの? って」
家にいる休日は、夕方までベッドで過ごします
緊張感のある撮影を終えれば、滞在先の新潟をひとり散策して息抜きをしていたという出口さん。
「おいしいものをたっぷり満喫しました。ふだんは休みがあると、何もしないで一日終わっちゃうのに。地方に行くと、その場でしか体験できないことを楽しみたくて、よくばりになっちゃうんです。その代わり、家にいる休日は、ほぼ夕方までベッドの中で過ごします(笑)」
そんな行動も「仕事のための休養」ではなく、純粋に「自分のやりたいこと」。自分のことを「まだわからない」と言う出口さんだが、自分を楽しませる術は、ちゃんと持っている。そして、それがいい仕事につながることにも気づき始めている。それがプロフェッショナルなのだということには、まだ気づいていないけれど。
出口夏希最新主演映画『か「」く「」し「」ご「」と「』

©2017住野よる/新潮社
内気な高校生・京(奥平大兼)は、ヒーローになりたいクラスの人気者・ミッキー(出口夏希)が気になっているが、いつも遠くから見つめるだけ。友情・恋愛・将来… といっただれもが向き合う悩みと、それぞれの〝かくしごと〟が織りなすもどかしく切ない物語。
出演:奥平大兼 出口夏希 佐野晶哉(Aぇ! group) 菊池日菜子 早瀬 憩ほか
***
ワンピース¥893,200(ロエベ ジャパン クライアントサービス〈ロエベ〉)
ロエベ ジャパン クライアントサービス TEL:03-6215-6116
2025年Oggi7月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/黒沼 諭(aosora) スタイリスト/道端亜未 ヘア&メイク/Otama 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
Oggi.jp