手紙がつなぐ、時代を超えたラブストーリー
――マッチングアプリが主流となっている今、本作では“手紙”というアナログな出会い方が鍵となっていますが、どんな印象を受けましたか?
神尾さん(以下敬称略):すごく羨ましいなと思いました。いまはSNSやマッチングアプリで気軽に繋がれる時代にはなっていますが、不便な時代だからこその出会いが運命に近いのかなと感じました。
桜田さん(以下敬称略):文字を通して想いを伝えていくこともすごく“エモいな”と思いましたし、打つだけでは伝わらない想いも、書く文字を通してなら伝えることができるんじゃないかなと思ったんです。そう思うと、すごく素敵です。
――さらに本作では平成の時代もしっかりと描かれていますが、どんなところに魅力を感じましたか?
神尾:今の時代よりも制限が少なく、緩くて縛られていないからこそ、自由な感じがすごくしますよね。僕が生まれてからの平成の時代を思い返してみても、すごく自由だったなと思うんです。
桜田:すごくわかります。その自由さに憧れもありますし、もちろん、令和の今だからこそいい部分もあると思うんですよね。ただ、平成にはひとつ決めたことに真っ直ぐに突き進む印象も受けたんです。それはすごく情熱的でいいなと思いました。
――『大きな玉ねぎの下で』の楽曲が反映された世界観もすごく素敵ですよね。
神尾:最初に脚本を読んだ時から、その世界観がしっかりと反映されているなと感じました。今作では、現代パート、過去パートをたくさん行き来するんですが、その曲の世界観がしっかりしているからこそ、話がブレないんです。
桜田:私たちは現代パートだったので、過去パートがどう今と関わっていくのか、すごくワクワクしながら台本をよんでいたのですが、完成された作品を観て、想像以上の発見がありました。とても素敵にリンクしているので、そちらも注目してもらいたいです。
――おふたりが演じた役についての印象も教えてください。
神尾:僕が演じた丈流(たける)は、すごくリアルな就活生の気持ちを反映されているんです。将来の不安や、友達が先に就職先に決まった焦りなどがすごく等身大で描かれていますし、決していい所だけじゃなく、少しずるいところや、マウントを取っちゃうところもしっかりと描かれていて、人間らしいんですよね。
――ご自身と重なるところはありましたか?
神尾:過去の僕とは重なる部分がかなりありました。僕は高校時代、大学に進学するかどうかすごく悩んでいたんです。それに丈流のようにひねくれているところがあって、将来に希望を持てていなかったんですよね。その時の気持ちを投影しながら演じていきました。
桜田:私が演じた美優は、自分の夢に向かって真っすぐ突き進んでいる姿がとてもいいんです。その姿ってすごくカッコよく映りますし、自分も頑張ろうと思います。さらに美優は自分が疑問に思ったことを素直に口に出せる、とてもわかりやすい女の子です。とはいえ、その姿は自分と仲良くしている人にしか見せないんですよね。基本的にあまり弱みを見せないタイプなんだろうなと、演じながら思いました。
――桜田さんは、美優と重なる部分はありましたか?
桜田:好きなことに対して真っ直ぐ突き進んでいくところです。私自身、役者の仕事を小さなころからやっていて、他の進路を考えたことがなかったので、真っ直ぐ突き進んでいく姿はすごく共感できました。
――今作では、丈流と美優のラブストーリーも進んでいきますが、距離感がすごくいいですよね。
桜田:私もすごく好きです。お互いがさっぱりとしている人間なので、変に恋愛に発展させるとか意識せずに、近づくところは近づくけれど、それは男女というより人間同士という感覚なんです。その絶妙な感覚は監督と話し合いながら撮影していきました。
神尾:もちろん、もどかしいところもすごく多いんです。この2人って、2人だけだったら絶対に発展していないんですよね(笑)。でも、お互いの友だちや先輩などに背中を押してもらいながら、進んでいくんです。
桜田:2人だけだと、ツンツンしちゃうところもかわいらしいんです。もし私が2人の友だちだったら、思いっきりけしかけていたと思います(笑)。
――現場ではどんなコミュニケーションを取っていましたか?
桜田:神尾さんは、クールにみえてすごく面白いんです。ちょっとしたところで小ボケをはさんでくるので、それが私のツボにはまることが多くて(笑)。
神尾:いや、ボケたいと思ってボケているわけではないんですが、ちょっとクセのようなものなんですよ。高校生の頃から、隣の人に聞こえるか聞こえないかくらいの声でぼそっとボケるのが好きなんです。
――現場を盛り上げようとかそういった気持ちでは…。
桜田:(食い込み気味に)ないですね(笑)。
神尾:あはは。一度思いついたら言わないと気が済まなくて(笑)。桜田さんは、いつもどんなときも明るいんです。それはすごくいい空気を作ってくれていたのでありがたかったですね。
――それは意識していることですか?
桜田:ネガティブやマイナスなところを見られるよりも、ポジティブでいた方がみんなも楽しいかなと思っていて。それに、基本的にネガティブな所は一部の人にしか見せないので、基本的にポジティブなんです。ただ、押し付けるようなポジティブさは苦手なので、できるだけフラットでいるようにしています。
神尾:僕もボケは押し付けていないです! もしウケなかったら独り言のふりをしています(笑)。
――あはは。さて、おふたりが大切にしている曲はありますか?
神尾:僕は高校2年生の時に転校をしたんですが、最初はクラスにあまり馴染めなかったんですよね。そんな時にamazarashiさんの『僕が死のうと思ったのは』を聴いて、すごく励まされたんです。この曲はタイトルは刺激的ですが、歌詞の最後はすごく前向きになるんです。今もこの曲を聴くと、その時の気持ちを思い出します。
桜田:私はaikoさんの『KissHug』です。この曲は私のカラオケの十八番なんですよ。
神尾:この曲、モテる人が歌う印象がある!(笑)
桜田:そうなんですか⁉(笑) すごくかわいい曲なんです。友だちが歌っているのを聞いて、私も歌えるようになりたいと思って練習したんです。MVのaikoさんもすごく素敵なんです。
神尾:ピンクのパンツを履いて歩く姿がいいよね。
桜田:そう!ぜひ観てもらいたいですね。
――では最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします!
神尾:Oggi読者のみなさんは、手紙を書いたことがある世代だと思うので、すごくエモい作品に感じてもらえると思います。胸キュン映画とはまた違った、しっとりと時間が流れていく作品なので、心地よく見てもらえたらうれしいです。
桜田:SNSが普及していくなかで、自分の想いを文字を通して相手に伝えることってすごく素晴らしいなと思いますし、そこにかける手間もあるからこそ、より気持ちが伝わると思うんですよね。きっと懐かしい気持ちになれると思うので、観てもらえたらうれしいです。
Profile
神尾楓珠
2015年にドラマ『母さん、俺は大丈夫』で俳優デビュー。映画『彼女が好きなものは』(2021)、『恋は光』(2022)、『カラダ探し』(2022)、『いちばんすきな花』(2023)『くるり〜誰が私に恋をした?〜』(2024)などに出演。
桜田ひより
幼少期から活躍し、『明日、ママがいない』(2014)『祈りの幕が下りる時』(2018)などで話題に。2024年には第47回日本アカデミー賞「新人俳優賞」を受賞。2024年は『バジーノイズ』『ブルーピリオド』などに出演。
撮影/黒石あみ 取材・文/吉田可奈