俳優・見上 愛さんインタビュー

見上 愛(みかみ・あい)
2000年生まれ、東京都出身。2019年にドラマで俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ『恋はつづくよどこまでも』『きれいのくに』『liar』、NHK大河ドラマ『光る君へ』、映画『星の子』『衝動』『不死身ラヴァーズ』など多数。Netflixドラマシリーズ『恋愛バトルロワイヤル』でドラマ単独初主演。映画『国宝』(2025年6月6日公開)、NHK連続テレビ小説『風、薫る』(2026年春/主演)が控えている。
脚本とじっくり向き合って準備をします
2024年から2025年にかけては、連続して9本のドラマに出演。大河ドラマ『光る君へ』での藤原彰子役で揺れ動く感情を表現したかと思えば、軽快な大学生やクールなお仕事女子にも「変身」する。

「いろんな顔を見せる。これこそが、私の仕事だと思います。そして、どのキャラクターにもいろんな面があって、ひとことで言い表せることはなくて。それもそのはず、人間はもともと多面的なものですから。芝居の経験が積み重なるにつれて、ますますそう感じています。
それを表現するために、じっくり脚本と向き合って、準備をするのが、私のやり方。大学で舞台を専攻し、脚本の読み方はずいぶん学んできました。そのときは演出家の勉強として、題材は古典の舞台が多かったのですが、古くからある脚本でも、どう読み解くかによって演出も表現も変わります。その勉強は、俳優としての今につながっていると思います。もともと目指していた演出家は… 俳優として活動している今は片手間にはできません。演出の仕事を見ているとそう感じますし、今は演じる仕事がすごく楽しい。このまま勉強を続けていって、いつかここぞというときに、挑戦しようと思います」
では、“俳優として”現在の見上さんの脚本の読み方はというと。
「脚本を何度も繰り返し読み、全体のテーマや流れを考えて、そこから逆算して自分のシーンの演技を考えます。とはいえ連続ドラマでは、最終話まで台本が完成していないこともあるので、このやり方も変えていかないと、と思っているところです」

学校ではいつもよく寝てて、あだ名は眠り姫でした
文字を読み込み、解釈し、頭と体を通して自分なりに表現するのが、見上さんの仕事のやり方。では次に公開を控える映画『かくかくしかじか』では、どのように発揮されているのか…。見上さんが演じるのは、漫画家を目指す明子(永野芽郁)の同級生で、明子と同じく美大を目指すクールな女の子・北見。
「最初に読んだ資料には、私が演じる北見について“クールで、ミーハーで…”とあって、どういうこと? と思いました(笑)。原作や脚本を読むうち、中学時代にギター部だった親友に似てるなと思い出して。その子を思い浮かべながら演じていました。こうして、周りの実在の人物を思い浮かべたり、置き換えてみたりすることは、よくあります。
北見は、『そんなに甘くない』とよく口にしますが、それは客観的な視点で、彼女の厳しさでもあり優しさでもある。ちなみに私の高校時代は… 登場人物のだれとも違ったかな。学校では授業の合間によく寝ていて、あだ名は眠り姫でした(笑)」
この映画では、好きなことを突き詰める楽しさだけでなく、大変さ・つらさが描かれる。そこには、「しんどいけど好きなことなら頑張れる」というメッセージが通底し、働く女性にも響くものになっている。

映画『かくかくしかじか』
原作は、人気漫画家・東村アキコの自伝漫画。自らが脚本を執筆し、本人(明子)役は永野芽郁が演じる。明子の人生を変えた恐怖の恩師・日高先生(大泉 洋)との9年間が物語の中心だが、漫画家を夢見る明子の同級生・北見(見上 愛)の存在は欠かせない。「フリッパーズ・ギター好き」でミーハー、でも冷静に将来を見つめる一面も持つ。5月16日より全国公開
直すべきところは素直に向き合う。よいところは、謙遜せずにほめる。そうありたいと思います
「私はといえば、今のところ、好きなことをしんどいと思う経験がまだありません。でも、もっと仕事が広がり、関わる人が増えて、取り組むことの中で大変なこともあるのでしょうけど、その中に楽しいこと、成長できることがあると信じられれば、きっと乗り越えられる。それは、どんな仕事でも同じだと思います」
見上さんの思考は、単に前向きというだけでなく、現時点を客観的に見ながら、進む道を見つめる冷静さがある。それがひとりよがりな道にならないよう、チューニングする方法も、ちゃんとわかっている。
「小さいころから、自分を評価するのは自分だけでいいと思ってきました。それを自己肯定感が高いと言うのかもしれないけれど、自分の価値を他人の評価に委ねてしまうと、キツくなってしまうんじゃないか。もちろん、お仕事に対していい反響をいただくことは、うれしいです。でも、自分を客観的に見て、直すべきところは甘やかさず素直に向き合う。逆に、よいところは謙遜せずにほめる。今できているかはわかりませんが、そうありたいと思います。

そのためには、どんなに忙しくても、きちんとした日常生活が大事。中学高校からの友人との時間を大切にして、掃除や片付けも後回しにしないでしっかりと。とか言って、昨日は友達が家に来て片付けを手伝ってくれたんですけどね(笑)。その後の鍋を囲む時間まで含めて、とても幸せなひととき。いい仕事をするうえで欠かせない時間です」
そんな見上さんが目指すのは、「邪心がない人」だそう。辞書では「邪心」=「よこしまな心」だが、見上さんの思いには、「計算高い」「擦れた」といったニュアンスも含まれる。
「いつまでも、少年・少女の心を忘れない大人って素敵だと思います。大人になるにつれ、何かするにも、メリットがあるか、効率がいいかを考えてしまうもの。でも、損得じゃないところ――人のため、楽しい仕事のため――で動ける人になれたら。それが、私の憧れる“大人”です」
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[見上さん衣装]シャツ¥33,000・スカート¥41,800(ティーチ) 靴¥78,100(ガニー 渋谷パルコ〈GANNI〉) リング[中指]¥28,050・[薬指]¥32,450(プリュイ トウキョウ〈プリュイ〉) その他/スタイリスト私物
2025年Oggi6月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/中田陽子(maettico) スタイリスト/下山さつき ヘア&メイク/豊田健治 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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